「3時のおやつは」
「じゃーん!!今日のおやつはこれーー!!2時間も並んで買ったのよ!!」
食後のデザートにと出してきたのはシンプルなロールケーキだった。
「とっておきの紅茶も淹れようっと…」
そういって棚の奥のほうをごそごそと漁り始め、目当ての茶葉の缶を開けて紅茶を淹れる。
どこか有名店のケーキなのだろうが、あいにくとわからない。
普通のケーキにしか見えないのだが、カーリーのとっておきの紅茶の効果なのか
甘いものの良し悪しなどわからない俺にも美味く感じた。
…というよりも
「…すこし、懐かしい味がするな…」
「…気に入ってくれた?」
「ああ」
「よかった、ジャックってあまり甘すぎるお菓子とかは苦手そうだけど
このケーキだったら喜んでくれるかなとか思ったから」
嬉しそうな顔をして…まったく、この女はいつも自分の事よりも他人の事ばかりだ。
「んー美味しいー!!」
だけど、美味しいと嬉しそうな顔をしているから…いいか。
こんな顔を見れるなら、今度は自分が甘いものを買ってきてもいいかもしれない。
そう思って店の名前を聞くことにする。
「ところで、このケーキはなんという店のケーキだ?」
「マーサおばさんのケーキの店ってお店だよー」
店の名前を聞いて盛大に吹いた。
マーサ?マーサってあのマーサか?いやまさかそんなはずはないマーサのはずがない
だけど俺が小さいときにマーサが作ってくれたケーキに似ているが
まさかマーサがこっちに店を出しているのか?そんなバカな、そんな話は聞いていない。
落ち着け、俺はジャック・アトラスだ!!
こんなことで動揺してどうする。
「…ジャ、ジャック?」
「…すまない…知り合いの名前に似ていた」
落ち着くために紅茶を一杯。
…美味しい。
落ち着いたところで、もう一口ケーキを食べて、よく味わう。
「…俺の知っているマーサもこんなケーキを作ってくれたな…」
もっとも粗悪な材料しか揃わないサテライトだからこんなに美味しくはなかったと思うが。
そんな状況なのにどうにかしてケーキを作って幼い俺達に振舞ってくれたマーサ。
…もう長いこと会っていないが、きっと今も俺達と同じ境遇の子供達にケーキを作って振舞っているだろう。
「私のお母さんもこんなケーキ作ってくれたわ。
…だからかな、他のケーキ屋にも美味しいケーキあるけど、
凄く地味だし素朴だけど懐かしい味がする気がするから私はここのケーキ凄く好き」
えへへ、ジャックに気に入ってもらえて本当によかった。
好きなものを好きだといってくれると嬉しいよね。
「…今度、ここの店に取材にいってレシピ教えてもらおうかな…
ジャックの好みの味なら覚えておいて損はないし…
『美味しいぞカーリー。マーサのケーキよりも美味しい』とかって、きゃー!!」
…どうやら妄想の世界に突入したらしいが、全部口に出して言っているので聞こえている。
恥ずかしいぞ。
「カーリー、紅茶のおかわり」
ずいっと空になったカップを突き出すと、ようやくカーリーが妄想の世界から戻ってくる。
「…言っておくが、俺は味に煩いからな」
「…っき、きいていたのっ!?」
「丸聞こえだ」
かあっと顔を真っ赤にさせてあたふたしていたが、落ち着いた頃にぼそりと呟いた。
「…でも、作ったら食べてくれるんだ…ジャック優しい」
嬉しそうに微笑むカーリーにうるさいと呟きながら、ごまかすように紅茶を飲み干した。
ふん、まずいときにはまずいとはっきり言ってやるからな。
だけど、多分きっと…カーリーの作るケーキはとても美味しいのだろう。
焦げようと、砂糖と塩を間違えていても、美味しいに違いない。
fin
09/08/08up
イベントに友人とこの売り子に行くのですが、スペースの端っこにおいてもらおうかとか
ジャッカリ本作ろうかなとか思っていたのですが、案の定それどころじゃなくなりました(笑)
そんなジャッカリ本に載せるハズだったSS一本目
…マンガにしようと思ったのですがムリでした…!!ムリ!!ギャグマンガしかこの頃描いてないから!!
というわけでSSのままアップしてみました、そっちのほうがいいよな多分。
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