「井戸の中からこんにちは」
本編35話の攻撃力0モンスターカードの井戸の中にもしもユベルがいたらの話









万丈目の兄ちゃん達と万丈目がデュエルアカデミアの買収を賭けてデュエルをすることになった。
万丈目はハンデとして攻撃力500以下のモンスターしか使えない、ということになったのに、
万丈目のデッキにはおジャマイエローしか条件を満たすモンスターがいない、ということで
このデュエルアカデミアのある島にある森の奥、
昔の生徒が余った弱小カードを捨てた井戸にカードを探しに来たのだった。
でも、そこの井戸に行くと呪われるとかいう噂あるし、ついていくことにした。
万丈目が精霊が見えるのかとか確かめたかったってのもあるけど。

「って何で貴様がのこのことついてきているんだああああ」
「いや、カードの悪霊とか出たら大変だし」
「馬鹿馬鹿しい」

なんてやりとりをしていたら、本当に悪霊が出ちまった。
まあ、捨てられたカードの精霊達だったのだけど。

『やいやいてめーら何しにきやがったー!』
『何しにきやがったー!』

『まさか捨てられた俺たちの恨みを忘れたわけじゃねえだろうなー!』
『だろうなー!』


周りをみてみると、井戸っていうか、洞窟っぽいよなここ、なんてことを思う。
カードだけじゃなくて、なんかカプセルみたいなゴミも捨ててある。

「知るか、俺が捨てた訳じゃない」
『野郎!やるなら相手になってやるぜー!』
「来るなら来い」
呆れたように万丈目が言う。
いや、あんまり挑発しないほうがいいんじゃないかなあ、
とかいう言葉は、残念ながら遅かった。

『その言葉後悔させてやるぜー!』
『出番ですぜ!姉貴ーいや兄貴ー?どっちでもいいやー!!ユベルの親分ー!』
『おーやーぶーんー!』
精霊達が騒ぎ始める。

「なあ万丈目、まずくないか?これ」
「ふん、はったりだろう?だいたいここにいる連中は攻撃力0だろう?
そんな連中の親玉などたかがしれている!」
「おー万丈目すっげー頼りになるー!」
そうこうしている間に精霊達の騒ぎが大きくなってきた、
そして、

『あーもーお前達うるさーーーい!』
泣きわめく精霊達を蹴散らしながらそいつは現れた。
青と白の髪の毛を逆立て、緑とオレンジの色違いの瞳は苛ついた感情をわかりやすく表している。
男のような女のような奇妙な体をした悪魔だ。
いろいろな精霊をみているからわかるけれど、
ちょっとあれ、すごくレベル高いんじゃないのか?
『ユベルの親分ー!』
『親分ーあいつらが俺達が攻撃力0ってバカにするんだー!』
黒いのと緑のがひしっとそいつに抱きつくが指一本でびしびしとはじきとばされている。
でもまあ、しつこく起きあがってユベルと呼ばれた精霊に泣きついている。

正直、まさかこんな大物が出てくるなんて思っていなかったから俺と万丈目は固まっている。

『てめえら頭が高いぞー!このお方はなあ!悪魔族最上級モンスター!
この井戸に捨てられた年月も最年長!俺達の親分!ユベル様だー!』

ばばーん!という効果音が聞こえそうな感じで緑色のやつが紹介したけれど、

その紹介されたユベルと言えば、

『あれ、姉貴、いや兄貴?親分大丈夫ですかー』

ずどおおおんという効果音が聞こえそうな勢いで床にうずくまって、黒いやつに突っつかれている。

あいつ捨てられたのかよ、最上級モンスターなのに。
ちょっと可哀想だな。

そんなことを思いながらユベルとその周りで必死にそいつを慰める精霊を眺めていると、
万丈目がユベルのカードを見つけたらしい。
埃とか泥とか、なんだか煤っぽいもの?やらを丁寧に優しく払ってやってテキストを読んでいる。
「最上級ということだから攻撃力があるかと思えば、やはり0なのか」
「あ、でもすげえ面白い効果持ってるんだな、こいつ」
「だが、毎ターンかかるコストが少々厄介と言えば厄介か、
並のデュエリストならば使いこなせないかもな、
だから捨てられたのか」

『違う!僕は捨てられたんじゃない!!』
ぼそりとつぶやかれた万丈目の一言で、
ユベルが涙目になりながらキッと万丈目を睨みつけて叫ぶけど、
『ち、違うもん、いいこになれって、ひっく、いいこになったら迎えに来るって、ひうっえうっ、
迎えにきてくれるって言ったもん、言ってくれたんだもん!
だ、だから、待ってるんだもん!!』
うえええええええええんと盛大に泣き出した。

なんか、カードを手に入れるどころじゃなくなってきた。

「だああああ泣くなあ!最上級のくせに泣くな!」
「万丈目〜」
『だめねえアニキったら、レディの扱いなってないわよぉん』
呆れたように万丈目のデッキからおジャマイエローが出てきて俺と一緒に万丈目をたしなめる。

『お、おまえ!イエローじゃないか!』
『イエロー!」
『その声はあんちゃん達!あんちゃん達じゃないの!!』
緑のと黒いのがオジャマイエローと抱き合う。
どうやら兄弟だったらしい。
泣いたままのユベルを放置して、イエローが万丈目の手伝いをしてほしいと頼むと、あっさり承諾された。
むしろ、他の連中もここから出られるならと必死に万丈目に頼み込んでいる。

なんだかんだで万丈目は優しいからここにいる全員の世話を見てやる!ということになったところで、
ユベルのことを思い出したらしい、万丈目が手を差し伸べる。

「おい、お前も来るか」
『いかない』
なんで、というのは愚問だろう。
こいつはずっとここで主人を待っているつもりなんだ。
もう来ないかもしれない主人を。


「こんなところで待っていても来るわけ無いだろう、
俺達ですら、先生に聞くまではここの存在を知らなかったんだぞ」
『ユベルの親分、万丈目の旦那についていったらどうですかい』
子分達も心配そうにユベルに声をかける。
「万丈目はツンツンしてるけどいいやつだぜ?」
俺も黙ってみているのも何だしと思って口を出す。

『いいの!僕はここでジュウダイを待ってるの!
行きたい奴だけで行けばいいじゃないか!
僕を使っていいのはジュウダイだけなんだから!』
涙で潤んだ目でキッと睨みつけられる。

「ジュウダイ?」
ユベルが叫んだ名前を反芻しながら万丈目が俺を見る。
『そうだよ僕のジュウダイ!ユウキジュウダイ!
何、お前、ジュウダイのことを知っているの!?』
「知っているも何も」
じとーっとした瞳で俺を見る万丈目。
そんな目で見られても困る、俺にはさっぱり心当たりがなくてぶんぶんと頭を横に振るけれど、
万丈目は非情なやつだった。
「ユベル、ユウキジュウダイという奴を見つけてやるから、一度でいい、力を買してくれないか?」

うーむとユベルが考えてから、

『ジュウダイを見つけるのが先だったら考えてやるけど』
ぼそぼそとそう万丈目に返事する。

それを聞いてにやりと笑いながら、俺をがしっと捕まえる。
(まてよ万丈目!俺はあいつの探してるジュウダイじゃねーぞ!)
(うそをつくな!こんな妙な名前のやつなぞお前以外にいるか!)
(でもまじで心当たり無いんだって!!)
(アカデミアを守るためだ!)
それを言うのはずるい、俺がひるんだ隙にユベルの前に俺をぐいっと押し出した。

「おい、ジュウダイというのはこういう奴だろう」
『え?』
ユベルがびっくりしたような顔をして、俺の顔をのぞき込む。
「よう」
三つの目がじーっと俺をみている、なんていうか、すっげえ怖いんですけど。
『ジュウダイ?』
「お前の探しているジュウダイかわからないけど、俺の名前は遊城十代だぜ」
『じゅうううだあああああああいいいいい』
泣きじゃくりながらユベルが抱きついてくる。
じゅうだいじゅうだい、僕のじゅうだい大きくなっちゃって
じゅううだああいいかっこいいよじゅうだいいいいい。

ああ、どうやら本当に俺がこいつが待っていたジュウダイみたいなのだが、
生憎な話、本気で記憶にない。
そもそも、アカデミアに来たのも今年に入ってからが初めてで、子供の頃に来た覚えも勿論ない。
『ごめんなざいいい、いいこにするから、いいこにするからもうおいていかないでえええ
うちゅうはこわがったよううううううう』
「ああ、わかったから、わかったから、落ち着こうぜ、な?」

泣きつかれたのか、多少落ち着いたユベルが俺の前にちょこんと座っておとなしくしている。
しかしまあ、現れたときの圧迫感やら色々があったせいで、
なんていうか凶暴な猛犬がお座りしてしっぽをぶんぶんと振っているような感覚だ。
「ちょっとさ、お前のこと捨てたとか、ここでお前が待ってたとか覚えてないんだけど」
『ひどいよジュウダイ!』
「でも、ちゃんと思い出すから、あともう捨てないから」
『うん!』
本当に嬉しそうにユベルが笑う。
「あと、ジュウダイじゃなくて、十代だから」
ジュウダイ、ジューダイ?じゅうだい?十代とぶつぶつと俺の名前を呼ぶ練習をしているユベルを見ている
と、なんとなくだけど
本当にちょっとだけだけど、懐かしい気がした。
覚えていないけど、俺はこいつを本当に捨てたのかもしれない。
そうだったら申し訳ないことをしたと思う。


「では、十代を、見つけてやったのだから約束は守ってもらって、手伝ってもらおうか」
適当なタイミングを見計らって万丈目が話を切りだした。
こいつのこと怖くないのかよ万丈目、ちょっと感心した。

のだが。

『ふん、お前には感謝するけど、手伝うのを考えてやるとしか言ってないだろう、
僕は十代以外の奴に使われるなんてイヤだからお断りさ』
「なっ!」
あーこれは万丈目やられたなあ。

うぎぎぎとなっている万丈目と得意げに笑うユベル。
ついでにそれをおろおろとして見守っている攻撃力0の精霊達。
『あのぅ、十代の旦那、どうにか手伝ってもらえないか説得してもらえないかしらぁ』
と、おジャマイエローがおずおずと俺に話しかけてくる。

それは、俺も考えていたからおジャマイエローを安心させるように笑いながら頷く。
「ユベル。俺からも頼むよ、この学校の危機でさ、
万丈目にこのアカデミアの運命を託さないといけないんだ」
『うっ』
今度はユベルがうぎぎと呻き出す。

「本当に一度だけだからさ、頼むよユベル」
ほら、万丈目も頼めよ!と頭を下げさせる。
『アタシ達からも頼むわーん』
『親分お願いしますっ』
『おやぶーん』
精霊達にも頼まれたらもう折れるしかないとでも思ってくれたのだろう。
『もう、しょうがないなあ、十代の頼みだし、仕方ないから力を貸してあげる』

わざとらしい盛大なため息をついて、ユベルが力を貸してくれることになった。


で、迎えた万丈目の兄ちゃんと万丈目のデュエルの日。

「俺は永続魔法暗黒の扉を発動!このカードがある限りお互いのモンスターは一体づつしか攻撃はできない!」
「だがそれもこちらがそのカードを破壊するカードを引くまでだろう!私のターン!」

攻撃力0のモンスターばかりの万丈目のデッキはどうしても防御主体になるし、ライフは削られていく。
だけど万丈目も負けていない、
「おジャマグリーン、おジャマブラックを生け贄に!ユベルを攻撃表示で召還!」
『ちょ、万丈目のアニキーー!!そこはおジャマデルタハリケーンじゃないのぉぉぉ!?』
あーーれーーー!と叫ぶおジャマ兄弟を墓場に送りつつ、ユベルがフィールドに現れる。
『早く終わらせてよね、僕は十代の元に帰りたいんだから』
他人に使われるのもあまり気が進まないのだろう、むすーっと難しい顔をしてそんなことを言う。

「な、攻撃表示だと!?何をふざけた真似を!」
まだユベルの効果を知らない万丈目の兄ちゃんがびっくりしている。
「何!?ユベル!?なぜあのカードを万丈目君が!」
なぜか校長先生がびっくりして立ち上がった。

そうこうしている間に万丈目がさらに行動に移る、このターンで終わらせる気だ。
『万丈目、はーやーく!』
「わかっている!トラップ発動!ゼロ・スプライト!」
攻撃力を0にして2回攻撃をするトラップだ。
元々攻撃力0のユベルには攻撃力が0になったところで問題は無い。

そして、
「ユベルでキングドラグーンを攻撃!ナイトメアペイン!」
「なああっ!?」
そりゃびっくりするよなあ、だけどユベルの効果はもっとえげつない。
相手モンスターの攻撃力分のダメージを与えるのだから。
「ぐああああああああ!」

だけど、なんだかマジで痛がってないか?
どくん、と胸の奥が勝手に鳴っている。


「いかん!今すぐやめさせなければ!」
校長先生がすごく焦っている。


動悸は止まらないし、冷や汗が出てくる。
不意に、脳裏に小さい頃の俺と、俺とデュエルをしていたお兄さんがデュエルが終わった後、
どさりと倒れてしまった記憶が思い出される。

ずっとずっと、忘れていたはずの、怖い思い出だった。


「万丈目!ユベル待ってくれ!だめだ!!」
「アニキ?」
万丈目のお兄さんがあんな風になったら大変だ、あわててステージに向かって走るけれど、

間に合わなかった。

「ゼロ・スプライトの効果でもう一度攻撃!」
どおおおおん、と派手な音をたててデュエルが終わる、終わってしまう。

「ユベル!」
ようやくデュエル場にたどり着いて叫ぶ。
もうもう立ち上った煙が消えていくと、
ぐったりと片膝をたてている状態だけど、万丈目の兄ちゃんは無事だった。

万丈目が、いつもの一、十、百、千、万丈目サンダーと叫んで勝利宣言をしている。
周りの皆も万丈目の勝利を喜んでいる。

俺は、それどころじゃなかったけれど、
思わずへたりこんでしまった。

『心配しなくても大丈夫だよ十代、あれだけ怒られたのに前の過ちを僕が犯すと思う?』
くすくすとユベルが俺の顔を覗きこんで微笑む。

『十代?』
「ああ、お前がそこらへんのこと覚えていてくれてよかったよ、ユベル」
ため息と共に、そう言うとなぜかユベルが泣き出しそうな顔をする。
『思い出してくれたんだ、昔の事』
「え?ああ、今さっきだけど」
『じゅうだいいい!』
嬉しそうにユベルが俺の胸に飛び込んでくる。
ようやく俺も誰も傷ついていない、
ユベルも傷つけていないことがわかって安堵の笑みを浮かべることができた。


それからの話

万丈目のところにはあの井戸にいた連中全員が居候することになって毎日すごく騒がしい。
同じ階の部屋なので結構色々聞こえてきてすごく騒がしくてたまらないのだけど。

まあ、俺の部屋も結構うるさい。

今日もうぎゃーと俺の悲鳴が響きわたる。

『もう、起こそうとしただけじゃないか!』
「あのな!目を覚ましたらいきなり目の前にお前がいたんだぞビックリするだろ!」
『ひ、酷いよ十代!同室の連中もう行っちゃったから一生懸命起こしたのに!』
いつもなら「うるさいよーアニキーまた悪夢?」とか翔が言ってくるのにそれが無い。
「うああああ!もっと早く言ってくれよユベル!朝飯まだなのにいい!」
『知らないよ!バカ!』
ねえ?とユベルが相棒に同意を求めて、
相棒も呆れたようにくりくりいとユベルに頷く。

今日もどたばたとそんな日々がすぎていく。
でもまあ、そんなに悪いものじゃない。

その後セブンスターズとの戦いが終わってから、破滅の光との戦いとか、
ユベルがコブラ先生や留学生のアモンに狙われたり、
覇王の力だの前世だの色々あるけれど、それはまた別の話だ。














おわり

10/4/24up

万丈目がブラックサンダーになってからの話が凄く好きなんですが、
その中でも一番好きだったりするお話がお兄ちゃんズとの対決話で、
ぼーっとあそこらへんの回を見ていたら、攻撃力0だしあそこにユベルいてもおかしくは無いなあ
とか思いついちゃったので書いてみた。
こういうのもパラレルなんでせうかね、本編IFとも言うのかな。
ヤンデレでもなくツンデレでもなく、デレデレ状態のユベルが本編いたら平和じゃないですか!!
でも多分2期で斎王の力ってか破滅の光にやられてヤンデレ化するかもしれない。
やっぱりヤンデレないかもしれない。デレデレライフを続行である!!
つーか、超融合しない可能性もあるやもしれない。3期が無いだろうし。

IFっていいよね!!その瞬間だけはそこに救いがあるように思えるから!!とかどこぞの吸血鬼のお姫様が言ってましたが
ほんとうそうだよね!!とか思いながら書いたSSでした。

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