「なみだのあと」







眠る君をただ見守っている。
すやすやと気持ち良さそうに寝ている君の顔を見ている。

愛してる、愛してる、何度言葉にしても足りないぐらいに愛している。
君だけを愛している。
君も僕を愛してる。愛している。
君は恥ずかしがりやだからめったに言わないけれど、僕を愛してくれている。


とても幸せ。


だけど、幸せなはずなのに何故か胸が痛くて今にも泣いてしまいそうなのです。


「ユベル」
ふと、寝ていたはずの君が薄っすらと瞳を開いて僕を見る。
『…なんだい、十代』
「ん」

もぞもぞと布団から手を伸ばして僕の顔に触れる。

「…泣いている気がして」
『泣いてないよ？』
ふわりと微笑んでみせる。
それを見て気の所為かと首をかしげる。

「…そうか、ソレの所為なのかな。泣いているように見えた」
つうっと頬に指を滑らせる、そこにある模様のことなのだろう。
確かに、涙の跡に見えなくも無い。

『…違うよこれはただの模様さ』
「だけど、お前泣き虫だろ？」
『ふん、誰の所為だと思っているの？』


君と最初に出会ってから随分と泣かされてきた。
前世の君、王子がいなくなってからは沢山泣いた。
君ともう一度再会した時にも泣いた。
君に宇宙に棄てられてからも泣き続けた。
君にこの思いを受け入れてもらえて、一つになった時にも泣いた。


『…そうだね、泣き続けていたからね』
涙の跡が残っているのかもね

『でも、今は泣いてないから』
「いや、泣きそうだろ？」
『泣く理由が無いのだけどねぇ』
溜息を一つ零す。

「理由ならあるぜ、幸せだから泣きたいんだろ」
『何それ、わけがわからない』
抗議するけれど、十代は俺って愛されてるなあ、なんて嬉しそうに笑うだけだ。
…本当、君が電波だって君の友人達が言うのわかる気がするよ。
君が何を言っているのかわからない。


「ユベル」
『なんだい十代』
「愛している」


ずるい、不意打ちはずるいよ。
泣いてしまいそうになるじゃない。
「ほら、幸せで泣きたい気持ちわかるだろう？」
『まあ、ちょっとわかった気になるけど…でも泣いてないってば』


「うそつきのなきむし」
もう一度僕の頬を優しく撫でて、むにゃむにゃといいながら十代は寝てしまった。

『十代？十代ってば、寝たの？』
…もう!!と憤慨してから、十代が風邪を引かないようにずれた布団をかけなおしてあげる。



その寝顔を少しだけ不機嫌になりながら、でも幸せだと思いながら眺めていたら、
きゅっと胸を締め付けられるように苦しくて、また泣きたくなる。

理由は僕が一番わかってる。

…僕は君を手に入れるために沢山間違えたことをした。
君を苦しめるのが、痛めつけるのが愛だなんて思って…たくさん君を傷つけた。
…だけど、君はそんな僕を受け入れてくれて、

…今更だけど僕はしでかした悪事の数々を後悔して、こんな僕が幸せになっていいのかなんて思っていたのだ。

『馬鹿、十代の馬鹿』
ツーンとなった鼻を押さえて零れそうになった涙を強引に引っ込めて、十代のやわらかい頬をむにむにと引っ張る。

そこまでされていても安らかに、僕に触れられて嬉しそうに寝ている十代の顔を見ていて、
本当にむかつく。
むかつくけど大好き。

ハの字に曲がった眉と涙の跡のような模様のおかげで、きっと今の僕の顔は泣いているみたいに見えているに違いない。

『…泣き虫で悪かったね』







fin



09/12/3up

ユベルの顔の模様ネタ。涙の跡っぽいよなあとかいうネタ他の人もやってそうな気がしないでもない
しないでもないけどやっちまえばいいのです。気にしない気にしない。

いやまあ、実際泣き虫だと思いますけどね!!
３期ラストデュエル付近の泣き顔に惚れました。
それ以上に十代の冷徹すぎる覇王様っぷりにも惚れましたが。
あそこのスルーっぷりは酷いと思います。
だが、萌え。

４期から以降は存分にいちゃつけばいいのさ!!というSSでした。

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