「あの日にもしもがあるなら」
155話2回目の超融合おめでとうございました!!
精霊は夢を見るのか?
という質問に対してイルカの顔をした宇宙人は
『うーん、どうなんだろうねえ…僕らの存在自体が夢みたいなものだしね!!
まったくもってわからないな!!そもそも寝るということも無いからね』
などと言っていたし、他のヒーロー達もそんな感じだったので
精霊は夢を見ない、なんて勝手に結論付けていた。
…だから、これは俺の夢であって、あいつの夢じゃないのだとか思っていたわけなんだが。
ため息をつきたいけれど、ため息もつけない。
夢の中の俺はただ一つの目的のためにデュエルを続けている。
俺の場にはレインボーネオス。
で、目の前には大きな双頭の竜、ユベルの第二形態…そして、その上にはユベルがいる。
精霊も夢を見るんだなあ、しかもよりにもよってこの時のか、
ともう一度ため息をつこうとするが出来ない、デュエルの中断も出来なければ発言も無理とか。
俺に自由は許されていないようだった。
鬼畜な覇王様とユベルが俺の存在を無視してデュエルをしている。
『そんなにアイツのことが好きなのかい?
僕にあんなに注いでくれた愛情も今じゃアイツのものなんだね…』
いや、ヨハンに対する感情って愛情じゃねえだろ、
どちらかといえば友情とか、共感とか、そういうものであって、愛情とかそういうものじゃない。
とかいう俺の気持ちは届かないまま、
許さない…っ!!とギリギリとユベルが唇をかみ締めている。
あーーすっげえ泣きそう、っていうか泣いている。
だけど俺はそれを淡々と無視してレインボーネオスでユベルにダメージを与えようとする。
…まあ、防がれるわけなんだが。
『トラップカード!!デモンローズを発動!!』
…案の定、デモンローズの効果でレインボーネオスの攻撃は無効になる。
…今思うとここでレインボーネオスの攻撃を無効にしたのは、
ヨハンへの嫉妬もあったのだろうか、なんてことを思う。
…本当にそういうことを考えてデュエルしてそうで困る。
う〜ん、と唸っている間にどんどん場面は進んでいて、
マジッククロニクルの効果でサイクロンを手札に加えて、早速使っている。
『君を僕のものにするためにはこうするしか無いんだ、ごめんね?』
そう言って笑みなんか浮かべながらユベルの攻撃は続く、
ずいぶん余裕ぶっているけれど、
お互いに攻撃を封じあって決定打にはならない。
このデュエルが終われば、俺が負ければ俺は死んでしまう。
それはイヤだなんて本当は思っているもんだからユベルの言葉にあせりみたいなものがじわじわと出てくる。
まあ、そういうところが可愛いのだけど、なんてことを考えて、ふっと笑う。
あれ?いつの間にか動けるようになっていた。
そのほうが助かるけれど、なんてことを思っていると、ユベルが不機嫌そうな声をあげる。
『…何がおかしいんだい?』
「んー?ユベルは素直じゃないところが可愛いなあって」
『……君は何を言っているんだ…っ!!』
ドラッヘはレインボーネオス並にでかいのでユベルの顔はあまり見えないけれど、
多分真っ赤になっていると思う。
「っていうか…ここ、お前の顔ぜんぜん見れないじゃねえか」
走り寄ってドラッヘの足に飛びついてよじ登る。
『わっ!!ば、ばばば、馬鹿!!危ないだろう!?』
「そう思うならそっちまで引き上げてくれーーって、お、ありがとうネオス。
ほらほら、ユベルー手だせーでっかいほうの手―!!」
落ちそうになった俺をネオスが抱きかかえて上に持ち上げて跳ぶのを見て
ドラッヘがあたふたとしながら両手で受け止める。
『ちょっと!!もう何してるの十代!!』
「もうちょっと上にあげてくれよ」
『うんわかった…って違うよ!!』
けっこう近くなったユベルが真っ赤な顔して怒ってるけれど無視だ。
勢いをつけてユベルのところに飛び込むと流石に真っ青になったユベルが抱きかかえてくれた。
『じゅうううだああああいいいい!?あのね僕たちは今!!真剣に!!デュエル中でしょううう!?』
髪の毛を逆立ててユベルが怒ってる。
ここまでしてるのにどうして気が付いてないのだろう。
「…いやもうそれ終わってるから。
…あのな、あの時の俺だったらこんなことしないから、そこのところわかっているのかよ」
ユベルとの身長差もあって胸の中に顔を埋もれさせる状態になるけれど、強く抱きしめると
『あ、』とかなんだかマヌケなユベルの声が漏れた。
夢と気が付いてしまえば後はさめてしまうだけだ。
ずっとこのデュエルを見ていたはずの翔やおジャマイエローも、
一緒に戦ってきたはずのヒーローやユベルのほかの形態も、綺麗さっぱり消えてしまう。
広い空間で二人きり。
「精霊は夢を見ないなんてのをアクアドルフィン達から聞いていたからさあ、ビックリしたぜ」
『…まあ、あいつらは君が作ったヒーロー達だし…夢の中の住人みたいなものだしね、
悩みも無いし、夢見る必要なんか無いんだよ。
むしろあいつらが異常なの!!僕ら精霊だって悩み事のひとつや二つあるよ!!』
「あーじゃあ、何だ…ユベルには悩みとかあるわけだ」
茶化して言ったつもりだった。
いつもなら『そうだね』なんて言いながらごまかすくせに、
これは夢の世界で、欲望や願いが影響するこの世界で魂が繋がっている二人がいればウソもごまかしも出来ない。
ただできることといえば黙っていることぐらいだろう。
ユベルはそれっきり黙ったままだった。
でも、それが逆に悩みがあると肯定していることになって、
その悩みも苦しみも全部あのときのことが原因だって事だと無言で言っている。
「…なあ、やっぱり後悔しているのか?」
…俺も、ユベルの顔が見れなかった。
後悔なんて、いっぱいある。
それはユベルも一緒だ、だからこんな夢を見るわけで…。
頭上でふっと笑う気配がしたと思ったら、ちょっとごつごつした手が優しく俺の髪の毛をなでる。
『そりゃまあ、…もっと早く君の気持ちがわかっていたらとか、
破滅の光の波動なんかに取り込まれなきゃとか考えていたさ。
それこそ後悔なんて…星の数ほどあるよ。君も一緒だろう?』
「まあな」
『でも、こうなったことに後悔は無いよ?』
こうなった、というのは超融合で魂を融合させたことだろう。
ねえ、顔見せてよ。とユベルが言うから顔を恐る恐る上げると、本当に嬉しそうな綺麗な笑顔のユベルがいた。
『だって、十代がこんな僕の奥の奥、心の中にまで心配して来てくれるんだもの
…それがすごく嬉しい』
「あーそうだな、前世からお前ってけっこう抱えるタイプだったもんなー…魂がひとつになってなきゃ隠し通されそうだ」
『それは十代も一緒だけどねぇ』
くすくすと笑いながらユベルがそう言うのに、一瞬むっとしたが…実際その通りなので笑うしかない。
しばらくそうやってじゃれあっていたのだが、いつまでもこのままでいるわけにはいかないので、そっと離れる。
『じゃあ、この後どうしようか…起きる?』
「んーそれも何かもったいないよなあ…どうせ夢の中なんだし、あの時のデュエルの決着でもつけようか?
あの時のデッキ構成のままって縛りで」
夢の世界ならヨハンからレインボードラゴンを借りなくても多分大丈夫だろうし。
それよりも、あのままデュエルが続いていたならどちらが勝っていたのかはわからない。
さっそく準備だ、というわけでデッキがあのときのままであることを確認してデュエルディスクを展開する。
『いいねえ。十代から貴重な勝ち星を奪うなんてすっごく気分良さそうだ』
「何を言うんだよ、勝つのは俺だ。…なぜなら、俺が覇王だからな」
『ふふん、僕の十代はそんなに非道にはなれないよ』
わざとあの時と同じことを言いながらデュエルディスクを構える。
そうして二人きりの世界にデュエル!!と勢いよく二人の声が響き渡る。
だけどそれは前の時とは違って、この時間を楽しもうという楽しげな響きが混じっていた。
fin
11/08/25up
2回目の超融合おつかれさまでした!!っていうかとっくの昔に過ぎていた件について!!
全部全部原稿がわるいんやーということで!!
いやまあ、ちょっと原稿スランプというかネタ切れしてました、大航海時代。
遊戯王のほうはまだまだ書きたいネタがあるんじゃというわけで頑張ろうと思います。
まだあるんかいとか相方に突っ込まれてますが!!
とうとう80本目のSSとなってしまいました(笑)
もうちょっと早めにアップしたかったんですが、この暑さがわるいんじゃーとか叫んでおきます。
あと、イベントごとが色々あったりとかしてリアルで忙しかったです。
(インテ楽しかったです)
これからはまったりペースでまた更新予定ですとかいいつつそろそろ十代の誕生日が!!
これは熱くなるしかない!!お祝いがんばります!!
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