「クロスゲート・パラダイム・アカデミア」
注:1期十代が4期の時代にタイムスリップな話です








昼休み、いつもどおりにドローパンを買ってレッド寮近くの丘で過ごしていた。
物凄くいい天気で思わずうとうとっとしてしまって昼寝したのがまずかった。
気がついて腕時計を見て真っ青になる。
…昼休みはとっくに終わっていた。もうすぐ最後の授業がある時間だけど普通に行けば間に合わない。
となれば、あの森を突っ切らねばならないわけで
「…クロノス先生遅刻したら煩いもんなあ…仕方ないか」
幸いなことにデュエルディスクは持ってきているので、悪さをする精霊が出ても大丈夫だろう。

…そう思って精霊界に繋がったりする森に入ったのがまずかった。



「ぷっはあ!!なんとか間に合ったああああ!!」
全力で前だけを見て振り向かず森を突破する。
なんだか途中で違和感を感じたような気がしたけれど、今は考えない。
…ちょうどアカデミアの正面に出た。
髪の毛に葉っぱとかくっついているけれど遅刻するわけにはいかない、全力で教室に走る。
「遅刻遅刻遅刻――!!」
どどどどと走る。廊下は走ったらダメでしょう!?とか言われたような気がするけど笑顔ですみませんと言って走る。
曲がり角を曲がろうとしたとき、見覚えのある黒い人影がいたけどもう遅かった。
ごつんとか痛そうな音を立てて万丈目とぶつかった。
「じゅううううだいいいいいい!!」
「うわ、ごめん万丈目!! 大丈夫かあ?」
「万丈目さん、だ!!まったく久しぶりに授業に出てきたと思えば…」
ぶつぶつと文句を言う万丈目…ん?ひさしぶり?昼前にも会ったのにどういうことだろう。
首をかしげて考えている間に万丈目にずるずると引っ張られていく。
「あれ?万丈目―教室あっちじゃなかったっけー?」
「6時限目のクロノス教諭の授業はこっちだろうが!!これを落とすとお前留年だろう、早く来い」
うわ、それはやべえよ!!といいながら教室に入る。
吹雪さんと明日香に挨拶をして、…どうやら三沢や隼人は休みなのかいない。
いつもの定位置に向かうと翔が嬉しそうな顔をした。
「アニキ!!授業に出てきたんだ!!」
「なんだよー翔ーそれじゃ俺が授業出てないみたいじゃないかよー!!」
「…アニキの場合は出てもいつも寝てるけどね…」
そこで、あれ?と思う。
「なあ、翔…いつのまにブルーに昇格したんだー?」
「え?」
翔は俺と一緒のレッド制服だったはずなのに。
…まあ、随分強くなったからイエローに昇格するかもしれないという話はしていたけれど
ブルーだったのだろうか?それも、こんなに早くに?

「はいはい、授業なノーネ!!そこ、ムダ口叩かないノーネ!!」

なんか今日はヘンなことばかりだ、とか思っていると授業のチャイムが鳴りクロノス先生が入ってくる。
「出席を取るノーネ」
そうして、いつもの授業が始まる。
昼寝をする準備をするために懐からカモフラージュ用の紙を出してくると翔がこっそり声をかけてくる。
「…アニキー今日はちゃんと授業受けないと、単位まずいよー…テキストは?」
「…実は、忘れてきちまって…」
「もう仕方ないなあアニキは」
天上院明日香、天上院吹雪…クロノス先生が名前を呼んでいく。
翔と二人でもそもそと準備をしている間に
「遊城十代〜〜」
独特の声でクロノス先生に呼ばれる。
「…は「はいはーーい…遊城十代います…!! セーフだよな!?先生!!」…い??」
俺の声が別の場所から聞こえる。
見上げると入り口のほうに俺がいた。
入り口にいる俺も幽霊でも見たような顔をして俺を見ている。

なんだ、これ。

「え、え、えええ!?アニキがふた、ふたり!?」
「どどどどういうことだだだだだ!!」
翔と後ろの席の万丈目がビックリした声を出す。
異常に気がついた明日香や吹雪さんもこちらとあちらを見て慌てている。
「お、俺だってわかんね…う、うわっ!!」

入り口に立っていた俺がダンっと走り出し、あっという間に俺の傍にやってくる。
胸倉をつかまれたと思ったらガツンと酷い音がする。
どうやら突き落とされたらしく、ずるりと椅子から滑り落ちる。
「…遊城十代何をしているノー…?」
「先生」
クロノス先生が何かを言おうとすると、それを酷く冷えた声がさえぎった。
「…俺、ちょっとトイレにいってきます」
ひいっと固まったクロノス先生を横目にずるずると引っ張られて教室から引きずり出される。
(翔や万丈目、明日香や吹雪さん達まで真っ青な顔をしていた)

…俺も突然の出来事と、もう一人の俺にびびってなすがままにされていた。

屋上に引きずり出され、投げ出される。
「…何者だ、お前。答えろ」
酷く冷たくて、暗い声だ。これは覚えのある感覚だった。
闇の力を持っている連中の暗い気配…こいつ、闇のデュエリストか。
なんで俺の格好をしているのかまったくわからないけれど、
俺に成りすまして何かする気だったのだろう。おあいにく様だ。
「…お前こそ!! 何者なんだよ!!」
辛うじてなんとか持ってきたデュエルディスクとデッキケースを確認する。
よし、大丈夫。戦える。
「遊城十代に決まっているだろう?」
「俺だって遊城十代だ!!っていうか、どう考えてもお前がニセモノだろうが!!」
すいっとニセモノの俺の目が細くなって俺を睨みつける。
…何故か、その瞳がオレンジと緑の不思議な光をたたえた不可思議な瞳に見えた。
あーやっぱりこいつ俺のニセモノだ!!
俺の目はあんなヘンな色じゃねーもん。
「構えろよニセモノ!!……デュエルだ!!」
「…化けの皮はがしてやる」
カシャンとお互いにデュエルディスクを構える。

デュエル!!と二人の十代が叫ぶ。

「俺の先行!!…ドロー!!」
ニセモノは相変わらず鋭い眼光で俺を睨みつける。
けれど、俺は全然怖くない、大事で心強いヒーロー達がいるからな。
「エレメンタルヒーロー・エアーマンを召還!!」
エアーマンの効果で手札に望みのヒーローを呼び寄せる。
手札を確認…よし、いける。
俺のフェイバリット、フレイムウイングマンでぎったぎったにやっつけてやる。
「カードを1枚伏せてターンエンドだっ!!」
「俺のターン!! …ドロー!!」
俺のニセモノのターンで、アイツも手札からモンスターを召還する。
「ネオスペーシアン・グローモス召還!!」
知らないモンスターだ、ネオスペーシアンって何だろう。
そう思っている間に向こうはカードを1枚伏せてターンを終えた。
こいつはどんな手を使ってくるのだろう?そう思うと少しだけワクワクした。
「俺のターン!!…手札の融合を発動してフェザーマンとバーストレディを融合!!」
「…うー…俺のフェイバリット…」
「俺のだって!さあ、どうするんだよー俺のニセモノ〜!!」
期待はその通りのものになった。

「来いっ!!エレメンタルヒーロー・ネオスッ!!」
「うっわー何それ!!すっげえーかっこいいー!!」
あれよあれよという間に俺のモンスターはやられていく。
こっちも負けていないけれど…こいつ、すっげえ強い!!
不謹慎だけどすげえワクワクしてきた、楽しい!!
「ダイレクトアタックだ!!」
この攻撃が通れば俺の負けだ。
あーくっそーくやしい。見事なまでに手札もフィールドにも対抗策になりそうなものがない。



『…ねえ、ちょっと十代ってば』
姿は見せず声だけでユベルが先ほどからちょいちょいと声をかけてきて煩い。
今、忙しいんだって…俺のニセモノの化けの皮はがさないといけないのだから
『…だからあのニセモノの事なんだけど…あの子…』
俺の瞳を通してユベルが力を使ってニセモノを調べていたのだけど
ユベルにはどうにもアイツが何者なのかわからない…らしい。
『そうじゃないんだけど…なんていうか…うー』
なんだか歯切れが悪いユベルに適当に相槌を打って、デュエルを続ける。
「これで終わりだっ!!ネオスでダイレクトアタックだ!!」
しぶといヤツだったけれど、これで終わりだ。
「行け!!ネオス…」
『…あ!! まって!!まってー!!十代っ』



あーちきしょう、負けちまうのか、すっげえ悔しい。
「行け!!ネオ…」
『まって!!まってー!! 十代っ』
銀色のネオスというモンスターが俺を攻撃しようとした瞬間。
目の前にぶわっと黒い影が現れ…その誰かが俺を庇うようにネオスの攻撃を受けた。
「ユベル!!…馬鹿っ」
『……っ!!』
ニセモノの俺が顔を青くしてデュエルを投げ出して
…突然現れて俺を庇った精霊…ユベルっていうらしい、そいつを抱き起こす。
…なぜか、その名前を聞いて胸の奥がちくりとした…ような気がしたけれど、
それどころじゃなかった。
『十代!!こっちの十代もホンモノの十代だよ!!』
「…はい?」
ユベルはとんでもないことを言った。

デュエルどころではなかったので、中断して2人と精霊1匹で落ち着いて話をすることになった。
『…ねえ、そっちの無邪気で可愛かった頃の素敵な十代…自己紹介してくれないかなあ?』
「なんかすっげえ恥ずかしいこと言うなあオマエ…遊城十代、オシリスレッドの一年生だぜ?」
なんでそんな当たり前の事を聞くのだろう。
「…は?俺は3年生だぜ!?」
「ええええ!?」
今度は俺がビックリする番だった、いつのまに俺3年生になったのだろう。
『…やっぱり』
一人だけ納得したらしいユベルがまるで迷探偵万丈目サンダーのように今の状態を説明してくれた。

次元というのは横だけじゃなくて縦にもとか、時間の流れがどうのとか、
あの森は精霊界にも繋がっているけれど前の件があって時空の歪みとかすっげえ難しいことを言われたけれど

一言で言えば

「…つまり、俺はあの精霊界に繋がってる森が原因で未来にタイムスリップしたってこと?」
「…おーさすが俺、わかりやすい」
『…ねえ、大人になった僕の遊城十代…少しは賢くなったのじゃなかったの?』
慰めるようにユベルを撫でる未来の俺。それを少し不貞腐れながらも許してあげるよ、なんて甘い声を出すユベル。
二人の仕草とか視線とか……なんていうか、すっげえ恥ずかしい空間にいるような気がしてきた。
「…何があればこうなるんだろ…未来の俺」
「…ま、大人になればわかるぜ」
『その件に関しては後にして…今は………!』
扉のほうに視線をやったユベルが何かを察して急に消える。
次の瞬間、バタンと激しい音を立てて扉を開けてみんながやってきた。
「…ごめん、ユベルの事はこいつらに秘密な」
小さく耳打ちをして未来の俺が言うので思わず頷く。

「うわーー!!やっぱりアニキが二人いるううう!!ど、どっちのアニキが僕のアニキー!?」
「丸藤先輩!! おちつくドン!!…こう考えるザウルス!!…アニキが二人で2倍お得!!」
「馬鹿かお前らは!!よく見ろ…アホ毛があるないで区別が!!」
…一部知らない人もいるけれど…なんていうか、酷く落ち着く空気だった。

まあ、まったくもって問題は解決しないわけなんだけど。
「…うーあー…これからどうしたらいいんだろー…」
「ま、どうにかするさ」

そういう未来の俺があまりにもかっこよくて、
この人がいるなら…大丈夫、どうにかなるさなんて思ってしまった。

こうして、俺の奇妙な数日間が始まったのだった。











つづ…かない!



10/01/17up

クロスゲートパラダイムシステム、略してCPS。某スパロボで出てきたトンデモ次元システムがタイトルの元ですが
内容は関係ないと思うよ!!
ちょうどいいタイトルが思いつかなかったとも言う。

一度はやってみたかったタイムスリップネタでした。
一応続きあるんですが、つか、戻るまでのプロットもあるんですが、
蛇足かしらと止めちゃってるのでしたが、まあ、そのうち書いたらアップするやもしれません。

ほら、歴史が変わるとかってロマンですから、うふふ。
でもやりすぎ感あってうだうだ悩んでる私でした。


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