「悩めるホワイトデー」






2月14日はバレンタインデー、3月14日はホワイトデー。
確か、元々はバレンタインデーだけでホワイトデーなどというものは無かったはずだ。
まったく誰だ!!ホワイトデーなどというイベントを考えたのは!!
俺は絶対そんなイベントやらんぞ!!

…そう思っていたのだが、
龍可と龍亞の双子や、十六夜アキ、それからカーリーの4人で
『いつも頑張ってる皆に』とか言われてチョコレートを全員で貰ったのだが、
遊星やクロウ達がお返しをするに決まっている以上、俺が無視するわけにはいかないだろうが!!

そこまではいい。そこまでは
どうして暇だろうからという理由で俺が買いに来なければならないんだああああ!!

などと叫ぶわけにはいかないから黙々と目的のものを買う。
「ありがとうございましたー」
クロウとブルーノが考えた双子へのお返しを買い、
遊星が『アキにはこれがいい』というお返しも買った。

残りはカーリーへのお返しなのだが、
『カーリーはジャックが買ってやったらいいだろー』
『そうだな、彼女の好みは一番わかっているのはジャックだからな』
と、クロウと遊星が口を揃えて言ったのが問題だった。

正直、何を買ったらいいかわからない。

そうして、
「うぬぬぬぬぬぬぬ」
ショッピングモールのホワイトデー特設会場で唸るはめになった。

可愛らしく白くラッピングされたお菓子や小物類が並ぶ棚の前で先ほどから止まったままだ。
「ううーどうしたらいいかなー何がいいかなーうー」
「おのれえええ…これほど悩むとは…」
どれをやっても喜ぶところしか思いつかない。
「あはは、アンタもホワイトデーのお返しで悩んでいるんだ?」
うーうーと唸っていると、隣で同じ時間ぐらい悩んでいる赤いジャケットを着た茶髪の男が疲れ果てたように声をかけてくる。
というか、勝手に話しかけてくる。
「困ったなあーアイツ、こんなの食べれないしなあ、いや、無理して食べそうだよなあ。
ペンダントとかもつけれないしなあ、小物類なんか飾るとこねーし、
問題があるとしたら何をやっても喜ぶってとこかなあ、でもなあー」
どうやら相手はカーリーと同じような相手らしい、だが色々問題があるようだ。
食べれないとかつけれない、飾れない、アレルギーか病気だかで入院でもしているのだろうか。
勝手に想像して…どうでもいい事ではあったのだが、
男が言う相手が、何を貰っても喜ぶ、というところがカーリーを彷彿とさせたのが悪い。
「花でも贈ったらどうだ、切花だったら食べなくてもいいし、長く飾るわけでもない」
ぼそりと、アドバイスを送る。
「おーー!!ありがとうなあ!!そっか、花か」
なるほどなるほど!と頷いていた男がよし、と呟く。

「じゃあお礼にアンタの贈り物のアドバイスしてやるぜーー!!」
「いらんわああああああ!!」

花でも買いに行くと思ったら予想外の展開になってきた。というか余計なお世話だ。
「えーー?いいじゃないか、お礼は素直に受け取れよな。あ、ちなみに俺は十代。アンタは?」
「ジャックだ。ってちがああううううううう!!アドバイスなどいらんわあああああ!!」
「で、相手の子は何か駄目なものでもあるのか?」
無難なのならこれな!とマシュマロン型容器に入ったマシュマロの詰め合わせをずずいと出してくる。
「それは双子の兄妹にと買った」
「んじゃこれはどーだ?」
白い薔薇の入浴剤とタオルセットー!!とか叫びながらバシーンと出してくる。
「それは頼まれ物として別のヤツのために買った」
「えー困ったなあ、値段がリーズナブルでお得感溢れつつ、
それでいて相手が喜びそうなのって他に何かあるかなー、
クッキーとかチョコの詰め合わせ高いんだよな、中身の割に、
ところで相手さん紅茶好きだったりする?ちょっと割高だけどこういうのは?」
可愛らしい紅茶の缶とティースプーンのセットを指差す十代という男に首を横に振る。
「そこの試供品の香りを嗅いだが、俺の好みじゃない」
「…いや、その、相手さんが好きかもしれないじゃないか…って、ああ、なるほど」
俺の答えに何を考えたのか、にやりと十代が笑う。
「一緒に飲むのが前提なんだなー。いいね、若いねー」
「〜〜〜〜〜〜っ!!」
実際その通りではあったから真っ赤になった俺を見て、十代はくすくすと笑いながら紅茶のセットを元の棚に直す。
もういい!知らん!!と適当に何かを掴んで持っていけば良かったのだが、
じゃあ、こっちこっち。と十代が俺の服の裾を掴んで別の店に強引に引っ張っていく。

「ほう」
連れて行かれた店はショッピングモールに入っている雑貨店で、
値段も手ごろそうなものが多く揃っている上に、モノもそこまで悪く無さそうだ。
プレゼントにどうですか、というプレートが貼ってある店の商品を2、3点詰め合わせてラッピングした物もセンスは悪くない。

「む」
水色と白のボーダー模様のマグカップが置いてあることに気がついた。
そのしましま模様がカーリーがよく着ているシャツに似ていた。
「いいんじゃねーの?それ」
「ああ」
「ついでにこれもどう?一つよりもセットのほうが使いやすいぜー?」
そう言って白いマグカップを指差す。どうやら同じメーカーのものらしく、形がまったく一緒だった。
「ほう」
これはいいかもしれない。
値段も予定していた価格よりは少し上がるが、それぐらいは自分で出せばいい。
まあ、もう少し考えるか…と思っていると、ひょいひょいとマグカップ2つが奪い取られる。
「すいませーんこれ二つください、プレゼント包装でー!!」
「ちょっとまてえええ!!まだ買うと決めてないぞおおおお!!」
「こういうのは直感で行くのがいいぜ!!気に入ってるんだろ?」
きらりんと笑顔を輝かせながら親指を立てる十代にウギギギギと唸るが、

…まあ、アレにしようかと思っていたから、いいか。と決めてしまうことにした。
自分ひとりだったらいつまでも決められそうに無かったことだし。

会計を済ませ、ラッピングされるのを待ちながら
ありがとう、とお礼ぐらいは言おうと思って、十代のほうを向くと
「じゃあ、俺は花買いに行ってくるぜ!!ありがとうなジャック!!」
こちらが礼を言う前にそう言って、走り去っていってしまった。

「……」
まあいいか。
これが遊星でもあれば追いかけてお礼を言うところだろうが、俺がそこまでする理由も無い。
振り回された感もあって、物凄く疲れたということもあるが。

…どこかで会えば、その時にでも礼を言えばいいだろう、覚えていればだが。


「お帰りジャック、ホワイトデーの買い物は上手くいったようだな」
「ふん、当たり前だろう!!」
「とか言うけど、結構時間かかってるよなー」
けらけらと笑うクロウに「煩い」だの反論しながら、ホワイトデーの贈り物を壊さないように棚に入れておく。

ばたばたとしたホワイトデーの贈り物選びだったが、まあ、悪くは無かった。
これならばカーリー達は喜ぶに違いない。
その事を想像して笑いながら自分用のコーヒーを淹れることにした。











おわり

10/03/13up

「わくわくバレンタイン」の対になるSS、ジャッカリ成分多目でござる。
十代がちょっと乱入してますが、なんとなくこの組み合わせで会話させてみたかっただけです!!
多分、何を考えたのかユベルがチョコレートを用意して十代にあげたりしたのだろう。
違う意味で何をあげたらいいかわからないヤツだぜ!!

本編ではバレンタインどころかホワイトデーどころか、ジャックが派手にクラッシュしてるわ
なんだかいつの間にか3人にモテモテ元キングになってるわでジャッカリ成分期待できそうに無い
…まあ!今までがのんびりしすぎだから大会でチームの絆とかバッチリやっていただきたい!!
ジャックがチームプレイに目覚めますようにと願うよ!!

…ああもうSS全然関係ないあとがきでした。


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