「夢の続きを君と」
前世ユベルは女の子気味設定です。
昔の夢を見た。
正確には夢を見ているのは十代で、僕は十代の夢に巻き込まれているのだろうけど
…まだ人だった頃の僕と前世の彼と一緒に城から抜け出して森に遊びに行った時の
平穏で幸せな日常が何時までも続くなんて根拠も無いこと信じていた頃だ。
(…こんな夢見たのも、昨日十代に昔の話をしたからだろうけど
…朝になれば十代は覚えていないのだと思うと残念だな…)
そう思いながら意識を覚醒させる。
目を覚ますとしばらく前まで十代と一緒に過ごした見覚えのある部屋の風景が瞳に映る。
…十代が卒業してからしばらくして…旅の途中に唯一持っていた連絡手段である携帯に
デュエルアカデミアでちょうど他の卒業生も来るイベント事があるとかで
久しぶりに顔出せ、と連絡があったので…デュエルアカデミアにやってきたのだった。
そこで、僕の知らない在学中の十代の話を聞かせて欲しいと頼んだら、
十代からも昔の…前世の話をしてくれよと頼まれたのだ。
そして、あの懐かしい夢を見た。
久しぶりにやわらかいベッドで寝れたこともあって
気持ちよさそうに寝ている十代を起こそうと思って十代に手を伸ばしたとき
…そこで自分の異変に気がつく。
「…あれ?」
自分の手を見ると、まるで普通の人間のような手になっている上に実体化している。
「……」
鏡なんて気のきいたものなんてこの宿代わりに使っているボロいレッド寮には無いので
窓ガラスに薄く映る自分の姿を見てみる。
…昔の、人間だった頃の姿になってる。
ぺたぺたと自分の顔を触って何度も確認するけど、いつもの姿に戻れそうに無い。
原因を考えてみるけれど、十代と自分の力がヘンな方向に作用しているのかもしれない。
(…とりあえず、十代を起こす前に服借りよう)
服も実体化してくれればいいのに、こういうのがキミの趣味なのかな?とか思いながら
十代にはちょうどいいのだろうけど、今の僕には少し大きい青いTシャツを着る。
『…ユベルの髪の色にちょっと似てるよな、コレ』
そう言いながら十代が買ったシャツだ。
「十代にはちょっと似合わない気がするけどね」
ふふふ、と笑いながらくるりと回ってみる。石鹸の爽やかで十代みたいないい匂いがする。
それに少しだけだけど、人間だった頃によく着ていた服にも似ている。
少しだけ堪能した後、そろそろ十代を起こすことにする。
…この状態をどうするかも相談しないとダメだし。
「十代起きて」
ゆさゆさと十代をゆすってみるが
「…うう〜〜ん〜」
とかむにゃむにゃ言っててなかなか起きない。
(そうだせっかくこの格好なのだし、どうせ十代を起こすなら…)
にんまりと笑いながら再び十代をゆすりながら声をかけてみる。
「王子、朝ですよ?早く起きてくださいませ」
「うう……もう…ちょっと…」
「ダメです。…王に怒られてしまいますし、
朝ごはんをしっかり食べないと立派な王にはなれませんよ?」
目をごしごしとこすりながら十代が目覚める。
「ユベル〜〜…昨日は森に遊びにいったし…疲れているんだ…もうすこ…」
びっくりした。
十代のほうもなんだか普通にこの口調の僕に話かけてるし
…実は昨日見た夢の続きなのだろうか。…森がどうとか言っているし。
それとも、少しは…前世の事も思い出してくれたのだろうか。
「…ユベル…か?」
ようやく頭が覚醒しはじめた十代が手を伸ばして僕に触れる。
「ユベル」
十代もびっくりしたような声でもう一度僕の名前を呼ぶ。
「うん」
返事をしながら顔に触れるあたたかい手を人のようにしか見えない手で握り締めてみる。
…夢じゃない。
それはどちらが言ったのかわからないけれど、
多分同じ気持ちだったから、もうどうでもいいことだ。
*
「多分俺の所為…なのかなあ?…昔の話をユベルから聞きながらだけどさ、
昔みたいに一緒に過ごして、せっかくここに来たし皆にも紹介したいなあとか」
「…まあこの場所なら実体化するのにもそこまで消耗しないだろうし、いいけどね」
ベッドに二人で腰掛けて状況を確認する。
「とりあえず、だ」
「うん?」
十代が立ち上がる。なんだか心なしか顔が赤いような気がする。
「…服、借りてこよう。トメさんに頼んだら何か制服とかサイズがあうモノ貸してくれるだろうし」
「僕はこのままでいいよ?」
ぷらぷらと足を揺らしながら十代を見上げると、ますます真っ赤になっていく。
「ば、ばか!! 駄目だっ!!…そんな格好で外なんか駄目だっ!! 」
ちらちら見えるし!!とか小さく付け加える。
「…ふうぅ〜ん?どうしてダメなのかな?何が見えるのかなぁ?ちゃんと僕にわかるように説明してよ、十代」
実体化しているとはいえ、精神は繋がっているので本当はわかっているけれど、
ワザと見下ろしている十代に見えるように姿勢を変えながら、そんな風に意地悪してみる。
「うう、せめてっ…ズボンを穿いてくれよおおおお!!」
十代の情けない声を聞きながら、今日一日どう遊ぼうなんてことを考え始める。
…せっかくの夢の続きだし、存分に楽しませてもらうよ?
おまけの次の日。
次の日、起きるといつもどおりの姿に戻っていた。
『なんだ、つまらないなあ〜もうちょっと遊びたかったのに』
「…まあ、そうだな。ここにいる間だけでもあの姿のままでもよかったかもなあ」
十代も起きたとき少しだけ残念そうな顔をしながらそう言ってくれたのでいいか。
『…まあ、それはいいんだけどね…』
「…次はオマエかよ…」
壁に寄りかかって偉そうにたっている黒い鎧の覇王が十代があげるうめき声に対し、
金の瞳でギロリとにらみつける。
「…貴様の仕業だろう、俺の知った事ではない」
「おまえなあ…」
『はいはい、二人ともやめてよね。僕は十代が二人で嬉しいけど!!』
「…ユベルは楽しそうだなあ…ちょっとは助けてくれよ…」
『んーどうしようかな?』
困り果てている十代と相変わらず無愛想な覇王を見下ろしながら
…今日も一日楽しい一日になりそうだと、そんなことを思った。
09/04/20up
本編再放送待てないのでユベルの出番まとめとかwikiとか放浪しまくった末に
なんかもう、ムラムラとユベルと十代いちゃいちゃしたSS読みたくなったので自作。
4期ユベルのツンデレ具合が可愛くてたまらんです。3期はヤンデレで可愛いです。
前世ユベルと王子十代とか想像するだけでもうたまらんです。
十代は男前でかっこいいです、惚れます。アレ主人公とか卑怯すぎる。
おまけで覇王様が出てるのは完全に趣味です。
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