「秘密で迷惑な俺達のヒーロー」
注:映画後日談っぽい話








場所は日本、時間は深夜、
ここしばらく起こっている、デュエルモンスターズのカード盗難事件やらでデュエリスト達はぴりぴりしている。
実際、ヨハンや翔とカイザーの元からレインボードラゴンやサイバーエンドが何らかの方法で盗まれてしまったということもあったので、
俺自身もぴりぴりしていた。
ヨハン達から聞いたところによると、十代がその事件を追っているらしいが、
あいつからはまったく連絡がないらしい。

まあ、いつものこととはいえ、
俺が兄達に交渉して十代用にと登録したIDを使って万丈目財閥のデータベースを使ったりしているようなのに、
俺にすらまったくもって連絡してこないあの馬鹿野郎に腹を立てていた。
誰でもいい、経過ぐらい連絡しやがれ、なんて思いながら寝ている…

そんな夜だった。

夜中なのにぴろぴろ鳴る携帯をみてみれば、十代からのメールだった。
件名はこれまたイライラを増長させるようなタイトルで、
うっかり中に添付された写真などみないまま携帯の電源を切ってしまったのを今も悔やんでいる。

すぐに電話すればよかった!

朝、「過去にタイムスリップしてきました」という素っ頓狂な件名と共に添付された、
伝説のデュエリスト武藤遊戯と十代、そして知らない男がズタボロになりながら笑顔で写ってる写真をみて、
奇声を上げたのは仕方ないだろうが!



『なんだいうるさいね!十代は疲れて寝ているんだよ!
用件は何なの!』

ぷるるると長い、酷く長い呼び出し音の後、
電話にでてきたのは十代ではなく、
まさか電話にでるとは思わなかった精霊の声がガンガン響いてきた。
どうも操作がよくわからないらしく、これって壊してもいい?とか
駄目だにゃー!十代君に怒られるにゃー!とか非常にうるさい。
うるさいが、聞いておくしかないだろう。

「おい、ユベル!十代は何をしたんだ!メールをみたが状況がわからん!
十代のそばにいたのならずっとみていたのだろう、教えろ」

『教えろだって?』

酷く冷えた声が響く。
っていうか、声がものすごく低くて男のようで怖い。
十代にべたべたで甘くてもこの精霊は最悪の部類に入るやつだったことをうっかり失念していた!

数秒の葛藤の後、

「っく、どうか教えてください!」
この屈辱的な台詞を言う羽目になったのもすべて十代のせいだ!

『ふう、十代もおまえみたいに素直だったらいいのに』
それって誉めてくれたのか?
『まあいいや、わざわざ頼まれた以上説明してあげなきゃねぇ』
ご機嫌が治ったらしく、
パラドックスとかいう輩によるデュエルモンスターズの歴史改変の事件の顛末を聞くことになった。

聞いた後、思わずため息がこぼれる。
表にはでてこないくせに裏で相変わらずとんでもないことに巻き込まれている十代に腹が立つような、
無事でよかったと安堵するような、
複雑なものが混じったため息だ。

同行している大徳寺先生やユベルの苦労よりはましかもしれないが。
「まあ、とりあえずパラドックスとかやらは倒して、
レインボードラゴンやサイバーエンドは取り戻したのか」
『そういうこと、あいつに勝った後。
過去から戻ってきて、
ヨハンとかカイザーとかにカードを渡しに行ったりしたし、
十代も結構ダメージ受けたからね、今日一日は休ませてあげる予定』
ふわりと優しげな声のトーンだ。

が、

『まあ、起きたらおしおきだけどね』
うふふふと笑いに冷たいものが混じる。

なんだか急にやばい雰囲気だとか思ったが間に合わなかった。

『そうだ!ちょうどいいよからちょっと聞いてよ!十代が、十代が本当ひどかったんだから!』
そんなものは聞きたくないとか断る暇なんて無い。

『大会が開催されるまえに皆を避難させなきゃいけないからって、
十代が僕を使って騒ぎを起こしたまではよかったんだけどさ!』
いいのかそれは!
ごそごそとパソコンを起動して該当する大会の記事の記録を横目でみてみる。

見出しに大会直前に謎の爆発とかあった。
まあ、その後安全が確認されたとのことで、大会は少し時間をずらして開催されたとかある。

これか!
なにをしているんだあいつは!!

『そんなくだらない仕事だけど、最初は僕を使ってくれたからちょっとうれしかったんだけど。
後で理由聞いたんだよ!』

ああ、もういやな予感しかしない。

『僕が攻撃しても攻撃力0だから被害でないだろーとか十代が言ったんだよ!
ひどいよううじゅうだいいいい!』
「ああ、ひどいな、本当にひどいな」

おまえら二人ともな!!
ノリノリで「皆はやく避難しないとー!」とか叫ぶ十代と
会場を破壊しつつ『仕方なくつきあってあげてるんだから!』
とかいうユベルの姿がありありと脳裏に浮かんで頭が痛い。

『で、本題だけど十代は僕にどう償えばいいと思う!?』
「しるかあああああああああ!このどあほうどもがああああ!
適当に無理難題でもふっかけておけえええ!」

思わずそう叫んで通話ボタンをぶちりと切ってしまった。

静かになる部屋。
窓から外を見ればさわやかな朝の風景が広がっている。
この平和もあの馬鹿十代が守ったのだと思うと無性にむかつく、

今回も人知れずあいつは戦ってきたわけで、
ほとんどの人間があいつの活躍をしらない、
強さだってしらない。
どうせ、十代は気にしないだろうけれど、
むしろ、「秘密のヒーローみたいでかっこいい」とかいいそうだ。

むかつくが、後でもう一度、
今度は十代が起きているときにでも電話を…いや、次はいつ暇だったろうか?
十代は今ヴェネツィアだと言っていたはずだ。
行く余裕はあるだろうか、
スケジュール帳をみながら、テレビをつける。
のんきなニュースが流れている。

今日も世界は平和だ。
その平和を改めて噛みしめつつ、人知れず世界を守ったヒーロー達を思う。




「ふん、俺たちぐらいしか知らないのだから、代わりに感謝するしかないじゃないか」











おわり



10/01/29up

映画後日談書いてみたかったからかいてみた!!
名前だけ登場してた万丈目出してみた。
っていうか、映画は色々語られなかった話とかあるから
ネタ宝庫ですよ!!妄想ワクワクすぎます!!
というわけで、まずは一本書いてみた!!


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