「ヴィクティムなユベル」
ひょんな事からタッグを組むことになって、遊星というヤツと一緒に戦うことになった。
前に「前にユベルがシンクロ召喚されたいとか言ってただろー?
ちょっと違うけどシンクロだぞ!シンクロ!!」
とか十代が嬉しそうに言っていたけどさ…
『こういうのはちっがあーーーーーーーーう!!ちがうのぉぉ!!』
ユベル第二形態であるユベル−ダス・アプシェリッヒ・リッターが
フィールト上で叫びながら大暴れする。
ソリッドビジョンによる幻のはずがやたらと感情豊かに暴れて泣き喚くので
こういう異常事態になれたはずの遊星が微妙に困った顔をしているが知ったことではない。
別に建物が壊れたりするわけじゃないんだからいいじゃないのさ。
十代は慣れたもので「ユベル暴れるなよー」とかいつもどおりだ。
…むかつく。実体化しているなら、ぶちっと踏み潰してやりたくなるぐらいにむかつく。
実際にはそんなことはしないけど。
タッグ方式で今は遊星のターンなので遊星の指示を待ちつつ、彼のデュエルを観察する。
手際よくこの1ターンで場にあるカードや手札を駆使して
彼のエースカードであるスターダスト・ドラゴンが召還された。
…ふーん、やるじゃないの。
なんてことを思いつつ、そこでふと自分の効果を思い出す。
…エンドフェイズに自分以外を破壊するんだけどどうするんだろ?
…答えはそう考えた数秒後にわかった。
「スターダストの効果発動!!」
ぐわし!!とスターダストに掴まれる僕。
「スターダストをリリースしてユベルの破壊効果を無効にした上でユベルを破壊!!
ヴィクティム・サンク…」
ああ、なるほど…これで僕を破壊して最終形態を召還するんだね…って
『いやあああああああああああああああ!!何抱きしめてるのおおおおおお!?
十代十代十代たすけてええええええええ!! 』
スターダストに抱きしめられそうになるのを必死に拒絶する。
どしーんどしーんどしーん、リッターとスターダストがじたばたわたわた。
繰り返しだが、ソリッドビジョンによる幻なので被害は無い。
それでもあまりの異常事態に
(普通、自分の陣営のモンスターが効果で破壊されたりするのを嫌がったりはしない)
遊星は困り果てている。十代どうしたらいい、どうすればいいんだ!!と目線で訴える。
『じゅうだいいいいいいい!! 』
僕もこの状態をどうしたらいいのかわからなくて泣きながら訴える。
一瞬僕をちらりと見て、
「遠慮しないでやっちまってくれ」
そういって十代がにっこりと満面の笑顔を遊星に向ける。
『ああああ酷いよ十代いいいいいいいい!!じゅうだいいいいい!! うええええん!! 』
「いう事を聞けよ、いつも俺にネオスと超融合させられたりしてるだろ?似たようなもんだから…」
『いやだあああ!! ぎゅっとされるのやだああああ!!』
「…ユベルいい加減にしろ。大人しく破壊されろ」
『ひっ!!』
ギロリと睨まれる。…ああっさすが覇王で僕の十代!!外道だよ!!
「…なるべく…やさしくする」
遊星がオロオロとしながら慰めるようにそっとそんなことを言ってくれた。
…遊星はやさしい、いい人だ。
十代もこれぐらい僕に優しくしてくれたっていいのにさ。
そう思いながら、僕は破壊されたのでした。
*
まあ、すぐにユベル−ダス・エクストレーム・トラウリヒ・ドラッヘになった僕が
フィールドに戻るのですが。
「…リッターからドラッヘに究極進化するだけなのに大げさだなあ、お前」
『煩い煩い煩い!!僕の気持ちなんか十代のバカにはわかんないんだから
乙女は繊細なんだよ!?バカバカバカ!!』
「…すまない」
『遊星は謝らなくてもいいからね?』
スターダストも器用にぺこりと謝る、主人に似て凄くイイヤツだ。
「お前らいい加減にターンエンドしろー!!遊星お前の」
「よーしターンエンドしたってことで…俺のターンいっちまうぞー!?いいよな!!俺のター」
「まてヨハン!!貴様!! 俺のターンだろうがあああ!!」
対戦相手のキングとヨハンが今度はケンカし始めた。ぐだぐだにもほどがある。
「…デュエルしなさいよ、貴方達」
ぼそりと呟いたギャラリーのアキの呟きは…無視することにする。
09/05/10up
徹夜でチャット中のユベルデッキを作るんだったらどういうのがいいのか談義から
ぽろんと出てきたヴィクティム抱きしめ攻撃に泣くユベルの話。シンクロユベルの地味に続き。
…考えるんじゃない、感じるんだ。
そういうSSです!!どういう状況かとか考えたら負けだ!!
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