「それは夢か過去か」
注意:タッグフォース5プラシドルートと本編134話なネタ満載の話その2





「…微妙」
「…これは違うね」
銀髪の少年と黒髪の少女が一口食べた
…見た目だけならば栗きんとんのような黄色い固形物とペーストのようなモノに酷評を下す。

「……あー、やっぱりジャガイモじゃダメだったか」
見た目だけでもちょっと近くしようと思ったんだけど、と俺が苦笑すると
「このポンコツ!!おんぼろ!!っていうか材料用意できないからって妙なアレンジするな!!
どこでそんなことを学習したんだ…っていうか、デュエルマシーンだろ!!」
「え、そりゃ今はデュエルどころじゃないし」
銀髪の…俺のよく知っているプラシドを少し幼くして、口調がルチアーノに似ている少年がじたばた暴れるのを見て、
「コラ、当り散らさない!!アンタがコイツにお正月だから栗きんとん食べたいとか我侭言うからだろ?
それに…コレ、栗きんとんとか思わなければいける」
「そう?それならよかった」
「…良くない」
こんな時勢だから材料が無駄にならなくてよかった、と俺が笑うと、
プラシド似の少年の髪をぐしゃぐしゃと黒髪の少女がかき混ぜながら
「拗ねるなよ、    。豆の煮込み作ったからさ、黒い豆ばっかり取り分けてやるよ
お正月だからなー黒豆の煮込みだぞー砂糖ナシだから甘くないけど食べれるよな?」
「っ!!食べれる!!こら    !!ちょっと俺よりも年上だからって子ども扱いして!!」
そこからはなんだか子供らしい「やーい子供―」だの「オマエなんか男女!!」とかの罵りあいが始まって、
俺はそれを困ったような顔をして    と     の二人のケンカを止めようと手を伸ばす。


ああ、だけど。
どうしてかわからないけれど、二人の名前が思い出せない。
大事な、大事なメモリー、記憶、忘れたらダメだったのに、
このポンコツな回路のどこかが切れてしまったのか思い出せない。
消えてしまったのか?…それはイヤだ。
思い出さなくては、思い出して、思い出したら…アイツに伝えなくちゃ、
ちゃんと思い出したんだってアイツの本当の名前を言ってやらなくちゃ、
だって、アイツ…


そこで、夢は終わる。



「……」


視界がぼやける。
なんでだろう、いつもはスッキリ起きられるのに視界がにじんで見えない。
ゆらゆらとゆれる視界に見覚えのある顔が、夢の中に出てきた男がいた。
…もうちょっと小さくて可愛い頃だったけど。
「おい、どうかしたか?」
小首をかしげて心配げに覗き込むソイツに手を伸ばすとやわらかい皮膚の感触。
なんだかそれが無性に嬉しくて、安心して名前を呼ぶ。
「……………」
呼んだつもりだったけれど音になってない。
だけど唇は誰かの名前を紡ぐ。
誰の名前を、どうしてだろうと回らない頭で考えていると、
ソイツは唯一見えている片目だけを見開いて俺を抱き起こし揺さぶる。
「おい!!オマエ…思い出したのか!!」
ああ、やめてくれそんなに揺さぶったら脳みそが出てきそうとか言いたいけれど揺さぶるのをやめない
「返事をしろっ!!なんとか言えっ!!」
イライラが最高潮に達したらしく大きく体を揺さぶられた。
その拍子にガツン、と寝ていたベッドの縁に頭をぶつけた。そりゃもう激しく。

ああ、時が、お星様が見える…じゃなくて、

「……痛い、プラシド」
そしてようやく目の前の男の名前を言葉にすることができた。
だけど、なんか違う。
呼びたかった名前じゃない。
…でも、プラシドの名前はプラシドだし。
もやもやしたものを抱えたまま
大きなため息をひとつこぼして、勝手に話を始める。

「夢を見たんだ。
もうちょっと小さいキミともう一人…黒髪の、三つ編みしたオデコの出てる女の子と俺と三人で…
状況はよくわからないけど、限られた材料でお正月のおせち作る夢。
…あ、プラシドはわがままを言うだけでぜんぜん手伝ってくれなかった」
思い出してくすりと笑う。


「…お正月だから、こんな夢見たのかなあ。へんな初夢」


ああもう、なんだこの変な言い訳みたいな話は、
こんな話を聞いたら余計にプラシドが怒りそうだ。
だけど、プラシドは黙ったままだ。

あの夢で、あのプラシドに良く似た少年は何だったのか、
そして、俺は誰の名前を呼ぼうとしたのだろう。

なあ、プラシド。と聞こうとしたら…プラシドの顔がひどく辛そうに見えた。
無言のまま、ベッドにプラシドが倒れこむ。
…まあ、そうなれば俺も一緒にベッドに押し倒されるわけで
プラシドは細身の癖に着ているものやら何やらで重いのか、すごく重い。

「…プラシド?」
「………」
黙ったままのプラシドに手を伸ばす。
おそるおそる頭をなでるけれど、プラシドは俺の好きなようにさせていた。
「……ごめん」
「…何を謝る」
「わからないけど、ごめん」

どいてほしいけれど、プラシドは退いてくれそうにない。
…というか、動かない。
今日はもしかしたらこのまま一日過ごすのかもしれない。
なら、いっそ。


「…もう一度寝たら、またあの夢を見ることができるかな?」


返事は期待しないでそう呟いて、プラシドを抱きしめて瞳を閉じた。














おわり

10/01/03up

初夢ネタ〜とぽわわわーんと妄想して一発目に出てきたネタ。
コナプラには他カプとはまた違ういい具合なネタが色々振ってきて困ります。萌える。
なんだかんだで結構悲劇ネタ好きです。

ってかコナプラとか書いてるけどアポ黒子さんでもあるよなあ。
あの黒髪の少女はマジで本当なんて名前なんだ…名前が知りたいッス…
アポリアさんが今度こそ負けるときにちょっとでも回想はいったり、名前呼んだりとかしたらどうしよう
萌えるけどマジ泣きしそうです。

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