「魔女は流れる星とどこまでも」




地下の冷たい部屋にカタカタと遊星がD・ホイールの調整のために繋いでいる端末を叩く音だけが響く。
かれこれ一時間以上、整備をしている遊星をずっと眺めて過ごしている。
バイクの事はわからないけれど、
遊星がデュエルをしているときのように真剣に整備をしている姿を見ているだけでもつまらなくない。
会話が無くても飽きない…わけではないけれど、耐えられる。
唐突に遊星がキーボードを叩く手を止めてこちらを見る。
「……終わったの?」
「いや、まだだが…一休みしようと思った」
そう言って私が座っている作業机の奥に向かってしまった。
しばらくすると、コーヒーの入ったコップ二つを持ってかえってきた。
無言で差し出されるコーヒーを私も小さくありがとうと言って受け取る。
知らない間に少し体も冷えていたので温かいコーヒーはありがたかった。
…邪魔しているつもりはなかったけれど、邪魔だったのだろうか?
「アキはD・ホイールに乗ってデュエルはしないのか?」
「…え?」
少しだけ後ろ向きな気持ちになっていたが、唐突に遊星に声をかけられる。
「…いや、真剣に俺の作業を見ていたから興味があるのかと思ったが…」
違うのか?と首をかしげる遊星。
「…興味が無いわけではないけれど」
どちらかといえば、作業をしている遊星のほうが興味あるわ、
なんて言っても微妙な反応しか返ってこないような気がして苦笑する。
「そもそもD・ホイールを私は持っていないし、
もしも乗る機会があっても運転もはじめてだし慣れるまで時間がかかるでしょうね。
…残念だけど、私とライディングデュエルをしたいなら諦めてちょうだい」
「そうか」
「…でも」
一瞬残念そうな顔をしたけれど、続く言葉に再び首をかしげて私の言葉を待っている。
「……でも、D・ホイールに乗って遠くに行ってみたい…かな。
…遊星が、後ろに乗せてくれるなら…乗ってあげてもいいわよ…」
後半は恥ずかしくてぼそぼそと小さな声になってしまった。
恥ずかしくて、ぷいっと遊星から目線を逸らしてむくれる。
…正直、どんな顔をして遊星を見たらいいのかわからない。
「…残念だが、D・ホイールは一人乗りで二人は乗れない」
「…そう、残念」
乗っているときの事を思い出せば、
二人乗りなんての構造的にムリって最初からわかっていたけれど。
淡々と事実を言う遊星の言葉を聴いて、改めて残念に思う。
頭の上にぽんっと遊星の大きな手が載せられて、慰めるように髪を撫でられる。

「…普通のバイクでいいか?」
二人乗りが出来るバイクも誰かが持っているだろうし、なければ作ればいい。

振り返ってみれば、優しい笑みを浮かべた遊星。
「…どこに行きたい?アキ」
「本当にどこでもいいの?」
「…ああ、お前が望むならどこまでも」
…遊星のそういうところは本当にずるいし、かなわない。
そんな…もう随分前からわかっていることを改めて再確認して、遊星に抱きついた。


fin

09/04/22up

23話、24話その他もろもろMADとか見てて「もうお前等結婚しろよ」とか思いつつ
晴波さんの素敵ラブラブSS見てイイ電波受信しました。
Dホイールが構造的に二人乗りできないので本当に残念です。
残念ですが、最終回後遊星はアキと一緒に旅に出ればいいよとか思うよ!!

どうでもいいですが、アキが十代の後輩にあたるということでアキへのトキメキ度アップした。
アキは美人なのでオベリスクブルーの制服も似合うとか思う。


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