「覇王城のメリークリスマス」
ハオークリスマス!
「メリークリスマスーー覇王――!!相変わらず暗いなあこの城っ!!」
バーンと城の頂上に近い覇王の私室のドアを蹴破って赤い服を翻してこの場所に現れるはずの無い人物が現れた。
そう、目の前にコイツがいるわけがないのだ。
なぜなら遊城十代の体は、自分は、ここにいるのだから。
「あ、なんか納得いかないって顔してるなあ。気にしたら負けだぜ!!」
ガッチャ!!とか得意げに十代の得意なポーズを決めているが、こちらが警戒を解かないのを見て不満げな顔をしていると、
後ろのほうにいたカニのような頭の男がつんつん、と十代(モドキ)に声をかける。
「じゅ、十代さん…えっと、目の前にいる方も十代さん、なんですよね?」
「あー遊星、うん、まあ、えっとこの時期の俺って色々あってさーアハハハハハ
でまあ、あいつは俺の別人格っていうか、一面というか、とりあえず覇王ってやつなんだ」
「…なるほど、わかりました…なんとなくですが」
「んじゃ、遊星に納得していただいたところで」
「ですね」
「…!?」
ぼけぼけした会話に警戒をしていたはずなのだが、思ったよりも二人の動きは早く、ガシっと両腕を捕まれてしまった。
「覇王様ああああ!!ご無事ですかああって!!き、貴様らッ!!何をしているんだーーッ!!」
「あ、虎視眈々と覇王の座を狙ってるバオウ」
「な、何を根拠に…「うるさい黙れ僕の十代に逆らうなんて百億年早いよ」ぶぼおっ!!」
ごすりと十代(未来)の拳がバオウの顔面にめり込んでバオウは沈黙した。
役に立たないヤツだ、と舌打ちする。
…というか、今一瞬十代(謎)の瞳が件の悪魔のようにオレンジと緑色に輝いたような気が…
どういうことだ。とか思うが思案する暇もない。というか、行数がたりない。
「はいはい、他人の心配してる場合じゃないぜー覇王」
「…何を…っ!!」
後頭部に衝撃を感じた瞬間、意識が遠のく…なんという失態だ。
そんなことを思いながら視界は暗転した。
*
「で、これはどういうことだ」
「だから最初に言っただろ?メリークリスマスーってさあ」
さあ!ほら!これ、覇王にってもってきたんだぜと嬉しげに十代(…もうその正体を考えるのも面倒だ)が鳥の足を差し出してくる。
それを手で押しのけながら、変わり果てた我が居城を見上げる。
どこから準備したのかきらびやかな電飾で飾られ、七色に輝いている。
…だいたいどこから電源を…
……何故この俺がこんなことで悩まなければならないのだ。馬鹿らしい。
ため息をこぼしながら隣を見れば嬉しそうに笑う十代。
そして、
「覇王城ってさあ、形がなんかクリスマスツリーに似ていたよなあって思い出したのがきっかけだったんだけどさ」
聞いてもいないことをベラベラと喋りだす。
「…で、連想で覇王ってクリスマスとか祝ったことないだろうって思って
…結構大変だったんだぜー準備、いや俺はあんまり何もしてないけど」
あとで遊星とパラドックスにお礼しないとナァー、とか言う十代にあきれ果てつつ
「クリスマスをこの俺が祝うように見えるか?」
「うんうん、そう言う風に答えるってのも想定内だから大丈夫」
俺が覇王と祝いたかったの、と十代が笑う。
それに対して「そうか」と短く相槌をうち、用意されたごちそうからエビフライをつまみ口に投げ込んだ。
うむ、どういう理屈なのかわからないがまるで揚げたてサクサク。
まあ、ここまでお膳立てされれば言ってやらねばならんだろう、そう思い、エビフライを飲み込む。
「十代」
「んー?」
「メリークリスマス」
それを聞いて十代が嬉しさのあまり飛びついてきて俺の髪をぐしゃぐしゃにして、
らしくない事を自分が言ったことと、ぐしゃぐしゃになった髪のことで不機嫌そうに俺は眉をしかめた。
メリークリスマス!
10/12/25up
このSSは覇王城再建計画様に寄稿した作品となります。
ハオークリスマス!ハオークリスマス!
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