「Happy birthday dear...」
覇王様がメイドでジムが時計職人というそりさんのチクタクパロの設定に萌えて書いたSS第3弾です。
そりさんお誕生日おめでとうございます贈呈SS










「やあ!やあ!ジムのお誕生日おめでとうーーー!!」


ドアにノックも無く、呼び鈴も鳴らさず闖入者がバコーンという音を立ててドアを蹴破った。
いつもの事なのだが、この男、どうにか学習しないだろうか。
ドアにいつ穴が開くのか心配でならん。
…ああ、もう壊れていたな。ドアの鍵が無残にも壊れてしまったではないか。
今から大工に頼めばなんとか夜までには直せるだろうか、というか、そうでなければ困る。

ジムはあまりの突然の出来事でぽかーんと口をあけたままだが、そろそろ正気に戻ってもらおう。
隣で一緒に掃除…というよりも、俺では届かないところにあるモノを取ってもらっていたら
いつの間にか一緒に掃除をしていたジムの服の裾を引っ張る。


「…あれ?」
とか考えていると、綺麗なエメラルドグリーンの髪と同じ瞳をきょとんとさせながら、闖入者が首を傾げる。

「…っは!!…helloヨハン!!……吃驚したじゃないか」
ようやく硬直から脱したジムがにこにこと笑いながらヨハンを出迎える。
「あれーー?」
「what?」
「今日がジムの誕生日じゃなかったっけ」

ドアの片付けどうしようなどと考えていたのだが、ぴくっとその言葉に反応する。

ジムの誕生日。
…実は知らない。
……聞こうかとか何度も思ったけれどなんとなく聞く機会が無かったのだ。

「ヨハン、来週のSundayだよ」
「…おお!!そうだったっけ!!…じゃあ、出直してくるよ!!」
「いやいや、ゆっくりしていけよ…っ!!」
シュタタタと出て行きそうになるヨハンの首根っこをぎゅうっと掴んで離さないジム。
「覇王、お茶の準備をしてくれるかい?」
「え!!覇王のお茶!?飲む飲む!!俺、ミルクティー!!っていうか、覇王も久しぶりー!!」
「…注文をつけるならば、そのドアを直せ」
へへあ〜とふにゃふにゃした笑みを浮かべるヨハンにぎろりと睨みつけつつ、客間の用意をすることにした。

…まあ、予想外のところで知りたかったジムの誕生日を知ることが出来たから、
あいつの希望通りのミルクティーと一緒にクッキーを出してやろう。
なんてことを考えながら。


「…なんか覇王凄く嬉しそうじゃないか?…俺が来たのがそんなに嬉しかったとか!!」
「いや、違う、と…思いたい」
「あはははは!!冗談だぜージムー!!そんなに難しい顔するなよー!!」
あ、これちょっと早いけど誕生日プレゼントな!!とかにぱーっと笑うヨハンに呆れながらも、
ジムも笑顔になって…その日の午後のお茶の時間はとても楽しかった。





それから、一週間後の日曜日。
朝から台所は戦場と化していた。
誰かに手伝ってもらえるようなアテもないわけだし、すべて一人でこなすしかない。
だから、作れる料理も限られてしまうけれど、今回のは自信作だった。

ちゃり、と時計を見ればちょうどいい時間。
オーブンからお皿を取り出してみれば、鮭を使ったパイが上手に焼けていた。
自分でもうまく出来たと思う。
味はトメさんのレシピを使わせてもらったし、試しに一度小さなパイを作ったときにジムに好評だったので大丈夫だ。
ただまあ、可愛らしく装飾した魚が…少々自分らしくないな、なんて思うけれど。
『わあ、これを覇王が?とても美味しいし、キュートだね、Cutするのが勿体ないよ』
なんて笑うジムの顔が容易に想像できる。

…その顔を想像しているだけで、なんだか胸がドキドキとしてくる。
「…まったく、らしくないな」
ふっと笑って次の料理に取り掛かることにした。





「わ、わ、すごい料理…だね!!」
「今日はジムの誕生日だと、このまえヨハンが来た時に話していたから
…2年も一緒にいるのに、今までずっと知らなかった分少し豪華にしてみた」
「いや、こっちこそずーっとなんとなく自分の誕生日なんて忘れていたから…
気がついたら過ぎてるってカンジで…

だから、嬉しいよ覇王」
Thanks、と言ってジムが笑ってくれた。

「…すまない、こういう時…何か誕生日プレゼントでも用意しようかと思ったけれど…
こんなこと、初めてだからよくわからなくて…何も用意していない。
何か希望があったら言ってくれ、用意する」
そこだけが少しだけ後悔している。
俺はジムのために、ヨハンのように…何かプレゼントを用意することができなかった。
金銭面の事もあるけれど、何をあげたらジムが喜ぶとか未だにわからない。
「…いいよ、こうやって覇王が俺のために料理を作ってくれるだけで」
「でも」
何かをしたい。とジムに訴えると、うーんとジムが考える。
そして、

「じゃあ、また来年も俺のbirthdayを、来年だけじゃない、再来年も、その後も、
ずーっと祝ってくれるかい?覇王がこの家にいる限りずっと、ずーっと。
…油断すると自分のbirthdayが過ぎていることに気がつかないぐらい忘れっぽいから」
「…そんなことでいいのか?」
「勿論!!…あと、来年のプレゼントは期待しているから頑張って」
その言葉に思わずうっと呻いてしまう。
どうしよう、何を贈ったらいいのだろう?
こういう時相談できる人…ヨハンやアモンに相談するのはなんだか嫌だから却下だ。
…困った。来年まで凄く悩みそうだ。

「…わかった、善処する」
「楽しみにしているよ、じゃあ一緒に食べようか!!」
「…ああ、わか………それは駄目だろう?誰が給仕するというのだ」
まだデザートの仕上げが残っているから台所に戻りたいのに。

そう言うとジムが意地悪く笑う。
「…今年のプレゼント」
「うっ」

それは卑怯だろうジム!!と睨みつけるけれど、ジムが笑ったままだけど…
「…ケーキの仕上げしないと駄目だから、やっぱり駄目だ」
そのまま放置するわけにはいかないだろう?
メインのパイをジムが食べ終わったときにケーキを出したかったのに。
「覇王…please」
「……今日の夕食はプレゼントの代わりみたいなものだから、
俺が考えたとおりに予定を進めたい。
…その料理はジムだけのために作ったのだから、ジムだけが堪能すればいい」

少々偉そうだっただろうか、そう思って小さく言い訳みたいになるけれど、付け加える。
「…俺が、ジムにそうしたい。だから」
駄目だろうか?と言うと
「それじゃ仕方無いね」
今回は諦めるよ、と言ってジムが苦笑する。

よし、じゃあ少し予定がずれたけれど次の準備をしよう。
そう思ってぺこりと一礼をして部屋を出て台所に向かおうとすると、

「…うーん、じゃあ覇王のbirthdayには俺が料理を作って振舞ってあげようかな…」
とかなんとか聞こえてきた。

……ジムの場合、それが本気だから困る。
台所に行こうとしたが、来た道を戻ってドアを開ける。
「あ、覇王!!君のbirthdayなんだけど」
「何もしないでくれ!!」
「聞いていたんだ…でもそうじゃなくてさ…俺、君のBirthday知らない」
「知らなくていい!!」

叫んでバタンとドアを閉めて台所に向かった。
ああ、これはもうしばらく…俺の誕生日を教えるまで聞いてくるのだろうな。
孤児院で育った自分が生まれた日なんて、わからないのに。
…面倒なことになった、と溜息を零した。


でも、あいつの誕生日を祝ってあげることが出来てよかった。
それだけは良しとしよう。











Happy birthday!!






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そりさんお誕生日おめでとうございますー!!

何かリクエストあれば書きます!!というわけでいただいたのがチクタクだったので
糖分をいつもより倍倍に多めに不幸成分は少々控えめになっております。
お誕生日ですから!!というわけで、そういうノリのゆるいSSです。

らぶらぶばんざい!!
チクタクばんざい!!