「異国のクリスマス」
「むぎょぎょぎょぎょ」
「…っくヨハン!!押すな!!これ以上は無理だぞ!!…!!」
「…ちょ、ちょ、ジム!!カレンやばいカレンが!!せなか!!背中がゴリゴリって!!ごりりっ!!」
「oh、ソーリーカレン…大丈夫…かなあ…?」
ぐ、ぐわーとジムの後ろのカレンが苦しそうな声をあげる。
そうだ、それぞれの国に帰る前にニホンを満喫しよう!!
とか誰が言ったんだっけ…ヨハン・アンデルセンです、つまりは俺です。
そんなことを思いつつ、意識が吹き飛ぶ前になんとか人ごみの海から脱出できた。
「…おい、大丈夫か?」
「うわー…ボロボロだなあ…ああークレープ力いっぱい握り締めすぎだろ
…食べれるかなあ…明日香一番綺麗なの取れよ?」
あははーとか笑いながら十代が俺の手元から苦労して買ってきたクレープをもぎ取り明日香や他の皆に配っている。
「おーい、ヨハンーヨハン大丈夫かーーー…?」
「……死にそう……ナニコレ、日本のクリスマスってなんでこんなに人が多いの、わけわからねえ…」
「…いや、まだこれからだぜーー?っていうか、まだクリスマスじゃねえし。
それにまだイルミネーションも点灯してないから通行規制でてないしなあ」
「これより酷くなるのかい?それはまったく…クレイジー、だねえ」
ジムがオウマイガっとか小さく呟いたけれど
本当にそうだなあ、とか思う。
クリスマス時期は確かに自分達の国でも飾りつけとかするし、クリスマスを過ごすにあたって料理とかプレゼントの準備もする。
日本でも似たようなカンジというのを聞いて
…でもやっぱり違うんだろうなーとか思ったから、
せっかく日本にいる機会にとか思ってわざわざデュエルアカデミア本島から出てきたわけなんだけど
…想像以上だった。
人、人、人人人人、どこを見ても人まみれで、買い物をするだけで圧死しそうとかどういうことなんだろう。
「まあ、仕方あるまい。
…毎年だが童実野町では海馬ランドと連動してクリスマスイベントが海馬コーポレーション主催で行われるからな。
デュエルをやらない連中でも楽しめるようなイベントも多いから全国から観光客が詰めかけるらしいぞ」
「へーそうだったんだー!!」
「って十代!!なんで日本に住んでるお前がそれを知らないんだっ!!」
「デュエル以外興味ないしなあ」
あはははーとか笑う十代は確かに知識量とかは俺らとあまり変わらない、だろう。
「…ヨハン水飲むかー?」
「おー、サンキュっていうかいつの間に買ってたんだよこんなの」
「今、そこらへんで適当に買ったけど?」
この人ごみの中よく自販機を見つけたものだ。
…やっぱ、なんだかんだで慣れてるんだろうなあ。
それは万丈目も明日香にも同じことが言える。
この国の人間だもんなあー、なんてことを思う。
「なあ、なあーヨハンの国ではクリスマスとかどうなんだー?」
「んー…まあ、家で家族でゆっくり過ごすかなあ、あとは教会でミサとか
日本のクリスマスと違って、なんだろうなーなんか、こう、うん、静かだよな」
オブライエンのほうを見れば、こくりと頷いている。
「大体そうだな、こっちは夏だけど」
そう言うのは南半球側に住んでいるジム。
思い出すのはしんしんと音もなく降る雪と、ほのかに光るどこかの家の明かり、
それから教会から聞こえる賛美歌。
あー、懐かしい。なんていうか、クリスマスってああいうのだよなあー。
日本のはちょっと派手。
…まあ、いろいろなことが何事も派手だし、人がわーっと集まってくるイメージだけど。
宗教とか伝統とか何もかも意味もすっ飛ばしてお祭り騒ぎをしている。
「…なんていうか、日本のクリスマスとかは本当、ちょっと理解しがたいなー」
嫌いってわけじゃないんだけどさ、と苦笑すると
「んー俺は逆に外国のクリスマスとか静か過ぎて、ちょっと退屈だろうなー」
「…お前だと教会で賛美歌を聞きながら寝るだろうな、壮絶なイビキをかきながら」
「おおー流石サンダーは俺の事よくわかってる!!」
「万丈目さん、だ!!」
ああ、すげえ想像できるなあ、その光景。
とか思って笑うと、十代が俺の顔を見て照れくさそうに笑う。
「いつか俺の国に来てクリスマス体験してみてくれよ、
…でも、教会で寝るのは禁止なー」
「えええー」
「実際見たら気に入るかもしれないし、いいもんだぜ?たまには
ってまあ、それよりもデュエルのほうがいいんだろうけどなあ、十代には」
「あー、それは否定できねー」
まあ、俺もこの人ごみで潰されながらイルミネーションみるよりはデュエルのほうがいいけど。
そんなことを思っていると、
アニキーという声が聞こえてくる。
「お、翔に剣山、吹雪さんもおつかれさまー」
「お待たせしちゃったねー」
「で、吹雪さん首尾は…!!」
十代のわくわくした声に、JOIN!!いい笑顔でポーズを決める吹雪さん。
「兄さんとエドに協力してもらえてなんとか場所確保できたよー
流石に、いい席はムリだったけど」
「よっしゃーーー!!エドもカイザーも久しぶりだよなー!!」
「やったーーーー!!デュエル!!デュエルー!!プロのデュエルー!!」
「…アニキ達大喜びしすぎザウルス」
童実野町で開催されるクリスマスデュエル大会の初日の観戦だぜ?
喜ばないで何を喜ぶというのだろう、
「…デュエルバカが2人か」
「まあ、らしくていいんじゃないかしら…それに、デュエル馬鹿なら私たちもそうでしょう?」
あきれた声のサンダーと楽しげな明日香の言葉に
ちょっぴり照れくさくなったけれど、疲れていた体になんだか元気が戻ってきたみたいだ。
「じゃあ、デュエル大会に行こうか、これからどんどん混むだろうし、早めに会場に入ろう」
「おうー!!皆も行こうぜー!!」
「やれやれ、あの人ごみをまた越えるのか」
「はは、諦めようオブライエン、これもまた日本でのいいメモリーになるだろう?」
ジムの言うとおり、きっとこの人ごみに揉まれたことも、十代とクリスマスの話をしたことも、
全部この異国でのクリスマスの楽しい思い出になるのだろう。
だから、精一杯楽しもう、そう思って再び人の流れに突撃した。
「もももも、ムリーーーむりーーーーーー!!」
「NONO!!ヨハン押さないでー!!」
「……あれ、翔は?」
「アニキーーーまってえーーーーーわーーーーーーー!!」
「丸藤先輩が流されてるドンーーー!!」
…やっぱり楽しい思い出にするには難易度が高すぎる気がしてきた。
メリークリスマス!
11/12/24up
皆でわいわいしてるのが書きたいなーとか思って書いていたら
人ごみに潰されている図をかいていたでござる、というカンジの話です。
どうしてこうなった!!
でも実際クリスマス@日本ってなぜかこういう感じですよね
外人の人とか結構日本の風景ギャースってなるらしいのでそんなことを思いながら書いたのでした。
…しかし更新ほったらかしてました。
ちょっと古巣に戻ったりしてたらうっかり!!
そろそろ十ユベ4期最大の見せ場が来るのであわてて戻ってきたのは秘密なのです。
今年最後の更新にはなりそうですが、ぼちぼち来年もSS書いていこうと思います、
良いお年を!!メリークリスマス!!
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