「それでも多分友達」
「…つくづく思うけど、なんでアンタらあの天上院吹雪と友達なの?」
先日ちょっとだけ小日向の手伝いをしたらお礼にと
カフェテラスでもぐもぐとチョコレートケーキ奢ってもらい、大好物のケーキを食べている至福の時に…
どういう会話の流れだったか忘れたけれど吹雪の話が出た時に呆れたような声を出しながら小日向が聞いてきた。
「……なぜだろうな…」
ああ、亮…!!呻かないで!! 考え込まないで!!
…俺も真面目に考えたら凄く困るから考えないようにしているのに!!
「ああ見えて吹雪にもいいところある………よ?」
「何、その間は」
じっとりとした、どこか哀れむような目で小日向がツッコミを入れてくる。
「えっと、えっと…デュエル強いよ」
「そうね、ただしアイツとデュエルしても楽しくないわ」
人のエースモンスターをわざと潰してくるプレイスタイルは確かに…人によっては涙目になるだろう。
「…えっと、ドローパンでショコラパンが出たら俺にただでくれるよ!!
バレンタインの時なんかもたくさん貰いすぎて一人で食べ切れないからってチョコも沢山くれるし!!」
いいところを一生懸命考えて2番目に出てきたことを思いついて言ってみるが、
なぜか亮が苦虫を潰したような顔をする。
「…ど、どうかしたの?亮」
「……いや、吹雪なんだが…あいつ、チョコレートの類嫌いだから優介に食わせているだけだぞ…」
「最低ね」
バレンタインにチョコなんか頼まれたってやらないようにしようっと小日向が呟くのを聞いて、
なんだか泣きたくなってきたけれど、
そこで、いやなことを思いついてしまった。
「うう、うううう、じゃあ…まさか、苦手なくさやパンとか納豆パンを俺が引いた時に率先して食べてくれるのも…」
「ああ、それはアイツの好物だな」
哀れむように亮がトドメを刺してくる。
「…あら、相性ばっちりなのね」
「どこがーーっ!!」
「ちょうどいいじゃない、ニガテなモノ押し付け合いできて」
けらけらと小日向が面白そうに笑う。
なんかもう知りたくなかったことを知って絶望したくなる。
…ああでも、このケーキ美味しい。
もぐもぐとケーキを食べながらぐっすぐっすと泣いていると、話題の中心人物がふらりと現れた。
「オヤ?藤原どうしたんだい?泣きながらケーキなんか食べて…そんなに美味しいの?
それとも小日向にいじめられたの?」
「ううう〜吹雪のせいだあああ〜」
「…ハア?」
困惑している吹雪が小日向や亮を見るけれど、
小日向は笑いすぎでヒイヒイといいながら机を叩いているし、亮は目線を反らしている。
「…まあいいや、藤原食べ終わったらちょっと付き合ってくれるかい?
図書館でちょっと調べ物あってサ」
「ん、わかった」
「ああ、急がなくていいから…詰まらせるよ?」
藤原なんだかリスみたいで可愛いなア、なんて微笑みながら俺を撫でてくれる。
…なんていうか、さ。
俺は男ってことわかっているのかな。
そんな風にまるで女の子とかに接するように触れられると勘違いしてしまいそうだ。
…こんな風に触れられるぐらいには…吹雪は俺の事を友達だと思ってくれるのだろうか。
そうだといいな。
なんだか頬が温かい気がする、そんなことを思いながら最後の一口を食べ終わる。
「ありがとう小日向、美味しかった」
「…いえいえ、お礼だもの。気にしないで」
相変わらず小日向は笑ったまま…なんだか苦笑しているような気がするけれど、どうしてだろう。
「じゃあいってくるよ」
「ああ、行ってこい」
亮もなんだか苦笑したまま俺を送り出してくれる。
本当二人とも苦笑しているのはどうしてだろう、なんてことを思いながら吹雪と二人でカフェテラスを出る。
まあ、すぐに吹雪から難題をふっかけられて頭からその事は抜けてしまったのだけど。
*
「…なんていうか、まあ、天上院と藤原が友達なのはわかったわ」
「…そうか、今日はまだマシなほうだったな、あいつらケンカすると大変でな…」
「大変ね?カイザーも」
「…ああ、大変だ。心配で目が離せない」
ふーとため息をつく丸藤にくすりと小日向が笑みを浮かべながら店員を呼び止めてコーヒーを二つ注文する。
「…む、自分の分ぐらい出すぞ」
「奢らせてちょうだい、面白いモノ見れたわけだし」
fin
09/10/05up
別に前の話とは繋がっていないけど、なんとなくまた小日向先輩と3天才。
…実際の話、男嫌いだとかいうフブキングがなんでカイザーと仲良さそうに見えるのがナゾです。
強いから認めているのかもしれませんが。
リスみたいにぷくぷく頬を膨らませる藤原が書きたかったというのも目標なんだぜ!!
あいつらの好物の違いっぷりも面白くてたまらん。
本当何故友達なんですかね!!お互いの嫌いなもの食わせるためかーッ!!(笑)
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