「わたしはあなたの…」
「ジャック・アトラスの右腕にして、最愛のパートナーなんだから!!」
「……」
誇らしげにそう言うカーリーに呆れたような視線を送ると
「…あれ…えっと、否定しないの?」
と、逆に拍子抜けしたような顔をしながらこちらの顔色を窺う。
「…否定して欲しいのか?」
「あ、ジャック、質問に質問で返すのは酷いよ?」
うーんと、カーリーが少しだけ悩むそぶりを見せて
じゃあ、否定されなかったということにしちゃおう!!
本当に嬉しそうにそういってカーリーが笑う。
そんなカーリーを見て、悪い気分でもなかった。
その後は、もう少しお前はデュエルの勉強を知っておけとか、お前のデッキを見せてみろとか
…そんな、たわいも無い話をした。
いつのまにか隣に彼女がいることが当たり前のようになっていた。
…ひょんなことから始まったささやかで、幸せな時間だった。
…どうして、どうしてこんなことに
地面に叩きつけられ、ぐったりとしたカーリーを抱き起こす。
「ジャック、必ず世界を救ってね…私、応援しちゃうんだから」
カーリーが震えながら…見えない目で声だけを頼りに手を伸ばしてくる。
その手を取りながら、強く抱きしめると酷く安心したように体の力を抜いた。
「…だいすき、ジャック…」
そうして、風に吹かれるように崩れ去っていく。
…その最後は記憶に残るカーリーそのままの笑顔と声で、酷く胸が痛かった。
抱きしめたはずの体が粒子になって消えていく
かちゃ…、
小さな音を立てて眼鏡が落ちても諦め切れなくて何度も震える手で何かを掴もうとした。
…何も掴めないのなんてわかっているのに
もう、カーリーが何処にもいない。
「カーリー…」
呼んでも、返事なんて返ってこない。
もう、思い出の中にしかいない。
泣き叫びたかった。だけどその衝動を抑えて目的の場所に向かって歩く。
それが、カーリーの願いでもあったから。
するべきことを全てし終わった後、傷ついた体をD・ホイールに預ける。
酷く疲れて、動けなかった。
ゆらめく視界の向こうに何度も何度もカーリーの笑顔が浮かぶ。
『…ジャック・アトラスの右腕にして、最愛のパートナーなんだから!!』
…思い出すのは、そんな些細で幸せな記憶だけだった。
「…ああ、そうだな。お前は俺の右腕で、最高のパートナーだ」
唯一残された眼鏡を胸に押し当てて、瞑目する。
「…愛している、カーリー…」
彼女が生きている間には言えなかったその言葉を呟いた。
fin
09/06/02up
59話がまさかの悲劇で終わってしまってショックでしたよというわけで書いたSS
ちょうどその時期にデュエルターミナルやって相棒カーリーが出現してこんなセリフを言うもんだから
なんかもうなみだちょちょぎれそうになりましたよ。
幸せになってほしかったなあ…今からでも遅くないぞ公式!!
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