「13本のプリムローズ」







「…藤原優介、捕まえたわよ〜」
「ひっ!!」
久しぶりに出てきた授業、今日の授業も終わったし部屋に篭りに行こうか、それとも図書室か、
…久しぶりに吹雪や亮と過ごしてもいいかもしれない、なんて考えていたら
後ろからゾゾゾゾという擬音を背負って小日向が現れてガシリと僕を捕まえた。

「え、ええ、な、なに!?」
「ちょっと付き合ってくれないかしら」
「ふええ!?」

付き合っての部分に顔を真っ赤にすると、
そういう意味じゃないわよ!!と小日向がフンと鼻を鳴らしてずるずると引きずって俺を教室から引きずり出そうとする。
助けて吹雪!!亮!!と視線だけで助けを求めると…無情にも吹雪は笑顔で手を振るだけだ。
…亮はスマン、許せ優介。とジェスチャーで謝ってくれたけど。

ああ、俺はどうなるんだろう。
この蛇の女王様に丸呑みだろうか、怖いなあ。

などと怖い想像をしていたのだけど。

「へ?」
ずるずると引きずり出された屋上で予想外の小日向の言葉を聞いて間抜けな声を出す。
「ご、ごめんもう一回言ってくれない、かな」
聞き間違えだと困るからというと、ぐもぐもと小日向がどもりながらもう一度言ってくれた。
「だ、だから…アンタって精霊とか幽霊とか妖精とかオカルト関係詳しいのでしょ?
そういうの、見れるようになるおまじないとか…何か無いかしらって聞いているのよ!!」
小日向は真っ赤だ、なんていうか、凄く珍しいものを見た気がする。
「…ああ、なるほど」
精霊と聞いてなんとなく把握した。

ひょんな事から小日向に懐いて、周りでちょろちょろしている一年生…
…遊城十代は精霊が見える。
小日向は見えない。
見えるものと見えないものの間にはなんとなく埋められない溝があるような気がしてしまう。
特に、見えないのに見える人を理解しようとするのは大変な苦労だろう。
…と、思う。
俺は精霊が『見える』立場なので想像するしかないけれど。

「…な、何がなるほどなのよ!!さっさと方法教えなさいよ!!」
「うーん、難しいと思うよ?方法はあるけど…小日向は精霊に会いたくてその方法を知りたいわけじゃないだろう?」
あくまでも、遊城十代と同じ目線で、同じものを見て見たいと思ったのだろう。
…そこまで言うと多分平手の一発や二発並の呪詛を吐かれる気がするけど。


あ、既に呪詛を吐かれている気がする。
物凄い視線を感じる。
女の子は怖い…女好きの吹雪の事が理解できないとか思う瞬間だ。


ごそごそと持っていたペンとメモを取り出してこの島で精霊に会えそうなポイントや時間帯、注意書きを書き記す。
本当は軟膏とか作るといいのだけど、彼女に作れるとは思えないのでやめておく。
そのメモを渡しながら、口頭で注意ごとを説明しておく。
「…一人で行くのは危ないから、遊城十代も一緒に連れて行くといいよ」
「だ、だ、誰があの子と!!」
わたわたと小日向が慌てる。
「じゃあ…俺のほうがいい?」
「それは嫌よ」
ずっぱりと断られるとなんとも言いがたい気分になる。
別にかまわないけれど少し傷つく。

「小日向先輩―ここにいたー!!デュエルしようぜー!!」
「ちょ、ちょっとアンタまた来たわけ!?」
どどどどど、と地響きを響かせながら屋上に遊城十代が飛び込んでくる。
いつみても凄く元気そうな子だ。
ちらりと小日向を見ると、文句をいいつつも凄く嬉しそうだった。
そして、遊城十代の傍には茶色の毛玉のような精霊が一匹飛んでいる。
ああ、あれが彼の…

「もう仕方ないわね、つきあってあげるわよ」
「へへへ」
「その代わり、私の用事にも付き合いなさい?…じゃあ、行くわよ」
ぼんやりとその精霊を見ていたらいつの間にか小日向と遊城十代の間で何か決まったらしい。
遊城十代と毛玉の精霊は現れた時と同じように走りながら屋上から去っていく。

その後を小日向が追う前に…くるりとこちらのほうを向く。
「藤原…コレ、ありがとうね。使うかわからないけど…後でお礼をするわね」
「あ、気にしないでいいのに」
それは私が嫌なのよ、そう言いながらひらひらとメモを振って、
にっこり微笑んで小日向は今度こそ去っていった。

その笑顔は流石去年のミスアカデミアだと納得できる凄く綺麗な、嬉しそうな笑顔だった。

そうして、一人取り残された屋上で、気持ちのいい海風にあたってぼんやり過ごす。

気がつけばもうすぐ夕暮れで、空が茜色に染まっている。
精霊を見るにはいい時間帯だ。
…今頃、小日向は遊城十代と精霊でも見に行っているのだろうか?
見れるといいな、そう思いながら…流れる雲を眺めて過ごしていた。



fin



09/09/30up

予想外で計算外と設定が繋がってるっぽいSS、小日向先輩かわいいよキャンペーン作品です。
乙女チックになりすぎてる気がするが、こまけえことはきにすんな!!

で、どんどん我が家の藤原が魔女っぽくなっていく件について。
本編が黒魔術系なら捏造漫画編藤原はジブリ系魔女か、あとはイメージ的にタッジーマッジーのシャーロット
部屋に山盛りのハーブとか釣り下がってるよ!!(笑)
男でも魔女っていうんだぜ!!
ちなみに、13本のプリムローズはとある妖精本で書いてあったおまじない。
真面目に妖精の飼い方を書いている本なのですが、凄く面白いのですが実践するのはかなり不可能だよコレ!!
とかいう内容のおまじないが多すぎて(軟膏の作り方とかすごい細かい)
プリムローズのおまじないを使ってみた。

アカデミア島は遺跡っぽいところもあるし精霊やら妖精やらホイホイ集まってそうだ。

以上、乙女チック妄想詰め込んだSSでした、妖精とか精霊とかは乙女のロマンよな。
映画のフェアリーテイル見たくなったぜ。


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