「星に願いを、君と宇宙を」




夜も更けたそんな時間。
ぷるるる、と電話がなる。
いつもならばブルーノかクロウあたりが取るのだが、
今日はあいにくと遊星も含めて3人ともこのガレージを留守にしているので仕方無い。
ぴっと電子音を鳴らして電話を取る。

「……なんだこんな夜更けに『わーーーいジャックだー!!ジャックー!!お久しぶりー!!』
…カーリー、酔っているのか!?」
『うんうん!!お夕飯にちょーっとだけ、…ジャックもう20歳でしょ?
お土産にどうかなーって思って味見させてもらったら、凄く美味しいの!!』
ついついお酒が進んでしまいました!!にゃはははーとテンションの高い声が聞こえる。

「…そんなに飲んで大丈夫か?今は宿か?」
『あ、もしかして心配してくれてるでありますか!!…っていうか寂しいとか?きゃー!!』
「真面目に聞けーー!!」
がーっと怒るけれど、昔サテライトにいたときの経験からして酔っ払いほどタチの悪いものは無い。
…言っても無駄だったろうか、と溜息を零していると。

『今ねー!!泊まってる宿のベランダでーす!!』
とか一応返事が返ってくる。

それに一安心しながら、苦笑を浮かべていると、えへへーと嬉しそうな彼女の声が聞こえてくる。
「で、取材はどうだった?うまくいったのかとかは聞くまでも無いな」
『うん、上手くいきましたー!!明日街に戻る前に今泊まってる街の取材をやれば取材旅行オワリ!!
久しぶりにネオ童実野シティから離れたけど、こういうの新鮮でいいよねー!!
ジャックのナスカ旅行にはまけちゃうけどー!!』
そうすると、戻ってくるのは早くて明日か、明後日には戻ってくるということなのだろう。
まったく、また周りをちょろちょろされてたまらない日々が戻ってくるのか、

だが、いつもよりも周りが静かで、少し物足りないような気分だった、だから…
『ジャックー!!私がいなくて寂しかったー?』
「馬鹿、寂しいわけあるか!!こっちはWRGP本選に向けて色々準備中だからな」
『素直じゃない〜〜!!』
ぶうぶうと文句を言うカーリーの声を聞いていたら、そんな気持ちも吹っ飛んだ。
なんてのは言わなくていいのだ。


『あーーすごい星空―――落ちてきそーーーう!!天の川すごーーい!!
あ、そういえばジャックー七夕の時何かお願い事をしたー?』
酔っ払いは唐突に話題を変える。
「いや?双子とブルーノでなんだか飾りをポッポタイムの店先に飾っていたが」
吊るされた短冊に書かれた願い事が
『ジャックの無駄使いが減りますように』
『ジャックのパワーでごり押し癖が治りますように』
『ジャックが僕の事を殴りませんように』
『ジャックが…』以下省略。
イヤガラセの如く自分がらみの事ばかりを遊星と十六夜以外を除く連中が書けるだけ書いていたので、
書く気にならなかったともいうのだが。

確か、カーリーが取材に出ていたのは北の地方で行われる派手な七夕の行事だったか、
WRGPが中断になったせいで、デュエル関係ばかりで記事を書けなくなったからとかなんとか言っていたはずだ。
「…まさかお前まで俺の無駄使いが減るようにだの書いたのか?」
『…そういうのはクロウ達にお任せしてますから!!っていうか、やっぱり書かれちゃったんだ』
くすくすと笑いながら、俺が怒る前ぐらいの絶妙なタイミングで続きを言う。
『たぶん、そっちでも書いていると思うけど、チーム5DSの優勝を祈願してきましたー!!』

ああ、なんともお前らしい願い事だ。
違う意味で呆れてくる。

「なんだ、もう少し自分のために願い事とかしたらどうだ…?」
『えへへーそこはちゃーんっと願い事してきたけど、秘密なんだから!!』
「ほう?珍しいな」
どういう願いをしたのかも気になるといえば気になるが、
個人的な事を願ったということが珍しくて思わずそんなことを言ってしまう。
『そりゃ私だって、個人的な願い事ぐらいあるわよー!!
…それに誰かに、『別にそれぐらい願ったっていいだろう』とかなんか言われたような、
うーん、思い出せないけど…まあいいのー!!』
その言葉を聞いて、そういうことを言ったような覚えがあるような、とか思ったが
まあ、どうでもいいだろう。とか思い、黙っているとカーリーが再び楽しげに話しかけてくる。

『ねえねえ、ジャック!!そっちは星見えるーー?』
「星か…」
窓の傍からちらりと空を見上げてみれば、ちかちかと小さく瞬く光が見える。
「…窓からだとあまり見えないが、見えるぞ」

『じゃあ…私達、今…同じ星を見ているってことになるわよね、
離れ離れでちょっと寂しかったけど、なんだか嬉しいなー』
「…お前が見えるかとか言うから見ただけだぞ」

それに、

「…明日か明後日にはお前はここに戻ってくるから、何度でも一緒に星ぐらい見れるだろうが」
『………』

「ん?どうした?」
『うひゃっ!!な、なんでもないんだから!!…うん、そうよね…!!一緒に見れるのよね…!!』
もうージャックったら無自覚にそういうことを…まあ、そこがステキなの、かなあー?
とかなんとかカーリーがぶつくさ言っているのを聞いて、
自分が今、なんだか恥ずかしい事を言ったのではないかという気分になってくる。

「そ、そろそろ遅いから切るぞ!!お前も部屋に戻ってさっさと寝ろ!!」
『ええーもっとしゃべ…』
「切る」
『お、おやすみなさいませージャックー!!』
そう言って騒々しい電話が終わる。


はあ、と溜息をついて空を見上げれば…ちかちかと瞬く小さな光、
それまでは気にしていなかったのに、
今は、それを一人で見てもつまらないもので…

「…まったく、数日アイツがいないだけでこんな気持ちになるとは…」

明日には、明後日には、カーリーがこの街に戻ってくる。
そのときには…カーリーをつれて天体観測にでも行くか?
…ありえない、らしくないぞ、とか自分に言い聞かせながら、寝室に戻ることにした。






fin





10/07/20up

宇宙と書いて「そら」と読むのは何が元々だったっけかとか悩みつつ。
タイトルをOZONEにしようかとか何秒か考えてちょっと違う、とか思って却下しましたが
雰囲気はそんな感じです。
あの曲は本当にステキだ。七夕ラブソングだよね。
遊アキでもいけると思いますが、ジャッカリでもいいんじゃないかなとか思いつつ
七夕どんぴしゃには残念ながらネタは思いついていたんですが、完成しなかったので
ちょっと内容もずれておりますが問題はアリマセン。
オゾンの下なら問題ない。

北の地方の七夕〜は有名な仙台の七夕、一度は実物みてきたいです。
カーリーならそういう取材楽しげに取材してそうだなーとか思ったので旅立たせた。
本編でないのはきっとそういうことなのだと脳内で勝手に思ったりしてるのです。
妄想はタダだ!!隙間補完だ!!とか叫びつつ本日の日記終了。ジャッカリはいいものです。


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