「帽子のアイツと十代」



「全力で行くぜ!!俺とオマエ、どちらかが消し飛ぶまで!!」

デュエル前に確かにこんなことを言ったのだ、このバカは
そんなことをデュエルの終盤、
もうすぐ決着がつく瞬間に十代を見据えながら赤い帽子の少年はそんなことを考えていた。

お互いにLPは0、引き分け、ドローだ。
お互いに死力を尽くした戦いだったものだからデュエルが終わった瞬間にお互いにずるずると崩れるように倒れこむ。
「引き分けか…勝ちたい気持ちは同じってわけか…」
はーと十代が苦笑いを浮かべてそんなことを言う。
「…おい、十代」
「ん?」
「…消し飛ぶまでって俺を殺す気かよ」
赤い帽子の友人にそういわれて、デュエルが始まるときそんなことを言ったような気がしたのを思い出した。
言葉に詰まっていると、そんな俺の様子を見て苦笑いを浮かべ
「冗談だよ、十代はそんなことしないってわかってる」

でも

でもさ、十代

「…なあ、十代。デュエルは楽しいか?」
その問いにすぐに答えられなかった。
あえぐようになにか言おうと、言うべきことをしたけれど、言葉にならない。
昔の俺だったら「楽しい」と答えられていたはずなのに
「……俺は」
「あー本当、仕方ないヤツだなあ」
何かを言おうとしたその瞬間に少年がにっと笑いながらその言葉をさえぎる。
「卒業するまでにびしびしデュエルの楽しさを思い出させてやるから、覚悟しやがれ」

自分でも気がついていたけれど、どうしようもなかった苦しみを
いともカンタンにこいつは解決してやるとか言う。
むかつくことにこいつなら出来るような気がする。

「いやまあ、ムリかもしれないから期待すんなよ、そんな顔するな」
「…言った次の瞬間に撤回するなよ」
その問題を解決するのは多分俺じゃない…とかいいながら、多分どうにかするのだろう。
そういうところがむかつく。
「案外、とんでもない方面からの解決方法が見つかるかもしれねえぜー?」
たとえば?と聞けば、うーんと唸って特に思いつかないらしい。
仕方がないので自分で考えてみる。
「たとえば…伝説の決闘王、武藤遊戯さんがデュエルしてくれるとか?」
「うおおおお、そんな機会があるなら十代、かわってくれえええ!!俺がやる、俺がやる!!」
絶対ダメ!! そんな機会あったら俺が絶対デュエルする!!
いやいや俺だ!!
そうしている間に少しだけ落ち込んだ空気もあっさりと流れていく。
問題は解決していないけれど、少しだけ気持ちが軽くなったような気がするかもしれない。

こうして、今日もアカデミアの一日はすぎていく。
オマエが友達でよかったぜ。
…まあ、なんかむかつくから言わないけどな。





おわり


09/06/19up

タッグフォース3ネタやってみた。帽子の男に名前はない。
一応プレイ中の名前あるんですがぼかしてみた。
脳内で帽子の男は非常に口が汚いです。
ちなみに、デュエルの状態は黒死病でドローしました…実話デス!!

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