「世界が終わるその日には」
晴波さんの「そうして君の世界は終わるのか」をリスペクト。ちょっと映画ネタまじり
「例えばの話なのだけど」
仮定の話に意味はないけれどと前置きして、そいつは口を開く。
「世界が滅びて明日みんな死ぬって言われて、それが確実に起こるとしたら、十代はどうする?」
どういう会話の流れだったのかはわからない。
そいつ、藤原優介の近況なんて僕にはどうでもいいことだし、
なんとなくの会話の流れでふと、そんなことをそいつは問いかけてきた。
「ふぇふぁいふぁ」
「あ、食べてからでいいよ」
十代はもぐもぐと目の前にあるエビフライを食べ終わった後、
「世界が滅びるのを回避するために全力を尽くすかな!!」
即答した。
それも全開の笑顔で、
「どうしても世界が滅びるとしても?」
「おう!!可能性が0でも、な!!俺は最後まで諦めないぜ!!」
目の前に料理が並んでなければ、得意の「ガッチャ!!」が飛び出してくるだろう。
「…すごいなあ、十代は」
藤原はそう言って笑って、十代も笑っていて、
その後は他愛も無い世間話をしたりして、そうこうしている間にその話は終わった。
だけど、
僕は、どこが面白いのかわからなくて、なんとなくもやもやした気持ちになった。
*
好物のエビフライも沢山食べたし、久しぶりに藤原ともデュエルが出来た。
とかいいながら、十代はいい気分で川沿いを歩いている。
あまりにも赤くて綺麗で、すべてが真っ赤に染まって、
少し怖くなるような、まるで世界の終わりのような、
…そんな、夕暮れ。
だから、ふと思い出す。
例えばの話だけど、
世界が滅びて明日みんな死ぬって言われて、それが確実に起こるとしたら、十代はどうする?
そう問われて、十代は思ったままに答えたわけなのだけど。
「んーちょっとかっこつけ過ぎちまったかなあー」
『うん、そうだね』
「…本当、お前のその減らず口どうにかならないのかよ…」
「でも、思ったことは、言ったことは本当だぜ?」
『ねえ、世界の終わりが来るとしても、君は戦い続けるの?』
「いやまあ、最終的な結論としてはやっぱりそうなるんだろうけどな。
だって、最後に何をしたいーとか言われても、
エビフライがたらふく食べたい、とか。デュエルがしたいとか、そういう事は普段も機会があればやっているし」
今日も藤原とデュエルしたしな!!と十代が笑った後、
もしも、世界が滅びるならば。
どうしてもその滅びを阻止できない、だとしても、
それをただ見ている事は出来ない。
今でも…まあ、多少の波乱はあるけれど、好きなことをして生きていて、
あのデュエルアカデミアにいる時のほうが波乱に満ちた時間を過ごしていた。
それこそ、世界の命運だの賭けたデュエルなんかもあったりしたわけだし。
その事を考えれば、随分と好き勝手にしていて余裕もあるわけだし、それで十分だ。
だから、世界が危機に陥るならば、全力でそれを阻止するために戦うさ。
たとえ、世界が滅ぶとも、滅びるその瞬間まで、諦めないで、
それ以上にやることなんて、思いつかない。
……そういう性分に出来ている。
それに、仲間との思い出と絆、俺のヒーロー達や相棒、それから、ユベル。
それだけあれば、世界の終わりに何もいらない。
十代はそういって締めくくった。
『ほんとう、面倒な性格をしているよ、君は』
溜息を思わず零す。
「それにまあ、アイツと約束したわけじゃないけれど。
アイツのやったことを否定したのに、
…世界の滅びとか、破滅の未来とか、何もしないままでいるなんて出来ないからな」
滅びの未来から来たという男の事を引き合いに出すのは卑怯だ。
別に約束をしたわけじゃない。
だけど、世界が滅んだ後も、方法はどうあれ、世界を救おうと必死になっていた男の姿を見て、
近いのか遠いのか、わからない未来に、世界が滅ぶと知った十代が…何もしないわけがない。
実際、あの事件の後…世界が滅ぶような何かは起きていないか、前兆は無いか探り続けている。
僕としては僕と十代の二人きり(猫と幽霊がいるけれど、無視できるレベルの存在だ)の生活を滅茶苦茶にされて不機嫌にもなる。
それに、なんで十代がそんなことを背負わなきゃいけないんだ。
世界なんか滅びたって構わないじゃないか。
『…世界が終わるなら、全てが消えてしまうなら、
その瞬間にこそ、僕らの魂が永遠に離れることが無いという無二の証明になる。』
なんて素晴らしいのだろう。
真っ赤な世界で悪魔が世界の終わりのその瞬間を、夢見るように謳う。
「馬鹿、そういうわけにはいかないだろう?絶対世界なんか滅ぼさせないし、俺達はまだ消えないし」
『所詮はたとえ話、仮定の話だからね』
オレンジと緑色の瞳だけは真っ赤な世界でその色合いを残したまま、僕は笑う。
『まあ、確かに僕はどんなことがあろうとも君の傍にいるしねぇ、離れることは無い。
だから最後の瞬間まで君と一緒なのはどうやったって覆せないモノだから、望むことでも無い』
ほんの少しだけ拗ねたような声音で、ようやく十代が何を言いたいのか察してくれたらしい。
「ああ、なるほど。
『世界の終わりの瞬間、その瞬間まで一緒にいたい』とか言って欲しかったのか」
『そうそう、抱きしめてちょーだい』
両手を広げて十代に抱きしめて?と強請るが、冷たく払われる。
「…そういうのは、吹雪さんに譲るよ」
多分それどころじゃないだろうし、
一日中、世界が終わるまでお前を抱きしめて過ごすなんて、恥ずかしくてできない。
『じゃあ、キスなら1秒もいらないからさ』
まったく、酷い悪魔の誘惑だ。
俺は真面目に考えてああいう風に答えたのに、本当酷い話だ。
とか十代がぼやいているけれど、僕には関係ない。
「まあ、でも。そうだな、どうしても世界が終わるなら、
最後の最後には…」
全てが真っ赤になった世界で、
まるで世界が終わるかのような風景の中で、
十代が僕に手を伸ばして触れて、小さく呟く。
「おまえの望みどおりにしてやることも考えておく。
最後まで付き合わせちまうわけなんだし」
『酷いな、そこは約束してよ』
十代が笑うのを見て、僕も笑って十代の手に自分の手を重ね合わせた。
おわり
10/05/28 up
晴波さんのSSS「そうして君の世界は終わるのか」が大変萌え設定だったので
十ユベでかいていいー?と聞いたら快くオッケーもらえました。
晴波さんあいしてう。
本編終了後、映画後のワクワク二十代様なので大変前向きな返答です。
これが4期二十代様だったらえらいずんどこ後ろ向きだったり欝ったりネガディブったりしてる
とかそういうのも書こうかしらとか思ったのですが、
晴波さんが書いてくれてました!!さすがチーム恋は狂気の管理人だ!!
や・め・ろ!!とか言われながら終了。
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