「舞台裏は騒がしい」
映画版こんな話あったらいいな妄想です





この状況は正直なところ言えば不満だった。
「なんだよユベル、そんな怖い顔をして…」
十代は逆に嬉しそうだった。
そりゃ嬉しいだろう、憧れのデュエルキングに未来のデュエリスト。
一緒にいて、デュエルできて嬉しいだろうよ。

『不機嫌にでもなるさ、大体ね…君は面倒ごとに首突っ込みすぎなんだよ』
「でもさ、デュエルモンスターズが無くなったら困るだろ?」
『……本当に、そう思ってる?』

デュエルモンスターズが無ければ、僕が幼い君に出会わなければ、君は普通の人間のままでいたかもしれない。

「ああ、思っているさ」
十代が真剣な顔をして僕を見つめる。
「そりゃまあ辛いこともあったけど…でも、そのおかげで俺は戦える。
…それに、ユベルとこうやって今一緒にいることが出来るのもデュエルモンスターズのおかげだろ?」
そう言って微笑んで僕の頬に触れる。


…バカ、十代のバカ。


「まあ、デュエルモンスターズが無くても…前世からの縁はあるだろうから、いつか出会えていただろうけどな、俺達」
『…当たり前だろ』
「でも…こんな風に触れ合えなかったかもしれないんだぜ?」
それはイヤだろ?と首をかしげて聞いてくるのは反則だ。
『そう言うのはずるい』
もう、ドコでそういう事覚えてくるのさ、と僕が言うと
大人になったからな、と十代が笑いながら僕に反論する。





「…うわ、うわーー…十代君、人前でそんなのはマズイよーーーってもう一人の僕何を言ってるんだよ!!もう!!」
伝説のデュエルキング武藤遊戯が恥ずかしそうに遊城十代のやりとりを見ている。
俺には精霊が見えないので十代が一人で虚空に向かって喋っているようにしか見えないのだが、

…わからないが、凄く幸せそうだった。

微笑ましく見守っていると、十代がこちらの視線に気がついたのだろう、苦笑する。
「あはは、ごめんな…って遊星には見えないんだっけ」
「ああ、見えないが…楽しそうな気配だけはわかった」
あれ、それって凄く恥ずかしいところ見られた?とか十代が真っ赤になる。
「じゅ、十代君…見えていても凄く…うん、えっと…」
「…え、あっ…す、すみません」
「いや!!いいんだよ!!本当凄く仲がいいんだね、カードの精霊とそんな風に心を通い合わせられるとか凄いと思うよ」
ちょっと照れるけどね、と恥ずかしそうに遊戯が苦笑する。

「あ、そうだ」
こうすればいいんだと、十代がデュエルディスクを構えて一枚のカードを発動させる。
「ユベル召還っと」
『ちょ、ちょっと十代何してるの!!』

キラキラと光が集まって十代の頭を後ろから抱きしめるような体勢で左右非対称の体を持つ美しい悪魔が召還される。
恐らく実体化される前と同じ体勢なのだろう。
…まあ、すぐに十代に抗議するために十代の前に回りこんで文句を言い始めてしまったが。

「えー、だって…お前もさっき遊星に話が聞こえるなら文句の一つぐらい言ってやりたいとか言ってたじゃないか」
『い、言ってたけど!!』
「ほら、どうぞ」
にこにこと十代が笑いながらユベルの背中を押す。

『おい、そこの遊星とかいうヤツ、お前の所為なんだからね!!
この僕に許可を取らないで十代に問題ごとを持ち込まないでよ!!』
「…ああ、すまない」
『自分のエースモンスター取られるとかどれだけドジなの!?』
「…重ねて本当にすまない…あれは俺も油断をしていた」
それは本当にその通りだったのでぺこりと頭を下げて謝る。

…だが、そこで何故か文句が飛んでこなくなる。
もっと言われると思ったのに何故だろうと思いながら顔を上げる。
身長が高い人(精霊)なので自然と見上げることになってしまうのだが、
見上げるとユベルは酷く困った顔をしていた。

首をかしげてどうしたんだと声をかけると、ますます困った顔をする。
『ううう、やだ!こいつ僕苦手―――!!』
そう叫んで十代の後ろに隠れてしまう。
「こら、ユベル何してるんだよ」
いつもだったら相手が謝ろうと何言おうと高圧的に相手を叩きのめすようなことばかり言って喜んでいるのになあ、
と十代が首をかしげていると、
『だ、だってこいつ本当に十代と、武藤遊戯に対して申し訳ないことをしているって素直に考えているんだもん!!』

何こいつの心の中!!
ヨハンの中も随分なモノだったけど、こいつの中も相当だよ!?
いやー僕が苦手なタイプー!!とかユベルが叫んでいる。

「こら、ユベル…遊星に謝れよ?」
『だ、だって十代…』
「お前、俺にお前の事が苦手だとか言われたら傷つくだろ?」
昔のお前だったらそれが君の愛だとか言って喜ぶか…今も喜ぶのか?と首をかしげつつ…
「盗まれたのはスターダストだけじゃないだろ、サイバーエンドまで盗まれたり…
他にも沢山強力なモンスターが盗られているんだ。
…俺がお前取られなかったのもたまたま狙われなかったからだぜ?」
『でも十代は…盗られたら、取り返してくれるだろう?』
「当たり前、だろ?
でも…それは遊星も一緒だからな」

なあそうだろ?と十代が俺に微笑みかけるので、ああ、と頷く。

『ふん!!せいぜい僕や十代の足手まといにならないでよね』
誰があやまるかー!!そう言って光の粒子になってユベルが消える。
その様子を見て十代はハアアアと大きな溜息をついて、遊戯は苦笑している。
「…本当、なんであんな減らず口ばっか叩くんだろ…」
「大変だね十代君。でも凄く楽しそう」
「俺もそう思う」
「…そんなこと無いですよ遊戯さん〜〜!!遊星までーー!!」


きっと十代の傍で見えないけれどユベルも文句を言ったりしているのだろう。
そう思うと少しおかしくて、
本当は危機的な状況なのに少しだけ気が緩んで、自然と笑みが浮かぶ。





『ふん、本当に暢気なんだから』
『くり〜くりいい!!』
『くりくりくりー!!』
『僕らがしっかりすればいい話だって?当たり前じゃないか』
もふっもふっとクリボーとハネクリボーの二匹を揉みながら、3人の会話を聞いている。
相変わらず気の抜けた会話をしている。

本当、僕がいないとまったくダメダメなんだから。
『仕方無いから手伝ってあげるか』

そう言いながら僕は笑っていたのだけど、自分じゃ気がつかない。
それに気がついたクリボーとハネクリボーがくりくりと笑いあっていた。





fin



09/12/13up

ユベル映画に登場(多分)おめでとおおううう!!
ああもう楽しみすぎて脳みそがスパークしてこんなものができました!!(チーン)
こんな風に会話があったらいいのにな!!いいのになーー!!
とか、思ってるんですが時間の都合で多分無いのかなとか思います。
ならば勝手に製作だとか頑張ってみました。
成長した十代を見れるだけでも感謝!!だけどな!!
ユベルが使われるような展開になったらいいなあ!!とか夢だけは見ておく。

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