「就職活動大作戦」





「こんにちはー!!この前の取材ありがとうねー!!本出来たから持ってきましたー!!
…って、あれ?クロウだけ?」
「おーカーリーじゃねえか、悪いけどジャックなら留守だぜ」
ひょっこりと半地下の遊星達が借りている倉庫を覗いてみたらクロウが端末をいじっている。
「遊星は…出張の修理?」
「おう」
「…ジャックは…あーうん、なんとなくわかるけど…」
「…あーー、一応な…職が決まったとは言ってたけど多分またすぐにクビだな」
ハアとクロウがため息をつきながら打ち込んでいたデータを保存して立ち上がる。
「ま、そんなことで俺様しかいないけどコーヒーでも飲んでいくか?」
「ありがとう!!」
取材が終わった後でちょうど疲れていたから嬉しい。
んーこれだったら何かお菓子でも買ってくればよかったかなあ。


その後はコーヒーを飲みながらノンビリと雑談だ。
クロウも本日の配達も終わって暇みたいだし。
「おーすげえかっこよく撮ってくれてるじゃないか」
記事もいい感じに書いてくれているし、照れるなあとかクロウは嬉しそうだ。
「そうやって喜んでくれると書いたかいがあるわ、
これがジャックだったら逆に「もっとページを俺に割け!!遊星とクロウよりも大きく!!」とか文句言うと思うのだけど」
「…うわあ、洒落にならねえ…」
げんなりした風にクロウが呟く。
…本当にジャックならそういいそうだから困るのよねえ。
問題なのがたまにそれが照れ隠しだったりとかして微妙に面倒な言動をするからますます困る。
「もうちょっとこう、素直になればいいのに…」
「…いやまあ、うん、ムリだな」
長年の付き合い、というか幼馴染のクロウが言うなら…無理なんだろう。
「…大変ね」
「…おー大変だぜ」
コーヒーを二人で飲み干した後、ハアとため息をつく。
「…なあ、カーリー…なんかジャックに出来そうな仕事って無いかなあー…
とりあえず、求人の出てるモノ色々しているみたいなんだけどさ、あいつ何もかもダメで」
うーんと悩む。デュエル以外でジャックが出来そうなことを想像してみるけれど
…なんか、働いているジャックという姿が似合わない。
「うーん、前にジャックにデュエル関係の記事書くときに手伝ってもらったけど…
私の仕事が無くなるから却下」
「えええー」
まあ、その前に多分好き勝手な記事書いて編集長に「クビだー!!」とか言われるのが目に浮かぶ。


ジャック、ジャックかあ。
ふと、遊園地に行ったときにサインを頂戴と言っていた子供にサインしてあげたり、
このまえのガロメとの借金デュエルの時の事とかを思い出して、
多分ジャック本人からはしそうにない仕事を一つ思いついた。


「…子守、とか…マーサさんツテとかでそういうお仕事とかは?」
「…え、ジャックが…子守…!?」
クロウがねえねえ、ありえねえという顔をした後、大爆笑する。
ちょっとだけ、むっとしながら反論する。
「子供の世話とかさせたら結構上手にやりそうだけど、ジャックも子供好きっぽいし」
「いやいや、ジャックが子供と同レベルになって遊んでるのならありそうだけどさ!!」
「むむむ、そこまで言いますか」
ひーひーと転がるクロウを見てると、なんだか私もヤケになってきた。
「よし、じゃあ私が子守のアルバイトをジャックに紹介するわ!!」
「おー是非とも紹介してやってくれよ、多分すぐにクビだって」
「ちゃんと出来たら今度ブルーアイズマウンテン奢ってよね!!」
それに対し、値段をよく知っているクロウがうっと呻くが、
多分ムリだと思ったのだろう…にやりと不敵に笑い「受けてたつぜ!!」と返してくる。



で、結果はといえば。


「…3000円…ぐあー…たけええええ…こっちのレッドアイズコーヒーにしない?ブラックマジシャンでもいいけど」
「ダメ」
クロウがジャック愛用の喫茶店で呻いている。

「…すみません、ブルーアイズマウンテン一つ、俺は水で…」
ぐったりと崩れ落ちたクロウに勝ち誇るけれど…
結局ジャックは子守のアルバイトは続かなかった。
「一週間の約束だったけど、もっと働かないか〜とか誘われたのにジャック断っちゃうなんて
…はあ、やっぱりジャックは難しい…」
一度だけ様子を見に行ったのだが、
随分と子供達に懐かれてはいたけれどひよこのエプロンもよれよれになったジャックの疲れ具合を見ていると
…仕方なかったかなとか思うけど。
「いやまあ…ああいう方向性なら向いてるのわかったし、ちょっとは前進じゃねえかな…」
「そうかな、これから大変だと思うけど…頑張ってね、クロウ」
「いやいや、どうもこちらこそありがとうなカーリー」
にっと人懐こい笑みを浮かべてクロウが嬉しそうに笑う。
なんだかんで文句を言いながらもクロウも、勿論遊星も…ジャックが好きなんだなあとか思うと嬉しくなる。

よーし、なんだか嬉しくなってきたからクロウにブルーアイズを奢っちゃおう!!
コーヒーが来たら、店員さんを捕まえて追加の注文をしなきゃそう思いながらコーヒーを待つことにした。





fin

09/08/28up

69話でちょっとはマシになったかなとか思っていたんですが…73話で打ち砕かれた!!
いやもうまさかねえ、あんなすごいアホな浪費っぷりを見ることになるとは(笑)
本当ヒデエ話ですよ!!
とまあ、なんだか悲しくなってきた(いや、笑えるんだが)のですが
73話見る前に就職がんばれジャックとか思いながら書いたSSをアップ。
なんだろう悲しいな、とてもむなしいな…!!涙が零れちゃうよ!!

いやもう遊星とクロウはとっととスポンサーゲットするべきだと思います本当。
ジャックにあう職業とか言ってる場合ではねえー!!

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