「わくわくバレンタイン」






2月14日には好きな人にチョコレートを贈るとか誰が考えたのだろう。
もともとの起源とかはなんか違った気がする。
っていうか、どう考えてもお菓子会社の陰謀としか思えないんだから!

これはスクープになるわね!
あ、でも途中でお菓子会社の刺客に狙われてしまうかも!
なんて危険なスクープなの!?
でも、真実を追い求めるためには多少の危険はなんのその〜

ショッピングモールのバレンタイン特設会場から抜け出して、
適当なベンチに座ってぐったりと伸びながらそんな事を考える。

我ながらすごくバカな事を考えている。

「うう、それどころじゃないんだからー!
ま、まだ仕事先の分だけ、これから本命なのに」

あの人混みの中にもう一度突っ込むとか考えると憂鬱とか考えていると、
バレンタイン特設会場の人混みの中から見覚えのある赤い髪の少女がよろよろとでてくるのが見えた。

「あ、アキさん」
「カ、カーリー、あなたもここに?」
よろよろふらふらしながらアキさんがベンチにまでやってくるけど、そこでもう限界だったらしい、
私はもう、だめ。と弱々しい笑みを浮かべてアキさんが倒れる。

真っ白に燃え尽きちまったぜーとかそういう感じです。

って駄目なんだから!

「アキさんだめー!まだ倒れたらだめよー!」





「アキさんチョコ買えた?」
「それが、ぜんぜん。何も考えないでここについてから考えたらいいわとか思ったのが間違いだったわね。
チョコがありすぎでどれを選んだらいいかわからないし、
それに」
もごもごと、バレンタインでチョコレートを買うなんて初めてだし、
どれを買ったら喜んでもらえるかわからないし。
一人だけ違うものあげるわけにもいかないとか考えたらよけいに悩んじゃうし、

だって、パパも遊星も、他の皆も同じぐらい大事な人達なんだもの。
と、嬉しそうにアキさんが笑う。

あ、私と一緒だ。
なんだか私も嬉しくなってくる。

「でもまさかこれだけの人がいるとは思わなかったわ」
「困っちゃうわよね、私、最初は手作りで〜とか思ったのだけど手作りコーナーのほうも、
今年はなんだか手作りチョコブームみたいですっごい混んでるのよね」
「そうなの?そこにも行きたかったのだけど」
もう無理かしら、とアキさんが青い顔をしている。


こんなにぎりぎりじゃなくて、もっと早くに手作りすると決めていれば、材料集めも楽だったかもしれないが、
ものすごく今更である。
まあ、腕に自信があれば材料をスーパーで購入すれば手作りチョコだろうがケーキだろうが作れるだろうが、
ちょっと自信が無い。
自信が無いから初心者向けキットに頼るわけなのだけど。

うーむ、どうしたものか。
二人だったら、なんとかレシピとか見ながら作れば手作りとかもいけるかな?
とか思いながら特設会場をみていると、見覚えのある双子がよろよろとでてくるのが見えた。

「うわーん龍可ぁ!もうむりだよおぉ!」
「そうね、ちょっと私も疲れちゃったって、アキさん、カーリーさん」

うわーんアキねーちゃん!カーリーねーちゃーん!とかトコトコと龍亞が泣きながら走ってくる。
まさかこの双子にここで会うとは思わなかったからびっくりだ。





「実は、バレンタインの日にね、パパとママが久しぶりに帰ってくるの」
「だから龍可が手作りチョコつくるんだーって張り切っちゃってさあ」
「龍亞だって最初はすっごい乗り気だったじゃない」
ぷうーっと龍可ちゃんがむくれると、
おごってあげたジュースをストローでぶくぶくしながら龍亞が「そう言ったけどさ」としょんぼりしている。

「まあ、あれじゃ無理よね」
バーゲン会場っていうよりもすでに戦場と化している特設会場を見て、全員でため息を漏らす。

いやいや、この雰囲気は良くない!
良くないんだから!

「よし、これだけメンバーが揃っているならもう一度あそこに突撃してチョコを手に入れるのよ!」
「うおおおお!カーリーねーちゃんかっこいー!」
「龍可と龍亞は手作りコーナー行くなら、それだけに絞った方がよさそうね」
チラシの配置図や人混みの事を考えて、最適のルートをごりごりとペンで書きながらアキさんがそう呟くと、
「え、いいの?」
「いいのよいいのよー手作りもいいわよねーって話をアキさんと私でしていたところだったから」
「むしろ、貴方たちがよかったらだけど、一緒に作らない?」
そう言ってアキさんが双子たちに笑いかけると、

「うん!大歓迎!」
「わーい!二人が一緒だったら百人力だー!」
双子たちが嬉しそうに笑う。


ああもう、
その笑顔だけで、なんかもう満足しちゃいそう。

「じゃあ、作戦会議を始めましょう?まずは突入方法だけど、ローズテンタクルスを召還して」
「ちょっとまってアキさん、それ危ない、危ないから!」
「冗談よ」

冗談を言う余裕だって出来てきた。
これだったら本当にどうにかなりそう。

それに、こういう風に皆でお菓子作りなんてすっごく楽しそう!
まあ、失敗とかしたりもするだろうけれど、
そこは溢れる愛情をたくさんこめる許してもらおう。

ああもう、わくわくしてきたんだから!

「じゃあ、もう一度突撃開始!」
「おー!」











おわり

10/02/14up

バレンタインだぜ!恋人もしくは恋人未満の乙女チックイベントーーー!!
かたかたとこうやって打ちつつ、妹がチョコクッキーやらケーキ焼く手伝いしてました。
まあ、ほとんどが自分で食べたり、友人にあげたりなのですがね!
っていうか、むしろ、私がチョコほしいです。
チョコ死ぬほど大好きなんですよ!
チョコがたーべーたーいーー!



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