「クロスゲートパラダイムアカデミア2」
注:1期十代が4期の時代にタイムスリップな話その2
授業の終わった自分達以外誰もいない教室で端末をたたく音と3人の話し声が響く。
「あ、この写真〜文化祭のじゃねーか」
「そうそう、ブラックマジシャンガールが乱入してきて、アニキとデュエルしたんだよね」ー」
懐かしいなあと言う翔になんだか変な気分になる。
「俺にとってはつい最近あったことなのになあ・・・」
もうすぐカイザーが卒業式だとかそんな話をしていたはずなのに、
とっくの昔にカイザーは卒業していたとか、隼人はI2社に就職したとか、
ぴ、ぴ、と写真を保存している端末を送っていくと写真の中の俺達は2年生になったみたいだった。
「あ、これは先輩と出会った頃の写真ザウルス」
うれしそうに剣山という後輩があの時のデュエル楽しかったドンと笑う。
「あー!だめだぜ!デュエルの話は!!俺の楽しみ減っちまうから!!」
あわててそういうと、翔と剣山がしみじみとした顔になる。
「うむ、これでこそアニキだよねえ」
聞き流しながら、なんとなく不安になってくる。
・・・本当、未来の俺に何があるのだろう。
ぴ、ぴ、ぴ、と写真を流し見していると、不思議な光景の写真がでてくる。
砂漠の中にアカデミアがある。太陽は3つ、ってことはあの異世界?
「誰が撮ったんだろ、これ…この時は本当に大変だったよね」
「これを見ているとおなかが減ってくるドン」
ユベルの件は本当に大変だった、と、はーーーとため息をつく2人に首を傾げていると
後ろからひょいっと端末をとられる。
「あ、未来の俺じゃなくて遊城サン」
「それ以上はやめておけよ二人とも」
あきれたようなため息をつきながら未来の俺がいつの間にか立っていた。
なんていうか、いつもこの人を見るたびに思うのだけど、
本当にこの人が俺の未来?とか思う。
ちなみに、さすがに未来の俺とか十代とか呼ぶのは違和感があったので、未来の俺のことを遊城サンと呼んで、
俺のことを十代と遊城サンは呼んでいる。
「ちょっとこっちの十代借りていくからな」
今日は遊城サンと一緒に俺が元の時間に戻る方法の相談をした後、一晩中デュエルする予定だった。
まあ、多分相談はまた解決策も見つからないまま終わるのだろうけど…デュエルは楽しみだった。
じゃあ卒業アルバムの編集頑張れよといいながら遊城サンは俺を連れてレッド寮に向かう。
その道の途中で
「あんまり、未来のこと知らない方がいいんじゃないのか?」
「んーデュエルの結果とか、相手のデッキの構成とかじゃなければ結構どうでもいいかもしれない、
むしろ、未来に楽しいことたくさんあるんだって写真を見て楽しみに思うけど…
やっぱりまずいかなあ」
ちらりと遊城サンを見るとなんだか困ったような顔をしながらこちらをみている。
その顔はひどく大人びて、過ぎ去った日々を思い出す老人のようにも見えて、なんともいえない気分になる。
もやもやする。
それが気持ち悪くて思わず聞いてしまった。
「なあ遊城サン、ユベルの件って何があったか聞いていいことなのかな」
推測にしかすぎないけれど、先ほど見せてもらった写真には確かに俺がすごく楽しそうに写真に写っていた。
それは未来だと言われていても納得できるような写真で違和感は無い。
だけど、今目の前にいる未来の俺…遊城サンが自分という事に違和感がある。
たぶん、俺がこんな風になるのはあの精霊…ユベルのことで何かあったのだろうと思うのだけど。
…聞いてイイコトなのか正直…ちょっとだけ、いや、俺にしては物凄く悩んだ。
でも、いい機会だから聞いておくことにした。
『教えてあげてもいいんじゃない?』
ふわりと結城サンの肩の上にユベルがでてくる。
「でも」
『僕は気にしないよ、むしろ知っておいてもらった方がいいんじゃない?
…信じてもらえるかどうかは、そっちの十代次第だろうけど』
ちらりと俺の方を見てから、遊城サンを見る。
しばらく二人で見つめあっていたけれど、ふう、と遊城サンがため息をついて俺を見る。
「…一晩だけ待ってくれるか?」
『だってさ』
というわけで、もう少し待ってね、といいながら
微笑みながらユベルの手が伸びてきて俺の髪の毛をくしゃくしゃかき混ぜる。
そうしている間にレッド寮にたどり着いたけれど、今日はもう予定していた相談やデュエルどころじゃないだろう。
「悪いけど今日はあっちの元万丈目の部屋で寝てくれるか?」
「…わかった」
いや、そんなに硬くならなくていいってと苦笑を浮かべながら遊城サンが自室に戻っていく。
ああ、おやすみと言われたけれど今日は全然寝れる気がしない。
案の定、ほとんど眠れなかった。
*
そうして、寝不足のまま遊城サンの話を聞いていたのだけど、話を聞いているうちに目が冴えた。
っていうか、多分すごい真っ青な顔をしていたんだろうな、俺。
「……大丈夫、か?」
そういって遊城サンは俺に触れようとして…やめる。
それを見て遊城サンの傍にいるユベルが少しだけ悲しそうな顔をしている。
「…やっぱり、聞かせないほうが良かったかな」
それに対してふるふると首を振る。
正直、信じられない話ばかりで…破滅の光と戦う正しき闇の覇王の力、
前世からのユベルとの絆と小さい頃の俺とユベル、破滅の光に侵されたユベルの暴走。
覇王として異世界に君臨して作り上げた超融合のカードと、超融合のカードを巡るユベルとの戦い。
そして最後の最後でユベルを止めるために俺が選択した事。
正直信じろとか言われても困ることばかりで頭がグルグルする。
ぐるぐるするのだけど、
「…ごめんな、ユベル」
『…え?』
ぼそりと呟いた俺の言葉にユベルがビックリしたような顔をして俺を見る。
「…遊城サンから話聞いたのに、全然お前の事思い出せない」
思い出さなきゃいけないことなのに、
…多分きっと、俺のいた時間でまだユベルは苦しんでいる。
『…優しいね、十代は』
にこにこと嬉しそうにユベルが俺の頭を撫でる。
…それは凄く懐かしい感覚なのに、やっぱり思い出せない。
『……僕はそういう風に十代が思ってくれるだけで幸せだよ』
そう言いながらユベルが俺を抱きしめる。
…やわらかいような感覚が伝わってくすぐったいし、恥ずかしい。
遊城サン助けてとか思って視線をそちらに向けると…酷く不機嫌そうな顔をしている。
『…なあに十代…嫉妬?』
「ああ」
あっさりと遊城サンがそう頷いたのでユベルが大爆笑する。
『過去の自分に嫉妬してどうするの!!』
「…わかっているけどさあ、仕方ないだろ?」
唇を尖らせる遊城サンがなんだか子供みたいだ。
その姿がなんだかおかしくて思わず俺までユベルと一緒に笑いだしてしまう。
「なんだよ、お前ら二人して〜」
『あはは、ごめんって十代』
笑いながらユベルが遊城サンのほうに飛んでいって慰めるように遊城サンを抱きしめる。
それで少し機嫌が直ったのだろうか、遊城サンが立ち上がり、デュエルディスクを引っ張り出してくる。
「まあ、この話はそれぐらいにしようか…。というわけで昨日デュエルできなかっただろ?やろうぜ、デュエル」
「やったーー!!」
遊城サンとのデュエルは楽しい、今のところ負け越してばかりだけど今日は勝ち越しておきたい、
そう思いながら俺もデッキを出してデュエルディスクに差し込む。
そのおかげですっかりと遊城サンから聞いた話が頭の中からすっかりと忘れ去られた。
…いや、忘れたわけじゃないけど。
ちょっと怖かったり、悲しかったり、色々とマイナスの感情が渦巻いていた心が随分楽になった。
*
デュエルも終わって、お風呂から帰ってくると俺が戻るのを察したのだろう、ユベルがふわりと隣に現れた。
「十代は?」
『ぐっすり寝てるよ、かわいい寝顔だった』
「そうか、それならよかった」
あんな話を聞かせてしまったから、魘されたりしないかなんて心配していたけれど大丈夫そうだったので安心した。
『ねえ、十代…あの子の未来は、変わるのかな』
「そうだなあ…ちょっとは変わっちまうかもな」
未来を、ユベルの事を知っているのと知っていないのでは随分違うだろう。
今の俺が何か変わるという事はないだろうけど、あの十代の未来が変わるということは十分にありえる。
それがいい方向に行くとは限らないかもしれないけれど。まあ、大丈夫だろう。
『…変わると、いいな』
「そうだな」
ぽつりと小さくユベルが呟きながら俺に甘えるように擦り寄ってくる。
別に今の状況が気に食わないとかそういうワケじゃないんだよ、と言うユベルに
わかってると返しながら優しく髪の毛を梳く。
「未来が変わるにしてもまずは十代を元の時間に返してやらないとなあ…出来るのかなあ、大徳寺先生…」
その件に関して大徳寺先生が調べてくれているようだけど、ここ数日ファラオとどこかにいったまま戻ってこない。
『役に立たない幽霊だね…』
「それ以上に俺たちもまったく役立たずだけどな」
『う、それを言われると辛い』
まあ、ゆっくり考えようぜ、どうにかなるだろうといいながらレッド寮に戻る道を歩く。
「んー今日もイイ天気だったなあ…明日も晴れるといいけど」
『そうだね』
10/08/27up
映画放映前に書いた話なので、映画見た後に読むとまあ、これもある意味過去の改変ですよねー
とかなんとか考えちゃったりする。
これをアップする前にちょっとタイムパラドックスを回避する方法みたいな記事を読んだのですが、
それによると、たとえ歴史を変えようとしても何かしら歴史を元に戻そうとする現象が起きて、
元の歴史と同じような結果になる、という話があって、
じゃあ、つまりはパラドックスさんが歴史を改変しようとしたときに3主人公が対抗して歴史の改変が失敗したのは
ある意味世界の修正だったのではないのか、ナドナドと悶々と考えていたりした。
もう一個の理論だと、修正されても無限の平行世界があるから大丈夫、という話もあったりとかして、
いやまあ、つまりは都合のいいものを選択するがいい、ということですね。
とかなんとか悶々しちゃって一応この話もオチまで考えているんですが、
書かないのが一番いいんじゃないかな!ぼかしておわっておけ!!とか思ってる私なのでした(笑)
シュレーディンガーの猫とか言い出したりしつつおわる。
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