「いつか、恋人同士の聖夜を」





クリスマス、12月最大のイベントと言ってもおかしくない。
12月に入ってからクリスマス特集とかって沢山沢山デートコースの取材に行った。
ここにジャックと二人で〜とか妄想したりするけれど、現実はそうはいかないのだ。
それでも、去年はクリスマスどころじゃなかったけど今年は随分と余裕もあって、
(相変わらずWRGPに向けてエンジンとかの開発で忙しいみたいだけど)
龍可ちゃんと龍亞君の好意で、二人の暮らしているシティ中心にあるホテルの最上階で、
マーサハウスの子供達や龍可ちゃんと龍亞君のクラスメイトや、遊星達皆でクリスマスパーティを開催することになった。

「まあでも、コッチのほうがいつもどおりだし…こんなステキなホテルの最上階貸切とか普通ならありえないんだから!!」

それに、料理凄く美味しいーー!!さすが一流ホテルの料理!!最高―!!
もぐもぐとお皿に取り分けられた料理を堪能する。

勿論、ただ参加するだけじゃ悪いので、
取材したときに一番美味しいと思ったケーキを購入してきたが、そっちも好評なようだ。

ジャックやクロウや遊星達は子供たちに囲まれてもみくちゃにされているけど、
子供の扱いに慣れている3人だから、上手くやってる…
…ジャックはお子様に遊ばれてる気がするけど、上手くやってる、と思う。

おかげさまで、今日はなかなかジャックと話が出来ない。
…まあ、ちょっと寂しいかなとか思わなくも無いけど、

「カーリー、料理の追加いるかい?ローストビーフがきたよ〜」
「あ、貰いまーす!!」
のんびりとした口調で大きなお皿とトングを抱えたブルーノがやってくる。

「のわああああっお前らやめんかあああ!!」
あ、ジャックが潰された。
くすりと笑っていると、そんな私を見てブルーノが微笑を浮かべる。
「楽しそうだね」
「うん、すっごく楽しそう。子供と遊んでる…っていうか、遊ばれてるジャックかな」
「いや、カーリーが楽しそうだなって僕は思ったんだけど。
でも、そろそろジャック取り戻してきたほうがいいんじゃない?
今日は全然喋って無いんだろう?」

たまにだけど、いいなーって顔してるよ?なんて意地悪く笑われる。

「ジャックもあんまり料理食べて無いから良かったら料理持って行って食べさせてあげたらどうかなー?」
「ちょ、ちょっとブルーノさん!!」

確かに、羨ましいなーってちょっと、ほんとうちょっとだけ!!思っていたけど!!
…指摘されるほど羨ましそうな顔をしてたなんて。
でもまあ、せっかくの好意だし…料理を受け取っちゃったから、もって行こう。





子供達に遊ばれて疲れたのだろう、プールサイドに置かれたベンチに倒れこんだジャックにそっと飲み物を渡す。
「ああ、カーリーか…ありがとう」
「ブルーノさんが料理も食べてる暇とかなさそうだったからって料理も取り分けてくれてるよ」
「…フン、あいつにしては気が利くではないか!!」
そう言って、私から料理の入ったお皿を受け取って一口食べる。
「…む、旨いな」
「あ、それも美味しいの?私まだそれ貰ってきてないのよね、取りに行こうかな…」
「いや、俺の皿から取ればいいだろう?」
そう言って、ほら、とフォークに料理を載せて突き出されたので、条件反射的にぱくっと食べてしまう。


…あ、美味しい。
じゃなくて!!


「美味しいだろう?」
こくこくと頷くけど、今私の口の中に入ったフォークは先ほどジャックが使っていたわけで、
…これって間接キスとかそういうものなんでしょうか!!


「ん?どうした、顔が赤いが」
「な、なんでもないんだから!!ジャック、こっちの料理もどう?ローストビーフよー!!」
「ああ、貰おうか」
もぐもぐと食べているジャックを見ていると、なんかこう、ぐるぐるして頭が回らないよ!!
「……カーリー?熱でもあるのか?」
ぺたりとジャックの手が私の額に触れる。
「だ、大丈夫!!大丈夫なんだから!!さっきアルコール飲んだからだからー!!」
「そうか、飲みすぎは良く無いぞ」
俺は帰りがDホイールだから飲まないがな、と言いながら料理をどんどん食べていく。
「あ、ジャック、ついてるよ?急いで食べなくてもまだ一杯あるのに」
くすりと笑いながらジャックの頬についたパンのくずを取ってぽいっと自分の口の中に放り込んで食べてしまう。
うん、美味しい。

「………」
何故かジャックの料理を食べる手が止まって真っ赤になって固まっている。
どうしたんだろう?と思いながら首をかしげていると、
「ジャックージャックとそのお姉さん、夫婦なの?二人で「あーん」って料理食べさせたりしてるし…」
「ばか、違うぜ、あれは恋人同士っていうんだぜーそれに、邪魔したらジャックに怒られるぜ!!」
そんなことを言いながら、マーサハウスの子供達が通り過ぎていく。

がたんと慌ててベンチから立ち上がって叫ぶ。

「ちょ、ちょっと!!ち、違うんだから!!ジャックと私はそういう仲じゃあ…」
「何ぃ!?…いや、違う!! そ、そうだ!!違うぞ!!…違う!!」
自分で言ったときには…将来はそうなったらいいなーとか思ってるけど、とかそういう気持ちがあったけど…
ジャックまで否定して叫んでしまったのでぐっさりと胸に刺さる。
私のハートにダイレクトアタックです。バキバキです。
うう、先に言ったのは自分だけど!!
悲しい、悲しすぎるよぅ!!あーーもう!!こうなったら今日はヤケ酒なんだからーーー!!

「ああっ!!コラ!!カーリー!!ラッパ飲みはやめんかああああ!!」
「…ジャック、止めたほうが」
「遊星手伝えエエエエ!!」

その後は、なんだかもうあんまり覚えてない。
最後に見えたのはなんだか心配そうにオロオロしてるジャックの顔だった気がするけれど、
酔っ払った私の見た都合のいい幻影なんだから。





ブロロロ…と遠いところから車の走る音がする。
ぼんやりと目を開けると、明かりも消されたけれど、
差し込む月明かりとシティの明かりがうっすら入り込んできていて、立派な部屋が見えた。
…見覚えのある龍可ちゃんと龍亞君の住んでいるペントハウスのリビングだ。
どうやら酔っ払って潰れた私はソファに寝かされていたらしい。

それにしても、なんだか妙な体勢のような、何かにしがみついて寝ていたらしい。
それはなんだかとても暖かかった。
もぞりとかけられた毛布をめくりながら首を後ろにむけてみると、

「…あれ?なんでジャックが…」
一緒に寝てるんだろう?
眼鏡は危ないからなのか、外されているのでぼんやりとしかわからないけれど、確かにジャックだった。

夢かな、これ。とか思いながらふにふにと頬に触れてみると、どうやら本当のようだった。

「……ようやく、起きたか…」
もぞもぞと私が動いているのに気がついたのだろう、ジャックが薄目を開けてこちらを見る。
「…おはよう、ジャック」
「……ああ」
これってどういう状況なのかな、とか思ったからジャックに聞こうとしたけれど、

それを聞こうとする前に、ギシリとソファが軋んでジャックが私に倒れこんでくる。
「わ、わわ、ジャック!!」
多分きっと龍可ちゃんや龍亞君が寝ているから小さな声で抗議すると、
煩い、と言われて余計にぎゅうっと抱きしめられてしまった。

「…お前が悪いんだろうが、酔っ払った挙句俺にしがみついて離れなくて、
あのままではDホイールにも乗れないだろうが」
「…う、うわ、ごめんなさい…」
おろおろとしながら謝ると、ジャックが小さく溜息を零す。
「それに…俺も勢いで否定してしまったが、否定しなくてもいいだろうが…」
「ふえ?」
「…俺は寝る、お前が起きるまで寝るに寝れなかった」

何の事だろう、問い詰めようとしても、ジャックは無視してそのまま寝てしまった。


え、ええ、それってアレですか?恋人同士なのとかいわれて否定したアレなんでしょうか!!
ねえ、どういうことなの?
とか問い詰めたくてもジャックはうんともすんとも言ってくれない。
というか、ジャックが圧し掛かっている状態だから動くことも出来ない。
こんな状態じゃ私も眠ることなんかできない。できるはずがない。


朝になって他の人に見られたらどう言えばいいの!?
…恋人同士なのよとか言っちゃうんだから!!


…でも、こういうのって、ちょっと悪くないかも。
クリスマスの夜にこうやって二人きりで抱き合って寝ちゃうなんて。

「…もう、勘違いして期待しちゃうんだから、ジャックのバカ」
くすくす笑いながら私もきゅっとジャックにしがみついて目を閉じた。










fin

09/12/24up

クリスマスです!!カップルネタならばやるしかあるめえ!!
みたいなカンジでノリノリで書いております。
両思いのクセにタイミング逃していつまでも言えていない、みたいな雰囲気の二人が萌え。
というわけで、萌えを詰め込んで書いてみた。
Dホイール二人乗りで〜とかも考えたんですが
ホイールオブフォーチュン2人乗りはいくらなんでも厳しすぎなので断念しました。
サイドカーとかつかないのかねアレ(ムリそうです)

いやもうもう一度チャンス来て完全に両思いになればいいのに!!

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