「サマーバケーション!」
「うおおおお、青い空っ!!白い雲!!エメラルドの海ぃぃぃぃーー!!」
『いや、十代自分のいた学校の事覚えてる?こんなのいつでも見て…あー』
ユベルがなんだか呆れた声を出しているけれど、そんなのは気にしないで服を脱ぎ捨てる。
ぽいぽいとデッキやら荷物、赤いジャケットや黒いインナー、ズボンも脱ぎ捨てて、パンツ一丁で海に飛び込む。
『十代、パンツ…』
「大丈夫っ!!これ水着だからーーー!!」
あははははーとすごい高いテンションでザブザブと遊んでいる。
『ハッハッハ、十代楽しんでいるようだね!!』
「おうー!!アクアドルフィンも楽しそうだよなー!!」
イルカっぽいネオスペーシアンがいつの間にかちゃぷちゃぷと水辺に顔だけを出してぷかーと浮いている。
『くりくり〜!!』
「相棒もこいよーうりゃ!!」
くりいいいいいいいい!!とか悲鳴があがる。
…あー、なんかこう、凄く楽しそうだよねえ。
たまたま精霊の気配を察知してフラフラと無人島にやってきて、
切り立った崖の下に白い砂浜があったというだけなのだけど。
泳ぐとかそういう事は僕にはわからないことだから、何が楽しいのかわからない。
だいたい、塩水なんて塩辛いし、まずいし。体べたべたになるじゃないか。
だから
「ユベルもこいよっ!!」
ぱあああっと満面の笑顔でそんなことを言われても困る。凄く困るのだ。
「…あれー?来ないのかよ。ユベルだったら『あははー僕を捕まえてみて十代〜』
なんて言いながら海辺をきゃあきゃあ言いながら走ったり、水かけたりとかすると思ったのだけど」
海から十代があがってきてそんなことを言う。
『ねえ十代、そういうことどこで覚えてくるの…』
「吹雪さん。前に藤原にやろうよ!!とかって迫って藤原に殴られてた」
アロハシャツに能天気なウクレレの音を奏でる馬鹿っぽい顔を思い出す。
ああいうのに四六時中まとわり疲れ、もとい、つかれている藤原に同情しつつ、
何を十代に吹き込んでいるんだなんて思いながら、首を横に振る。
『やらないよ。っていうか、僕は海なんか入らないから』
「えーー!!一緒に泳ごうぜー!!なんでだよ〜〜」
『嫌なものは嫌なの』
「あ、わかった」
何がわかったのだろう、首をかしげながら十代が言うのを待つと、
「水着が無いから泳げないんだな!!…そのままで問題ないって!!水着みたいなもんだろソレ」
『ち、ちがうわーーー!!』
まあ、確かにぴっちりしているし、服みたいなものではあるけれど。
水着だとか言われるとなんかむかつく。思わず否定する。
「どうせ誰もいないし、俺しか見てないし…脱ぐか?」
脱げれるだろそれ、とかいいながら胸元に指を挟みこんで引っ張る。
海で泳いでいたから少し冷えて濡れている十代の指が微妙な箇所をかすってびくりと体を震わせると、十代がにやりと笑う。
『十代、やだってば!!っていうかあいつらが見てるだろう!!』
「いいじゃん仲間なんだし、脱いで泳ごうぜ」
『だめったらだめっ!!』
体を抱きしめながら真っ赤になりながら十代から逃げると、十代が本当に残念そうな顔をする。
「そのままでも駄目、裸でも駄目。じゃあ水着があれば泳ぐのかよ〜」
仕方無いなあ、とか言いながらファラオを荷物から取り出して、包装された何かを出してくる。
「ほら、水着。ちゃんとユベルの分も用意しておいたぜ!!」
『いやそのまえに僕は泳ぎ…うん、もういいです』
ぺかーーーと嬉しそうな笑みを浮かべる十代に、諦めた。
どうしても十代は僕と泳ぎたいらしい。
まあ、水着まで用意されたら仕方無い。
「ユベルに似合うだろうと思って選んだんだぜ」
『まったくもう、どこでそんなこと覚えてきたの?…着替えてくるから』
そんなことを言われたら嬉しくなるじゃない。ばか。
とまあ、そんな感じで少しだけウキウキしながら水着を着たわけなのだけど。
十代が用意したのは黒いビキニタイプのモノだった。
多分体に生えている棘とかのことを考えて着やすいものを、とか思ったのだろうけれど。
右はいい、右の体は女のものだから。
しかし、左は男のもので、普段から晒しているのだからわかるだろうに、
『……』
すっかすっか、と胸元に触れても無いものは無い。
『〜〜〜〜〜〜っ』
どうにか胸ぐらい生えないかななんて思いながら念じてみるが、残念なことにどうにもならないようだ。
ビキニを着るのに実体化は自力でしているわけなのだが、流石にムリか。
十代が覇王の力でも使えばどうにかなりそうな気はするが。
…左の胸をおっきくしてくれないかなーなんて頼むのはどうなのだろう?
「ユーベール、着替え終わった?」
『……っ!!ば、ばか覗かないでよ!!』
「え?着替え終わってるだろ、じゃあ出てこいよ」
ぐいぐいと引っ張られてしまうけれど全力で抵抗する。
『だ、だめっ…恥ずかしい!!こんなの恥ずかしいっ!!』
左胸を隠すように押さえて叫んでも、十代はわかってくれないみたいだった。
どんどん引っ張られて更衣室代わりに使っていた木の陰から引っ張り出される。
ああああ、もうだめ。恥ずかしい。
そう思いながら縮こまっていると、十代が不思議そうに首を傾げる。
「何が恥ずかしいんだ?」
『いや、だって、片方だけこんなスカスカで、似合わないじゃないか』
ああもうこんなこと言わせるなー!!とか思いながらなんとかそう言うと
「そう?全然気にしてないんだけど。すっげえ似合うぜ?」
『〜〜〜〜〜〜っ!!』
天然はこれだから困る。
本気でそう思っているから本当困る。
こんな風に恥ずかしがっている自分が馬鹿じゃないか!!
「じゃ、泳ごうぜ」
内心の葛藤とかなんて無視をして、改めて十代が僕の手を掴んで引っ張っていく。
ああもう、人の気なんかしらないで!!
こうなったら開き直るしかないじゃないか。
思いっきり海水ぶっかけてやる。とか思いながらエメラルド色の海に十代と二人で飛び込んだ。
おわる。
10/07/14up
海に入ろうぜーソレ水着みたいなもんだろー!!とか言われてむくれるユベル。
水着を着たら着たでむくれるユベル、というメモが貼ってありました。
ユベルの服っぽいものを引っ張ってイヤーンエッチ!!とかいうのがやりたかったとも言います。
だって、なんかこう、引っ張ったらぽろりといきそうじゃないですか。
すごい鉄壁の胸ですが。十代なら!!十代ならやってくれる!!
十代のエロプレイに期待して!!
遊城十代先生の次回作にご期待ください。
とか脳内に出てきました。十代がんばれとか叫びつつ終了、ラブラブは書いてて楽しいです。
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