「変則トライアングラー」
パラレル学園もの?
覇王=十代の双子でノース校の親分、ユベル=男装の美少女だけどやっぱり性別はユベルで不明。










「疲れた」

そう小さくつぶやいて黒衣の、デュエルアカデミア・ノース校の制服の少年が屋上にあるベンチに座る。
「あはは、お疲れさま。留学そうそう凄い人気だったね」
はい、お昼ご飯食べそびれていたんでしょう?
そう言いながらドローパンと缶コーヒーを渡して、隣に座る。
「留学生など別段珍しいものでもあるまいに」
「うーん、珍しいと言えば珍しいけど、
それ以上にこのデュエルアカデミア本校の有名人、遊城十代の双子の弟だからね、君は」
ついでに言うと、この僕、ユベルとも幼なじみである。
「そうなのか
あいつから来るメールにはそんなこと書いてなかった。
いつも、エビフライがどうだの、追試がどうだのばかりだったから」
「あはは、十代らしいね」
「ああ、元気にしているのだけは伝わっているからな」
その言葉につられて僕も微笑む。

「まあ、だからこんな状況は想定外だ」
「こんな事だったら最初から同じ学校通っておけば良かった?」
「いや、別に」
ただ、こんな状況ではいつ十代とデュエルできるやら。
はあ、と覇王がため息をこぼした。



それは、3日前。3年にあがってすぐの事だった。
世界中にあるデュエルアカデミアの各校のエースが留学してきたのだ。
そして、現れた留学生の中に、万年落ちこぼれのくせにデュエルだけは馬鹿強い、
この学校で起こる事件を解決してきた遊城十代の双子の弟である遊城覇王がいたのだ。
それはアカデミア本校を巻き込んでの大騒動に発展した。

「ノース校代表、遊城覇王だ」
その名前が本人から発せられた時のどよめきは凄かった。
その時の様子をなぜか十代がいなくて見ていなかったのが残念だ。

後で聞いたら、アークティック校のヨハン・アンデルセンと遊んでいたとか聞いて、
まあ、十代らしいなあと思ったけど。

それはさておき覇王である。
可哀想なことに、十代が本校で何をしていたのか知らなかった覇王は質問責めやらデュエルを挑まれたりした。
最初は律儀に受け答えをしていたが、日に日に増える人にとうとう限界を迎えた。

今日は一時的にノース校にいた万丈目や明日香達がうまくごまかしてくれて、
授業をさぼって屋上で休むことができた。
でも、明日はどうだろう?
大丈夫かな、覇王倒れちゃう気がする。
ちらりと横を見れば、
もそもそとパンを食べ終わった覇王と目があった。

ユベル、と覇王が唐突に僕の名前を呼ぶ。
「そういえば、おまえのその制服を見るのは初めてだな」
「あ、そういえばそうだよね」
似合う?そう言ってオベリスクブルーの制服を引っ張る。
「昨日までは男装で今日は女装か」
「あはは、そうだねえ」
ちなみにレッドの制服は入学当初性別を偽ってレッド寮にいたときのものだ。
現在は残念なことにオベリスクブルー女子寮にいるのだが、
結局ほぼ毎日レッド寮に行っているから、どっちに所属しているかと言われれば、レッド寮側だろう。
「今日はなぜその格好なんだ」
「いや、今年に入ってキャラ被る子が現れた上に十代にまとわりついてて、
今日はイメージチェンジを謀ってみた」
おのれ早乙女レイ、僕の真似をしやがって。
びきびきとこめかみをひきつらせていると、
「で、肝心の十代の反応はどうだった?」
続きを促された。

「それが聞いてよ!十代ったらひどいんだよ!
その制服だと、胸ちっこいのがよくわかるなあ。とか開口一番に言われた!」
うわーんひどいよ十代!でも愛してるよ十代!
そうやって僕を傷つけるのが君の愛ってわかっているからね!
と叫ぶと、覇王がくすりと笑った。

「相変わらず仲がいいようだな」
「まあ、そうだけどさ。うーん、やっぱり覇王とも同じ学校に通いたかったなあ」
「その話は終わった話だろう?」
なんでわざわざ別々の学校に通うことになったのかは、
十代も覇王も未だ教えてくれない。

そこは凄く今も不満に思っている。
本当どうしてなんだろう?
なんて思っていると、

それよりも、と肩のあたりにずしりと重みを感じる。
「は、覇王?」
「眠い、寝る」
そう言って覇王が目を閉じてしまった。
ちょっと!と文句を言おうとしたら、すーすーと規則正しい寝息が聞こえてくる。

よほど疲れていたんだね。

「よいしょっと」
そのままじゃ危ないからそっと覇王の頭を自分の膝に乗せる。
スカートが短くて、覇王の髪の毛が膝にあたってちょっとくすぐったいけど我慢できないほどじゃない。

いつも思うけど、十代も覇王も不思議な髪の毛。
髪の毛の根本は明るい茶色なのに、先に行くと濃い茶色になっている。
あと、覇王には十代には無いかわいい双葉のような房がある。
風に揺れてぴよぴよとするそれを撫でながら、
なんとなく歌いたくなって、覇王を起こさない程度に小さな声で歌う。

そよそよと揺れる木々向こうにはきらめく南国の海、
ノース校はずいぶん寒いところにあるみたいだし、
覇王気に入ってくれたかなあ?
気に入ってくれたよね、とか思いながら歌い続ける。

授業はさぼっちゃったけど、たまにはこういうのもいいものだ。


そうして、しばらくすごしていて、
ぽかぽか陽気で僕もうとうとしはじめていた頃、

「ユベル」
「うひゃう!」
後ろから名前を突然呼ばれるのと同時に、肩にずっしりと重みを感じる。
「じゅ、十代?」
「なんだ?」
首を後ろに向けようと動かすと、凄い近くに十代の顔がある。
うわ、本当に凄く近いよコレ!
どきどきしてくるじゃないか!
「顔、赤いぜ?」
にっと意地悪く笑う。
っていうか、そりゃ赤くもなるよ!
「耳元で喋らないでよ」
「仕方ないだろ、あ、こら動くと覇王落ちちまうぜ?」
「その前に君が僕に抱きついているから動けないよ!」
離れてよ、と言うとイヤだ。と返された。

そう言ったまま十代は黙ってしまった。
覇王は起きてないかな、とか思って覗いてみれば大丈夫そうだった。
あれだけ騒いだのに起きないのもちょっと凄いなあ。

「3日ぶりなんだけどな」
「はい?」
「こうやってユベルと二人きりで喋るの」
いや、正確には3人だけど
「だって仕方ないじゃない、というかなんで君が覇王のそばにいてやらないのさ?
大変だったんだから、って」
文句を言いながら横を見てみれば不機嫌そうな十代の顔。

「ふうん、俺よりも覇王なんだ?」
いつも俺に愛してるだの、君だけだとか言うくせに、
「じゅ、十代!まって!」
体に絡みつく十代の腕に力が入るし、
耳元でそんな風にささやかれるのは凄く、なんていうか、
「何?」
くすくすと笑う声が僕の耳をくすぐる。

ああもう、何が不満なのかわからないよ!
そんなに覇王と一緒にいるのが不満なわけ?
っていうかそれを言うなら十代だってヨハン、ヨハンって、あいつとばかりいるじゃないか。
精霊が見えるからって何さ、精霊が見えるぐらい万丈目だって、エドだって見えるじゃない。
というか、僕をほったらかしにしてさ、本当にひどいよ十代。
十代と同じ世界を共有していいのは僕だけだったはずなのに!
僕の気持ちなんか知らないで!
僕が誰と一緒にいようと別に十代には関係ないじゃない。

そりゃまあ、覇王と一緒にいたら十代と一緒にいるみたいで、
それは覇王にとっても失礼な事だってわかってるけどさ、
少しは寂しさが和らいだのは事実だ。
これもそれも十代が悪いのに。

「ん?」
そこで、ふと普段ならありえないような事に考えが行き着く。

「まさか、十代。覇王に嫉妬しているの?」
僕をとられたとかでも思っているわけ?
「悪いか?」
むすーーっとした低い声が響く。
え、本当だったの?
いつもだったらありえなくて、
それよりも普段は絶対みないような不機嫌そうな顔を見ていたら、笑っちゃいけないのに笑ってしまった。
「何だよ」
「別に?でも」
ますます不機嫌になって僕から離れそうだった十代のTシャツをぐいっと引っ張って頬に唇を触れさせる。
本当は十代の唇に、というところだったのだけど、体勢的に無理だったんだからあきらめた。
「馬鹿だね、十代」
「どうせ俺は覇王と違って馬鹿だよ」
「この場合の馬鹿は、頭の良さじゃないんだけどねぇ?」

頬を照れくさそうにさする十代を横目で見ながら、くすくすと笑う。
「確かにまあ、覇王は僕にとっても大事な人だよ。
でもそれは十代の弟だからなんだからね?」
わかってるでしょ?と言うと、こくりと十代が頷く。

「もう、覇王が起きてたらどうするつもりだったんだい。
僕にこんな事を覇王の前で言わせるつもりだったの?」
「う、それは悪かった」
ようやく反省したみたいだけど、覇王に対してなのか、僕に対してなのか、どちらなのやら。

「もう数日もすればさ、覇王の状況も少しはましになるだろうし」
「そうだな」
「覇王も十代とデュエルしたがってたしね、まだでしょ?」
それが終わったら、この騒がしい状況もひと段落するだろう。
「そうしたら、今まで我慢させた分沢山愛してあげるからね?」
「あーそれは結構」
そう言いながら再び十代が笑いながら僕の肩をぎゅうっと抱きしめて、髪の毛に顔を埋める。

「今、こうやってユベルの愛を補給してるからいい」
「馬鹿」

くすくす笑いながら十代のさせるがままにしておく。

そんな状態でも覇王はまったく起きなかった。
本当すごい疲れていたんだなあ。
ちょっとは休めているといいのだけど。





「疲れた」

海岸というよりも崖といったほうがいい、そんな場所にテントがあった。
そこの住人にはただ「疲れた」とだけ言って入り込む。

「OH覇王!ビューティフルな顔が台無しだ。
ちゃんと寝ているのかい?」
「寝てない」
昼間、すこし授業をさぼって寝ようとしたが寝れなかった。
それに、寮にある部屋に戻っても次から次に誰かが押し掛けてきて就寝時間がくるまでゆっくりできない。
と、言うと、テントの主であるジム・クロコダイル・クックが苦笑を浮かべる。
「それはよくない」
「だから、寝る」
今日はバカップルの痴話喧嘩にもならん馬鹿な会話のせいで寝不足に拍車がかかった。
まあ、寝たフリをしていたのは十代にばれていたようだが。
どうせあいつのことだから、俺に対して悪いとも思わないだろうし、
ユベルを数日とられれたお返しだとか考えてそうだ。
迷惑な話だ。
あの時いっそ、起きてやればよかったか?
困るのはユベルだけか。

「いつも独占しているのだから、たまには少しは譲ればいいだろうが」
「ん?」
「なんでもない」

そんなことを思いながら、テントの隅に畳んであった寝袋を引っ張り出す。
そして、そのまま寝袋に勝手に潜り込む覇王を見て、ジムは焦る。
「覇王、それは俺の寝袋」
「うるさい負け犬。この俺に負けた分際で指図をするな」
デュエルアカデミア本島に向かう途中、
親睦を深めるつもりのデュエルだったのだが、その時に覇王に負けて以来、すっかり下僕扱いだ。
ちなみに、そのとき覇王にデュエルを挑んだオブライエンはすっかりそのときのデュエルがトラウマになったらしい。
覇王の顔を見ると必死に冷静さを保とうとしているが、残念ながらその努力は失敗しているようだ。

それよりもだ、
もう少ししてから寝るつもりだったけど、覇王が寝るなら俺も今日の作業は終わらせて寝るべきか。

「覇王、となりで俺もカレンも寝るけどいいかい?」
予備の毛布を取り出しながら聞いてみると、ん。とか返事があった。
どっちなのかよくわからないが、狭いテントではくっついて寝ないわけにはいかない。
まあ、たぶんいいのだろうと勝手に判断して、ランプの明かりを消して覇王の隣に潜り込む。
よほど疲れていたのか隣からは規則正しい寝息が聞こえてくる。


「いいDreamを、覇王」
おやすみ。おつかれさま。
そう呟いて寝袋から出ている覇王の頭を優しく撫でてジムも寝ることにした。











おわり



10/03/25up

覇王様と十代が双子の学パラ!!(なんか厳密に言えば違う気もしないでもないが)
ついでにアンケートであった覇王にユベル取られて嫉妬する十代を超融合!!

…ジムが出てるのは趣味です。
覇王様がノース校のトップなのは覇王様インナーが万丈目っぽい。黒い。留学生にノース校枠がいない。
いやまあ、ヨハンがノース校にあたるらしいですけどね!!
とかまあ、色々ねじりこんでみたらこうなったです。
なんでノース校に覇王様は一人で通っていることになっているのとかは
妄想していたらなんだか楽しい事になってきたので、
続きとか思いついたら書きたいと思います。
とりあえず、ノース校を蹂躙するサンダーの回がもっかいみたいわあ。
どういう学校だったのかウロオボエでございます。ノース校


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