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「その人は拾われてやってきた」


4、


「…あー…ちょっとまずったかなあ…」
遊星のところに転がり込んでそろそろ一週間になるあたり。
すっかりこのあたりにも慣れてしまって買出しに出かけるのもこの頃は一人で平気になってきた。
…治安が悪いけれど、襲われてもどうにかできる自信はある。
むしろ、襲ったほうが不幸な目にあうのは見えているのでやめて欲しい。
俺の愛しい精霊は凶暴です。もっとも俺が一番凶悪なのだけど。とか考えていると
『…僕は上手くごまかせてよかったと思うけど』
珍しくユベルが真面目な調子で返事をする。
事の発端は本当些細な話だった、
昔話をしている間に自分がデュエルアカデミアの卒業生だという話をしたのだが、
意図してではなかったのだけど、結果的に十六夜アキの古傷を抉ってしまったらしい。
詳しくは聞いていないが、あの学校にいい思い出が無いようだ。
「なんだよ、なんかマズイ事あったっけ?」
『…十代、その馬鹿具合は愛しいけどね…うっかり興味を持って調べられたり
…アキって子が『遊城十代』の事知ってたいらどうごまかすつもりだったの?
あの子達が『いつ』十代が卒業したのを知ったら卒倒すると思うけど』
「…あー…」
ユベルと融合して以降…最初は気がつかなかったけれど、
10年、20年と年月を重ねるうちに気がついた自分の『異常』を思い出す。
「…ちょっと早いけど、潮時かな」
『…残念だけどね』
ぼつりと悲しげに呟いたその言葉に珍しく同じような声音でユベルが答えた。
…珍しくだけど、彼らの事をユベルも気に入ったらしい。
元キングのジャック・アトラスとか
デュエルどころじゃなくなった十六夜アキとデュエルできなかったことが心残りだけど
『…遊星とのデュエルもちょうどキリ良く2勝2敗だしね』
「うー、もう一戦すればよかったかな?」
『…ダメ』
ケチ~と口を尖らせながらとぼとぼと歩く。

…帰ったら、とりあえずアキにごめんなって謝って、
やっぱりもう一回ぐらい遊星とはデュエルしよう。
それから、夜の間にこっそり出て行こう。
「…まあ、あいつらなら…これからどんなことがあっても大丈夫だと思うし」
ほんの数日だけど、どれだけ彼らが強い絆で結ばれているかよくわかったし、
どんなに辛いことがあってもきっと大丈夫。
俺の出番はまったくなさそうだ…それでいいのだけど。
『…そうそう、若いものに苦労させればいいの!!
闇の覇王様はのんびりふんぞり返って見学でもしてればいいんだよ
僕らの相手は破滅の光の連中だけで十分だよ、
わざわざ問題ごとに首を突っ込む君のお人好しさには本当呆れるよ!!』
「はいはい」
『ねえちゃんと聞いている?』
ぶつぶつと文句を言い始めたユベルに適当に相槌を打つ。

そうして、不動遊星に拾われて突然この街に転がり込んだ俺は、
来た時のように突然に彼らの前から姿を消すことになる。
…だけど、全部終わった頃にまたもう一度会いにこよう。

そのときには、…もう一度会えたら。
また今回みたいに楽しいデュエルしような。


fin




09/04/25up

人間やめてる気味の覇王様、ネオ童実野シティに訪問するの巻。
思いついちゃったのでゴリゴリ書いてみた。十代と遊星のやり取りが想像するだけで楽しそうだったので
アキと十代のやりとりも書いてみたかったけど、どうにも十代がアキの地雷を踏みそうなので断念。
私の想像ではGXから少なくとも30年ぐらいたってるのかなとか思ってるのですが
実際のところ何年後なんだろうなあ。

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