「君と信じて繋ぐ想いの絆」
偽ジャックの事件はジャック自身のおかげで解決した。
事件が始まってからも、終わってからも慌しい数日間だった。
事件の顛末を知った編集長からは「でかしたースクープだー!!」とか喜ばれるし
(クビだとか言ってたのに現金なモノだ)
…アンジェラにはカーリーにスクープを取られたー!!
っていうか、なんで!?どうやって!?とか詰め寄られたりしたし、
セキュリティからの発表と、私が撮った写真のおかげもあって、あっさりとジャックの名誉は回復した。
でも、
…牛尾さんからこっそり聞いたけど、あの偽ジャックがどこから来たものなのかわからないし、
ジャックが偽ジャックにやられた後連れ去られた場所には証拠も何も残ってなかったそうだ。
「むむむ、これは大きな事件になる予感!!…さっそく取材を…痛っ!!」
びしい、と指を指してポーズを決めていると、ぽかっと軽く頭を叩かれた。
「うう、痛いよジャック〜〜!!」
「お前が馬鹿なことを言うからだッ!!」
「酷いよジャック!!私頑張ったのに!!…あれがジャックじゃないって証拠頑張って見つけたのよ!!」
勢い良く反論すると、ジャックが疲れたようにソファーに倒れこむ。
「あ、あれ?…ジャック?」
すごく静かで怖い。…おそるおそる声をかけると
「…ああ、その件に関しては皆感謝している、俺も感謝するべきなのだろう。
だが…相手は前の闇金の連中やD・ホイール窃盗団の連中など比較にならないほど危険な相手だ。
…深追いはするな」
頼むから、無理はしないでくれ。
…そんな風に頼まれたら…うんって頷くしかない。
ダークシグナーになった時の事を連想したのだろう。
…つまり、それほど危険な相手だという事なのだ。
でも、ジャックはわかってない。
「でも、私は取材をやめないよ」
「カーリー!!」
抗議の声をあげるジャックを無視して、カメラのデータを立ち上げる。
ぴっぴっとボタンを押して記事に使えそうな写真を探していると、
一枚の写真のところでボタンを押す指が勝手に止まる。
ジャックのセイヴァー・デモン・ドラゴンだった。
二対の大きな翼の大きなドラゴン。
…あの偽ジャックとジャックのデュエルで見るのがはじめてだったはずなのに
雄雄しく羽ばたくドラゴンを見た瞬間思ったのだ。
あのドラゴンを召還したジャックは無敵だって。
全然覚えて無いけれど、
…だって、あのドラゴンでジャックは闇の世界に堕ちた私を救ってくれたんだから。
だから、ジャックが偽者に負けるはずなんか無いって確信した。
実際、その通りになった。
そして…激しいデュエルが終わって、傷だらけになったジャックが帰って来たのを見て…
もっとちゃんとジャックを支えたいって思った。
気がつかないって思われていたのかな。
D・ホイール窃盗団が出た時のことだ。
本当は別行動で窃盗団の出そうなところを見張って、連中が出たら連絡し合おうって言っていたのをジャックは却下した。
なんだかんだと理由をつけて一緒にいることにして、取材をしている私に危害が加えられないようにって配慮していた。
他の時にも少しでも危険そうな場所に行く時にはそうやってジャックがついてきてくれて、こっそりと守っていてくれていた。
…そんな風に心配される原因を作ったのはアルカディアムーブメントでの件が原因なのだろうけど。
守られてばっかりじゃ嫌なんだから。
「…私は、ジャック達みたいにデュエルとか機械の事とか詳しくないし
シグナーでもないし、特別な力もまったく無いけど…
でも、私は私なりにジャックと一緒に戦いたいの」
勿論、もうあんな無茶はしないよ?とは言っておく。
あの時は、
私を巻き込まないようにというジャックの思いやりにまったく気がつかなかった。
理由がわからなくて、離れていってしまったジャックを追いかける、それだけの思いだけで突っ走って…
その結果、私は一度死んでしまった。
だけど、あの時とは違う。
そんなことをしたらジャックが心を痛めて、傷つけてしまうって知ってしまったのだから。
私の願いは、貴方が本当のキングになって皆に愛されること。
その願いを叶えるために私はもう間違えない。
「…駄目?」
そう言って首をかしげると、ジャックが長い、長い溜息を一つついた。
「駄目と言ってもお前は止まらないだろうが…」
「うん」
座ったままのジャックが強引に私を抱き寄せる。
「ジャ、ジャック?」
「まったくお前は…危ないからと傍から離しても無茶はするし、傍に置いても無茶はすると言う!!
…少しは俺の気持ちも考えろ!!」
「…ごめんね」
少しだけしょんぼりしつつ、謝ると…
もう一度ジャックが溜息を零す。
そのままの体勢でジャックの好きなようにさせていたけれど。
しばらくたってから、ぼそぼそと小声でジャックが喋り始める。
「だが、今回は本当に助かった。
…遊星達も俺の事を信じていてくれていたが…お前の持ってきてくれた情報が無ければ
もっとあの偽者に振り回されて、混乱させられていただろうから
…あいつらに代わって礼を言う」
「偶然手に入った情報だったのだけどね…私の情報が役に立ったのなら、記者冥利に尽きるんだから」
それにね、私も…ジャックを信じていたよ。
それは言葉には出さないでそっと、そう思う。
「…カーリー」
不器用だけど、できるだけ優しくジャックが私の髪の毛を撫でながら私を呼ぶ。
「…ありがとう。俺を信じていてくれて」
恥ずかしそうに、本当に消え入りそうな小さな小さな声で
最初は聞き間違いじゃないかなんて思ったけれど、
素直にお礼なんて言ったことが無いジャックだから真っ赤になって照れているので聞き間違えじゃないみたい。
…ほんのちょっと、ううん、すごく嬉しくって…
目の前がじんわりとぼやけてジャックの顔がよく見えなくなった。
その後、私がジャックにどう返事したかは覚えてはいない。
ただ、わんわんと泣いてしまった私をどうしたらいいのかわからなくて、
ジャックの眉がハの字型になって困り果てていたのだけは酷く印象に残った。
fin
09/11/17up
83、84話ともうもうもう、かっこいいーよージャックー!!
今までのへっぽこぷりは何だったんだとかいう感じでした
思わずリアルでデュエルしないのに、アブソリュート・パワーフォース購入しそうになって
カード売り場でウロウロする日々でございます。
くそう、素晴らしい販促でした、CMかっこいいしなあ。
ジャッカリ成分としては、絡みは少ないけど、
カーリーはまったくジャックの事を疑わない(他のキャラもそうですが、クロウはあれはあれで美味しい)
とかまったくブレてなかったし、
珍しく記者らしいことしていたし(いや他の回でもそうだったけど)
カーリーらしいし、大変カーリーにも萌えておりましたとも!!
思わず筆が止まらないぜ!!ヒャッホー!!とか久しぶりにアクセラレーション!!とかそんな気分でございました。
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