「どっちがタイプ?」
2万hitゆる募その3
どうしてこうなった。
どうしてこうなった。どうしてこうなったんだよう!!
何度も何度も同じことがぐるぐる回るけれど、状況の改善にはまったく有効ではない。
だけど言わずにはいられない。
左腕を覇王がギリギリと引っ張り、
右腕を十代がギリギリと引っ張る。
こんな状況じゃあ、叫ぶしかないじゃないか。
『どうしてこうなったんだよぉぅうううううう!!』
ぎにゃーーー!!という叫び声が無意味に青空に響き渡った。
*
「なあ、ユベルってさあ…俺と覇王どっちが好きなんだ?」
『へ?』
きっかけは本当どうでもいい話というか、
いつまでも答えを出さないでいた僕も多少悪いわけなんだけど。
…まあ、どう考えてもすぐに答えが出るようなものではない。
だから、
『…そんなこと言われても…十代も覇王もどちらが好きとか選べるわけないじゃないか…
大体覇王も十代も『キミ』という同じ存在じゃないか』
「ひっくるめればそうかもしれないけどさ、そうじゃないっての分かってるだろ?」
で、どっちが好きなんだよ。
とか真剣な眼差しでこちらにずずいと詰め寄る。
え、何?今日に限ってどうしてこんなに、とかオロオロとしていると
「そうだな、今日こそははっきりしてもらおうか…」
ゴゴゴゴゴとかBGMに悲しいデュエルとか闇のオーラとか引っさげて覇王が出てくる。
っていうかどういう原理で分離してるの!?
「大徳寺先生に協力してもらったぜ!!」
ガッチャ!!と十代がイイ笑顔で答えてくれる。
「というわけで、だ」
「改めて、だな!!」
「「どっちが好きなんだ?」」
そこから先は十代と覇王による僕の取り合いという、
ある意味幸せともいえそうな、
…あんまり幸せでもないような状況で、
いやまあ、たぶんほかの連中から見れば「よかったねー」とか言われるのだろうけどさ。
「超融合を発動ぉぉぉううう!!覇王の場のユベルとネオスを融合ふはははは!!
さっさとあきらめてジムのところにでも行けよーー!!」
「っは!!それでユベルを手に入れたつもりかああああ!!死者蘇生で十代の墓地のユベルを俺のフィールドにいいい!!
ところでどうしてジムの名前がでてくるんだあああ!!」
『あー、えーと、うん、僕はどっちにいけばいいのかなあ…』
えーっと、えーっと、と首をかしげながら処理をしてフィールドをとぼとぼと歩く。
…結局、両者ドローという結果で、決着がつかなかった。
どうするんだろう、と二人をちらりと見る。
二人は同じ顔を突き合わせて、どの方法がいいかと議論している。
…いっそ、これであきらめてくれたらいいんだけど。
「よし!!この前テレビ見たアレにしようぜ!!アレ!!」
「アレか」
どれだ。
*
その方法はとてもシンプルな方法だった。
「ごぎぎぎぎぎぎぎぎ」
「うぎぎぎぎぎぎぎぎ」
時代劇でやっていたシンプルかつわかりやすい方法だった。
子供に二人の母親がやってきて、裁判官が下したその方法。
子供を引っ張って最後までつかんでいたほうが母親だとかいうことらしい。
…何かその話にはオチがあった気がするが、十代と覇王も知らないらしい。
で、僕が引っ張られるわけなのだが…二人とも忘れているみたいだ。
「いででででででで」
「っぐぐぐぐぐぐぐ」
『あー、えーっと、僕の特性忘れていたんだよね?…二人ともすごく痛いんじゃないかな…大丈夫?』
「だだだだだいじょうぶだぜ!!覇王そろそろギブアップしたらいいんじゃないかなあああ」
「何を言うか十代いいいいいい!!貴様こそギブアップしたらどうだだだだだだだだだだだ」
ぜんぜん大丈夫そうに見えない。
でもまあ、好きにさせておくかなー、なんて思いながら様子を見る。
…ゴギャ。
「…っぐ」
あまりにも全力で引っ張るから十代の肩が抜けた。
『バ、バカ!!全力で引っ張りすぎだよ!!こうなるの分かっていたでしょ!?』
あわてて両方の手を振りほどいて、崩れ落ちた十代を支える。
そっと触れてみれば綺麗に抜けているから、僕でもはめれそうだ。
『ちょっと痛いよ?』
「ぐえ」
ごりっと嫌な音を立てて肩をはめなおす。
『…痛いのは続くだろうし…あとで保健室にいってみてもらって…えーと冷やしたらいいのかな』
「はいはい」
『なんでそんな生返事なのかな!?』
聞いてるの!?十代!!とか詰め寄ると十代がにへらとしまらない顔をして笑う。
ほったらかしの覇王のほうを見るとなんだか苦虫をつぶしたような微妙な顔をしながら
引っ張っていた腕のほうの肩をさすっている。
たぶん、覇王も抜ける寸前だったのだろう、痛そうだ。
あまり表情に出ないから分かりにくいけど。
…覇王も保健室にいかせたほうがよさそうだ。
『あーもう!!こんな状況だし、この勝負は無しっていうか!!
…僕がどっちが好きかっていうのでもめているんだよね!?
二人が同じぐらい大好き!!愛してる!!っての曲げられないのだからそれで納得してよね!!』
一気にがーっとまくし立てると。
さすがに疲れていたのか十代と覇王が、
「…わかった」
「仕方ないよなあ」
と、苦笑いとため息を零して了承してくれた。
『じゃあ二人とも保健室っ!!』
そう叫んで部屋から追い出した。
*
「本当ずりぃよなあーごまかした上に強引に追い出したー…」
「…ずるいのは貴様だろうが」
ユベルにはオチのほうは教えなかったが、時代劇のオチはこうだ。
二人の母親が子供を引っ張り、痛がる子供が可哀想で手を離した女が母親だと裁判官は最後にそう結論付けた。
「でも、ユベルは同時に両方手を離しただろ?
だから、ずるいとか言うならユベルだと思うぞ、俺」
「そこは同感だな」
まあ、そこがいいんだけど。
とか呟くと、覇王が口元をふっと緩ませながら、
わからんな。とそんなことを呟いた。
そして、今日もまた奇妙な三角関係には決着はつかないまま戦いは終わったのであった。
っていうか、これ…一生続きそうな気がする…
まあ、仕方ないわけなのだが。
fin
11/05/25up
十代と覇王様に挟まれてどっちも好きなんだよとかウワーンとなるユベル。
実際のところ十代と覇王様って同一人物なのかそれとも別人格なのかどっちなんだ議論あるぐらいなので
ユベルが選べないよ!とかなっても仕方ないのですよ!!
というわけでようやく2万hitゆる募リクエスト消化ですお待たせしましたー!!
ヨハンが難産だったのが悪い多分(笑)コッチは本当すんなりぽろりとできた。
しかし、十代と覇王様に挟まれて選べないなあ、とかなってるユベルってまじで贅沢な悩みですね!!うらやましいぞ!!
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